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言いたいことはそれだけですか。では、始めましょう  作者: 井藤 美樹
第三章 神罰が一回だけとは限らない

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第二十八話 新米王女殿下も堪能したいんです



「イシリス様、少し、相談したい事があるのですが……」


「相談?」


「リアス様の事です。リアス様って、自己評価低過ぎませんか?」


 リアス様と交わした会話を思い出しながら、私はイシリス様に相談する。


「あの女の自己評価が低いからといって、ミネリアになんの問題があるんだ?」


 ブラッシングが終わった後も、私の膝に頭を乗せたまま、イシリス様は答えた。


(まぁ、確かに、イシリス様の言うのも分かるけど)


「今は問題はありませんが、先を考えると……それに、気になるのです。あれ程優秀な方なのに、根本的な所で自信がないなんて」


 今は、マナーの先生としてお願いしているけど、いずれは私の専属侍女として、常に傍にいて支えて欲しいと考えていたの。だから、あの断罪パーティーの場で引き抜いた。護衛侍女のジュリア、文官としても完璧なリアス様、二人がいれば最高の布陣だと思うのよね。


 そして、行く行くは幸せな結婚をして、子供を生んで欲しいの。辛い過去を持つリアス様に、このベルケイド王国で幸せを掴んで欲しい。


「……あの王国では、あの女のような奴らは、使い勝手のいい捨ての駒でしかないだろうな。故に、駒に掛ける愛情も、労りなどないだろ」


「腹立たしい事ですが、そうですね……」


 あの屑達が、王国で仕事をしているのを見た事がないわ。出来て、判子を押すだけじゃない。特にあの第一王子は、下半身に脳味噌が付いてるから絶対しないし、無理。生徒会でも、リアス様に全部丸投げしていたから、王子の仕事も彼女がしていたと思うわ。


「そんなに気になるなら、一度、モリアスに訊いてみたらどうだ?」


「そうですね、親に訊くのが一番早いかも。モリアス様に一度訊いてみます。ありがとうございます、イシリス様」


 私はイシリス様の頭を撫ぜる。


「ミネリア、あの女の事はもうどうでもいいだろ。もっと、俺を撫でてくれ」


 焦れたイシリス様が、不満気に言ってきた。それが、可愛くて、嬉しくて、手の感覚がなくなるまで撫でてあげたい。


「はい、イシリス様」


 私はクスっと笑うと、イシリス様の頭を撫で続けた。


 撫でてると、いつも思うのよね。一緒に寝て、そのお腹に顔を埋めて吸いたいって。なのに、どうしても、イシリス様は許してくれないの。番になった頃はまだ小さくて、分身ならたまに許してくれていた。それも、数回でしかないけど。私の身体を考えて、それが限度だったの。だから、デビュタントが来るのが待ち遠しかった。


 なのに、デビュタントが終わって、一緒にいられるようになったら、更に許されなくなった。あの時のショックは言葉に尽くし難し。


(自分はいつも私の匂い嗅ぐのに、不公平だわ)


「結婚したら、いくらでも許してやる。今は駄目だ」


(いつも、それ。我慢が出来なくなるからって……我慢の必要あるの? 二人っきりなんだから、恥ずかしくないでしょ)


「二人っきりが問題なんだ!!」


 イシリス様の口調が厳しくなる。


「二人っきりじゃなかったら、いいのですか?」 


 負けじと、私も自然と声が大きくなった。


「尚更、悪い!!」


「私も我が儘ですけど、イシリス様も我が儘です!!」


(私もイシリス様を堪能したいのに。ずっと我慢なんて……)


 ブラッシングは楽しいし幸せだけど。そのフワフワ、サラサラした毛を味わいたいのは、それ程はしたない事なの。


「…………あ〜〜ほんと、結婚したら覚えていろよ」


 イシリス様は小さく低い声で唸ると、腹を上に向けて寝っ転がる。


 目の前に広がるのは白銀の世界。


「はい!!」


 私は満面な笑みを浮かべると、イシリス様のお腹に飛び込んだ。顎下に顔を埋めてスリスリにスーハー。


(あ〜〜最高!! これよ、これ!! 良い匂い。日向と美容液の匂いの中に、イシリス様の森の匂いがするわ)


 イシリス様の匂いはとても安心する。そして、大好きな匂い。あの屑王女とマリアはこの匂いを否定した。田舎は嫌だってね。思い出すだけでも、腹が煮えかえる。そういう時は、深呼吸。癒やされる。


「マジで覚えていろよ」


 悔しいのか、何かと戦っているのか、呻き声に近い声で、イシリス様はボソッと呟いた。




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