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言いたいことはそれだけですか。では、始めましょう  作者: 井藤 美樹
第三章 神罰が一回だけとは限らない

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第二十七話 新米王女殿下は暖かい窓辺で幸せに浸る



 リアス様が部屋を出て行ってから数十分後、イシリス様が風呂場から出て来た。


「ミネリア、お待たせ。なかなか、臭いが取れなくて困ったよ。数分しかいなかったのに……ったく、あまりにも汚くて入れなかったから、庭園で渡したが、それでもこれだ」


 まだ匂いを気にしているのか、イシリス様はフンフンと自分の腕を嗅いでいる。


(相当、酷かったみたいね……)


 掃除は出来てはいないとは思っていたけど、さすがに、外で用を足してはいないでしょ。宮殿内には無駄に幾つもトイレがあるんだし。


「……イシリス様、お疲れ様でした。私が余計な事を言ったせいで、大変な場に行かせてしまって、誠に申し訳ありません」


 私は深々と頭を下げる。利用したつもりはないの。でも、イシリス様が私に甘いのを知っている。これは行き過ぎたかもしれない。


「いや、俺がそうしたいからそうしただけだ。行き過ぎじゃない。十分範囲内だから、安心しろ。それよりも、あいつら、いつ人間をやめたんだ。トイレがあるのに、外で用を足していたぞ。俺の大事な毛皮が汚れたら最悪で済まんから、人型で対応したぞ」


 心底、イシリス様は不快そうな顔をする。


(想像が当たったの。嬉しくないわ)


 討伐や遠征に参加しているなら、まだしも。考えていた以上に、カオスな状態になっているみたいね。あの屑達が、これから先関わってこない限り、私は関わるつもりはない。


 それよりも今は、イシリス様を(ねぎら)うのが先だわ。


「さぁ、嫌な事は横に置いといて、ブラッシングしましょ」


 私のお誘いに、イシリス様は機嫌よく尻尾を振る。そして、直ぐに人型を解いた。でも、大型犬ぐらいの大きさなの。そうじゃないと、私一人でブラッシング出来ないからね。伏せの状態でも、尻尾が軽く左右にフリフリ。本当に、尻尾は正直なんだから。耳も横にペタンとなっているし、すっごく可愛い。


「ミネリアは、本当、ブラッシングが好きだな」


(イシリス様もね)


 鼻歌を歌いそうな私に、イシリス様が優しく甘い声で話し掛けてくる。私の膝を堪能しながら。


「好きですよ。イシリス様も、ブラッシング好きでしょ。ほら、見て下さい。新しいブラシ買いました。今回のものは、とても艶が出るって、店主のお墨付きですよ」


 早速、私は新しいブラシを使ってみた。


(お風呂に入っばかりかもしれないけど、白銀の毛がキラキラ光ってるわ。これ、いい。かなり高かったけど、良い買い物したわ)


 また、利用してもいいわね。なんか、物凄く楽しくなってきた。確か、この美容液を一緒に使用すると、更に効果が増すって、店主が言っていたわね。


「……楽しそうな、ミネリアを見るのが嬉しいんだ。ミネリアがブラッシングしてくれるから、好きなんだ」


「えっ、何か言いました? イシリス様」


 美容液の使い方を記した紙を熱心に読んでいると、イシリス様が何か言ったみたい。だけど、あまりにも小さな声で、殆ど聞き取れなかった。


「いや、別にたいした事は言ってない」


 訊き返した私に、何故か、イシリス様は拗ねたように答える。


「そうですか……」


 気になったので、チラッと尻尾を見たら軽く左右に振ってるし、大丈夫かな。


 私は美容液を適量毛に振り掛けてから、馴染ませ、ブラッシングしてみた。今までの中で、一番のキラキラどか。艶も最高だわ。


 暖かい窓辺で、イシリス様と一緒の時間を過ごす。


 ブラッシングに夢中で無言だったけど、私はこの時間が一番大好きで大切だと思っている。愛する人の体温を身近に感じ取れるって、本当に幸せな事だから。





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