プロローグ 婚約破棄Thank You
この小説はデジタルデメマダラこと、Chat-GPTを使って書いたものです。
と言って、AIに全部責任を擦り付けます。
一番の懸念は怒られないかどうかだよね。
王宮の広間は、妙に静かだった。
呼び出された時点で、ろくな用件ではないだろう。
トライルは歩きながら、制服の襟を軽く直す。
黒を基調にした事務官の服は無駄がなく、本人の性格そのものだった。
短く整えた髪、感情の読めない目。
王宮では「仕事だけの人間」と陰で言われている。
別に他人の意見など聞いていない。
仕事に感情は持ち込まない。
私情で書類を曲げるくらいなら、お前らの骨を捻じ曲げる。
広間の中央には兵士が並び、貴族たちが遠巻きに眺めていた。
その先、高座に座るのは次期国王候補。『リクサ』。
随分と勝ち誇った顔だった。
トライルは足を止めず、その正面まで進む。
視線の端に、見知った顔がいた。
友人、だったはずの女だ。
彼女は助けるでもなく、目を逸らすでもなく。
ただそこに立って、黙って見ている。
なぜ見ているのか? 多分意味はない。
「トライル」
リクサがゆっくりと立ち上がる。
「あなたの罪を、悔いなさい」
開幕から芝居がかった台詞だった。
もっともこの男は、これが普通の喋り方だ。
「物事は結論からだ」
リクサの笑みが、より強調される。
「……よろしい。では結果から言います」
「"結論"だ」
彼は一枚の書類を掲げた。
「あなたとの婚約を、ここに破棄します」
トライルはため息が出そうになった。
なるほど、そのための舞台か。
「私の婚約者は完璧でなければならない。正義でなければならない。不完全な人間など不要だ」
書類が机に叩きつけられる。
乾いた音だけが響いた。
「この経費報告書。数字が一つ、誤っている」
「昨日修正した」
「元の提出時点で間違っていた。それは事実です」
トライルは一度だけ書類を見た。
最近色々押し付けられた故、疲労が溜まっていた。
本当に、小さな記載ミスだった。
「事務処理だ」
「残念ですが、貴方には横領の疑いがあります」
さすがに笑った。バカ過ぎると。
「無理があるな」
無駄だと分かりつつも、反論してみる。
「言い訳は許しません。許されるのは後悔だけです」
兵士たちが一斉に前へ出る。
剣の柄に手がかかる音が、妙に耳についた。
リクサは満足そうに頷く。
「弁明の機会を与えましょう。何か言うことは?」
トライルは、ゆっくりと周囲を見た。
誰も動かない。友人も、部下も、貴族も。
全員、自分が裁かれる側にならないことだけを祈っている顔だった。
「私に……。下らん質問をするな」
トライルは腕を組みながら、ハッキリと言い放つ。
表情も変えず。声に感情も込めず。
空気が止まる。リクサの顔から失笑が現れる。
「聞こえないな。もっと大きい声で、言ってもらえますか?」
「質問をするなと言ったはずだ」
トライルは淡々と続ける。
「お前の指図を受ける義理はない」
広間の空気が凍った。
兵士すら、すぐには動けない。
「この私に無礼な物言いですね。謝りなさい」
「許しを乞う気などない」
一歩、リクサが近づく。
その手が、トライルの制服の胸元へ伸びた。
「ならば、正義のために。ボタンを私に還しなさい」
リクサのあだ名。妖怪ボタンむしり。
意味が分からないが、裁いた相手のボタンを集めている。
意味を考える価値もない。その手が届く前に、トライルは身を翻す。
「待ちなさい! 話は終わっていませんよ!」
リクサの怒号が飛ぶ。同時に兵士たちが動き出す。
トライルは腰のアクセルをふかしながら。
振り返りもせず、短く言い捨てた。
「振り切る」
エンジン音と共に、兵士の間をすり抜ける。
制止の声、怒鳴り声、誰かの悲鳴。
全てを彼女の耳には追いつかない。
***
雨は嫌いではない。音を消してくれるからだ。
足音を殺すには、最も都合の良い天気だ。
王都の石畳を、トライルは濡れたままアクセルを全開。
黒い事務官の制服は重く、水を吸って足に絡みつく。
息は乱れ、肺が熱い。無理に力を使ったせいで、代謝消費も激しい。
それでも止まる気はなかった。
「いたぞ! あっちだ!」
「うるさい! お前の指図は受けない!」
後ろから、兵士たちの怒鳴り声が響く。
あと味方同士で、殴り合っている音も……。、
随分と必死なものだ。
ただの書類仕事でここまで大事になる方がおかしい。
ただリクサに目を付けられるのが嫌なだけなのだろうが。
トライルは溜息を吐いて、角を曲がる。
雨は強くなるばかりだった。体温も奪われる。
次第に意識も遠のいていった。
視界の端で、王宮がぼやけている。
一時間ほど前まで、あそこにいたのが嘘のようだ。
思入れなどない。あそこはただの職場だ。
仕事の態度が認められ、王太子の婚約者に選ばれた時の心はもはやない。
次の路地へ飛び込み、ようやく人気のない古びた空き家を見つけた。
扉を蹴り飛ばして、中へ滑り込む。
加速し過ぎたせいで、危うくブレーキが壊れかけた。
湿った木の匂い。崩れた椅子と、放置された箱。
誰もいない。ホームレスがたむろしてもおかしくない、綺麗さだ。
トライルは壁にもたれ、そのまま深く息を吐いた。
肺が痛い。脚も重い。久しぶりにアクセル能力を使った。
外から、兵士たちの足音が近づいてくる。
執念深くまだ追ってきている。
三十キロの剣に、手をかけたその時だった。
「良くないねぇ……。こういう展開」
女性の声。乾いた、ねっとりした言い方だった。
トライルは反射的に振り向く。
入口に、一人の女性が立っていた。
上品な衣服に、整った顔立ち。雨の中だというのに、妙に余裕のある立ち姿だった。
彼女はケースを持ちながら、笑っている。
人当たりの良い、柔らかい笑みだが。どこか不気味さを感じる。
「ずいぶん派手な逃走劇ね。一冊本になりそうだわ」
トライルは記憶の中に、薄っすら彼女の顔がある。
王宮のどこかで、見たことがある。
会話をした記憶はないが、記憶すべき相手だった。
「お前は誰だ?」
「この格好の者に、向かってお前呼びかしら?」
「分かった。アンタは誰だ?」
女は気の良い、わざとらしく一礼した。
「私はマイザ。リクサのライバルである、王族候補の王太子。その妹よ」
トライルは女性の正体を思い出した。
この国は血脈だけでなく、能力で次期国王が決まる。
マイザの兄は、リクサの親戚だ。もっとも評価では劣っていたのだが。
無言で距離を取る。逃げ場を測る。
マイザはそれを見て、手で制止した。
「大丈夫。貴方を助けに来たの。リクサ様の手からね」
「信用できる証拠がないな」
「ごもっとも。でも選択肢は潰しておきたくてね」
トライルは彼女が入口に立っている意図に、気が付いた。
鼻で笑いながら、剣を収める。
「私の家族は、リクサ様と仲が悪くてね。貴方を庇う事に迷いはないわ」
外では兵士の声がさらに近づく。
マイザは壁に寄りかかりながら、軽く首を傾げた。
「貴方、仕事できるでしょう? 誰だって欲しい人材じゃない?」
「求められたからと言って、ほいほいついていく気はない。仕事に必要なのは信頼だ」
「私も同意見よ。思ったとおり。貴方とは気が合う気がしたの」
こんなに嬉しくない共感があるだろうか?
とはいえ、この場で選べる道も少ない。
トライルは短く息を吐いた。
「……条件は? 私に何を望む?」
「話が早くて助かるわ。お兄様を次の国王にしたいの」
マイザの笑顔が、少しだけ本性を見せた気がした。
彼女は決して善人でない。
まあ王宮の人間は、少なからずこういう一面があるものだ。
「実際リクサ様が候補として強いのも。婚約者である貴方の存在が、大きかった」
「私に鞍替えをしろと?」
「ええ。つまらない拘りで、貴方の能力を潰すのは惜しい」
その瞬間、外で兵士の足音が止まる。
マイザは振り返り、外に居る兵士に顔を見せた。
「マイザ様!? なぜこのような場所に!?」
「この人を運んでちょうだい。丁重に扱ってね」
「は? し、しかしこの者は……」
衛兵が反論しようとすると。
マイザは衛兵の耳元に口を近づけた。
何かを囁き。兵士の体を震えさせる。
「お願いできるかしら?」
「は、はっ! 仰せのままに!」
疲労が限界を迎えた。視界が揺れる。
足に力が入らない。トライルはそのまま意識が薄れる。
小さな声で、僅かに話し声が聞こえてくる。
「リクサ様の直属兵は?」
「王宮です。捜索には出ていません」
「でしょうね。彼女を舐めている証拠だわ」
トライルは薄れる意識の中で、最後に聞こえたのは。
マイザと言う人物を、全て表わす言葉だった。
視界がなくても、耳元で言われたと理解できる。
「せいぜい私の役に立ってね。書類さん」




