暗闇
ガラガラガラ…
何かの振動でマキナは意識を戻す。
「うっ…」
体中がズキズキと痛む。何が起こったのか。マキナは
現状を確認しようと倒れている体を起こそうとする。
「…?左腕が動かない…」
両腕を地面に着こうにも右腕しか地面の感触を得ることが出来なかった。
取り敢えず、右腕だけで上半身を起こし、状況を確認しようとした。
「ん…?」
あれからずいぶん時間が経ったのだろうか。
目が開かない。耳が聞こえない。鼻が利かない。
どうやら血がそれぞれで固まってしまっていたことにマキナは気付く。
とりあえず目を慎重に擦りなんとか視界を復活させようとする。
パキッパキッ…と目を覆う血の膜が音を立てて崩れていく。
それと同時に目の中で固まった血が小さな粒状となり、目の中を這いずり回る。
それはまるで、目に直接砂を入れたような感覚であった。
「くっ…」
これでは一向に目を開けることが出来ない。
そう考え、マキナは自分の髪の毛の何本を右手で掴み、思いっきり引っ張る。
ブチブチッと音を立て、髪の毛は見事に抜ける。するとマキナはこの痛みで涙を流した。
この流れた涙を上手く使い、目を洗浄させることに成功する。
そして、徐々にマキナは目を開く。
「ここは…どこだ…」
辺りはかなり暗く、近辺しか視認出来ないほどであった。
とりあえず、身に異常がないか体全体を確認する。
「っ!…腕が…」
動かなかった左腕は肩から手の先まで綺麗に無くなっていた。
よく見ると、簡単な止血治療は行われており、
包帯や服は血で滲んでいたが、大量出血だけは抑えられていた。
「誰がこれを…いや、その前になぜ腕が…ん?あれは、私の…」
直ぐ近くに先程まで腰に付けていたバックが無造作に置かれていた。
そこから薬品が入った瓶や、ビーカー、包帯がこぼれ落ちていた。
「私のバックから医療用品を取り出したのか。
だがバックの中身を知っている人など、そういないはず…」
ぐぅらぁぁぁ!!
その時、遠くに男性の怒声が聞こえてくる。耳がほとんど聞こえていないため、
この声の発生源がどこになるかは分からなかったが、かなり切羽詰まっている
状況にこの人物がいることだけは感じ取れた。
そして、マキナが思うにこの声の主は知っている人の可能性が高かった。
「とにかく行かないと…」
マキナは立ち上がり、すぐ落ちているバックをまた腰につける。
そして腰に付いたナイフを取り出し、声のする方向であろうところに向かって走り出した。