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39 最強?



 圧倒的な力の差。それはいつも感じる。サウスに剣を教えてもらっているとき、ロジが魔物を魔法で一掃するときなど。色々なところで感じた。

 力の差がありすぎて、また剣と魔法という違いもあるせいか、2人のどちらが強いかなんてわからないし、考えもしなかった。でも、出会ったどの魔物よりも、盗賊よりも彼らは強かった。


 正直、魔王も倒せるかもしれない。そんな甘い希望もわずかに抱いていたのだが、それは無理な話だと思う。何度も言うように、それなら勇者召還は行われず、俺はここにいないから。あと、2人以上の強者が目の前にいるからだ。


 ドラゴン。それは、前世でも有名な創作上の生き物で、多くが最強と呼ばれていた。

 それは、この世界でも同じかもしれない。


 ドラゴンと対峙した瞬間、俺は動けなくなった。そして、ここが死に場所だと理解して、諦めた。こんなにも強い魔物がいるとは思わなかった。もし、ここに2人がいたとしても、このドラゴンは倒せないと感じる。


 そんな、最強と思い、俺を殺す存在と認めたドラゴンが、地に臥せている。


 俺は、剣を握ったまま地べたに座り込み、荒い呼吸をする。あまりの緊張から息を吸うのを忘れていたが、ドラゴンが倒れたことで、呼吸をすることを思い出した。


「情けないわね、本当に勇者なのかしら?」

 上から呆れたような女の声がしたが、俺は何も言えない。全くその通りだし、女に口答えする気になれなかった。


 女、ジュリアは、とんでもない魔術師だ。


 急に初対面の俺と組むし、初心者の俺をドラゴンの巣穴に連れてくるし、そのドラゴンの前に俺を前衛だからといって、対峙させる。何を考えているかわからない。


 そして一番意味が分からないのは、圧倒的な強さのドラゴンを、魔法ひとつで倒してしまった。本当に意味が分からない。


「いったい、お前は誰だ?」

 気づけば、そんな言葉を漏らしていた。


「あら、もう忘れたの?私はジュリア、魔術師よ。これからよろしくね、サロ。」

 ニィっと、紅を引いた口が弧を描き、それを見た俺は恐ろしく感じた。これほど強大な力を持った女がいることを、恐ろしく感じた。

 そして、その女とこれからよろしくしなければならない、未来が恐ろしい。何が俺に待ち受けているのだろうか?魔王か。




 落ち着きを取り戻した俺は、剣を握りしめていた手を、剣から離した。あまりに強く、長い時間握っていたせいか、血の気のない手は、感覚がなかった。


 俺は、ゆっくりと立ち上がる。若干ふらついたが、何とか歩けそうだ。

 ドラゴンというものを改めてじっくり見ようと思ったが、なぜかドラゴンの姿はなかった。


「え?まさか、幻覚?」

 俺は、あんな幻覚を見るほど疲れていたのか?だが、もし幻覚ならジュリアではなく、俺に倒させて欲しかった。俺、最強!という幻覚が見たかった。


「幻覚って?」

「いや、ここにさっきドラゴンがいなかったか?」

「あぁ、それなら、サロの魔法袋に入れさせてもらったわ。便利よねそれ。」

「へ、え?」

 俺は腰につけている巾着を見た。特に膨らんでもないし、重さも変わっていない。本当にあのドラゴンがここに入っているのかと疑いたくなるが、それが魔法袋というものだ。


 入れた物の質量とか関係ない。本当に魔法の袋だ。


「こんなの入れてどうす・・・るんですか?」

 猫をかぶるのを忘れて、素で話していたことを思い出し、俺は猫をかぶり直す。


「それは、お好きなように、って感じよ。自分の装備に使ってもいいし、食べてもいいわ。お金に困っているなら、売れば大儲けよ。」

 その言葉を聞いて、使い道がないと感じた。


 俺には立派な装備は必要ない。それを活かせるだけの力もない。それに、たとえ装備に使うとしても、装備が2、3日でできるとは流石の俺でも思わなかった。バクラドの滞在期間は、そんなに長くない気がする。少なくてもルマスよりは、滞在期間が短いだろう。その間に装備ができるかは疑問だ。


 そして、食べるとか、ありえない。なんか怖いので嫌だ。金も十分にあるからいらないし。


 俺は、この場にドラゴンを捨てて、何も知らないふりをして帰るのが最良に思えた。

 ジュリアは、ドラゴンをあっさり倒したが、それは異常なことだと思う。倒すことができる実力がある者すらわずかだろう。


 そんなドラゴンを持っていたらどうなるか?騒ぎになるに決まっている。そして、騒ぎになることは、俺たちにとって良くない気がする。

 これは、今までの旅で感じたことなのだが、サウスもロジも目立たないように旅をしている気がするのだ。それが何のためかはわからないが、あの2人がそうしているのだから、目立たないに越したことはない。


「捨てちゃだめよ。さ、帰りましょう。」

 思考を読まれたかのように釘を刺され、従うしかないと感じた。強い者には従うのが一番だ。特に俺は何の力も持っていないから。




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