19話 深まる絆とロイの受難
「はぁ〜」「うぅ...」
そんな風にため息を吐かないで下さい...
結局...カマーセに捜査の手は届きませんでした。
(厳密には...ノース家当主に握り潰されましたが)
「はぁ〜」「アナタまでため息吐かないでよ」「ごめんなさい、お姉様」
思わず私までため息を...ですが
「お姉様?ノース家というのは、ソコまで巨大な権力を握っているのですか?」
「残念ながら...今この国の実権を握っているのが、そのノース家よ」
そうなのですか!...という言葉が口から出るよりも先に
「お嬢!ノース家と一戦交えたってのは本当ですか?!」
「馬鹿か!そんな訳ないだろうが!!この脳筋が!!!」
お姉様付きの騎士が勢い良く入室して来ました。といっても、実際に勢いが良かったのはアヴェイルだけですが...
「サージェ、二人に説明を」「はっ!」
そう言ってお姉様が二人の騎士へ、今回の経緯を伝える。
「ランシェ、お祖父様とお母様が亡くなった日...父がどうなったか覚えてる?」
「えっと、あの日は...確かまだ(連行されたまま)お帰りになってなかったと...」
そう...と一呼吸置いて、お姉様はあの日にあった出来事を語ってくれた。
私が知らなかった事...父上の階級落ち、並びに総主家からの没落。
そしてノース家の台頭...全ては、あの事件の責任を負わされた為...
「そうでしたのね」「そうよ」「...くそっ!」「モーリス...」
その話を聞いたモーリスが露骨に怒りを露わにし、対照的にサージェは歯を食いしばりながら...その手を固く握りしめている。
「まぁ、終わった事をとやかく言っても仕方ないわ。切り替えていきましょう」
お姉様がそう言うと、皆は一斉に返事をし...その後思い思いに頷いたり目を合わせたりした。
(臣下として...より強く結ばれていくのが分かる)
『そうですねぇ〜』『アナタ...何処にいるの?!』『働いてますけど!?』
力の籠もった眼差しで団結力を確かめ合う中、気の抜けた念話をしてきたサミー。
思わずツッコミを入れてしまったが、彼女の言う通り今は給仕の準備中を行っている。
「お姉様?もう遅いですし、彼らを夕食に招いては?」
「そうね...アナタたち、どうする?」「「頂きます!!」」
子爵に伯爵...緊張した面持ちながらその眼は輝いており...
「言っておきますが...豪華ではないですよ?」「「えっ!?」」
「ひょっとして晩餐を期待したの?何でも無い日に?」
そんな二人に私が一言添え、お姉様がもう一声かけると...二人は落ち込んでしまうのでした。
「旨いっ?!」「美味しい!」「あら?そう、口に合ったみたいね」
さっきまで意気消沈していたのが嘘のように、再び眼を輝かせて料理を口に運ぶモーリスとサージェ。
「モーリスは兎も角、サージェは以外だな」
「ゾレを言っだら(ごくん!)全員が一緒に食べるとは思ってませんでしたよ」
そんな二人を見ながらボソリと言ったカーウィンの一言に、伯爵令息とは思えない所作でサージェが答える。するとその意趣返しなのか
「なら今の所作をカステル家に報告しましょうか?」
「ごほっ!ぐはっ!...止めて下さい、サクヤ様」
サクヤが公爵令嬢らしい所作で夕食を済ませ、サージェに釘を刺した。当然そこで彼の所作は貴族然としたモノとなる。...が、ソレを見ても良く分かってないモーリスは不思議そうにしながらもモリモリ食べる。
すると
「ブロイ子爵には報告しておきますね」「...何をでしょう?」
サクヤは決定事項としてモーリスに伝えたが...どうやら完全に気が抜けているのか、モーリスは全く気付いていない。やれやれといった空気が場に流れたが、やっぱり気づかないモーリス。
(なんだか可愛いわね)『同級生じゃろうに』『ちょっと!起きてたの?!』
そんな彼らを眺めていたら、突然リアが乱入してきた。私がリアに突っ込むと
『起きてたも何もお主、まだ指輪を(精霊魔導核に)戻しておらぬではないかぇ?!』
『仕方ないじゃない!まだ皆居るんだから』『抜け出せばよかろうに!』
ソレは...と言いかけて、私は皆の視線が自分に向いているのに気付く。
「コホン、何でもありません。気にしないで下さい」
「殿下の言う通り気にするな。コレから何度も見かけるのだからな」
別に誤魔化すつもりは無いが、カーウィンの言い方にトゲを感じる。そう思っていると
「殿下の妹君であるエマ様にも同様の事が起こるので、同じく対応に努めてもらいたい」
ロイが口を挟む。そう言えばコイツ...何処に居たんだ?私がそう思っていると
「ロイ?乗り物酔いで従いて来られなかったアナタが今ソレを言いますか?」
「申し訳ございません」「分かれば良いのです」
ランシェが解説してくれた。だが装甲車は大人になって初めて味わったのなら、酔うのは当然だろう。現にモーリスとサージェも山間部をアレで走ったら...(車内で)吐いのだ。だがソコで一つ気になった事が...
「ランシェ?」「はい」「ヴァンは酔わなかったの?」「そうなんですよ!お姉様!」
私があの時ヴァンが酔わずに教師を捕縛したり、その後挨拶したりして来た時の事を思い出しながら妹に聞くと...
どうやらヴァンは特異体質らしく、馬車で読書も出来ると言ったらしい。ソレを聞いた三人は
「うっ...」「マジかよ?!」「あの人が可怪しいんですよ」
それぞれ何かを思い出したらしく、食事の手が止まった。すると
「そのうち慣れるさ。俺も最初はゲロったからな」「馬鹿者!今は食事中だぞ?!」「オマエも青い顔してたじゃねぇか」「ちゃんと降りてから処理しただろう!」「止めて下さいよぅ〜」「全く...ドール家の人たちときたら」「サクヤ?サラッと悪口言うの止めてくれない?」「事実ですから」
アヴェイルの一言を皮切りに、繋がって欲しくない各自の心象が一つとなり...阿鼻叫喚の夕食となってしまった。
カポン...
「はぁ〜ココは極楽か?」「そうだねぇ〜」「君たちは初めて使うのかい?」「「はい!」」
ココは大工房の中にある大浴場...
僕は何回か使わせてもらった事があるけど、この二人は初めてらしい。
「あの...ロイさん」「ロイで良いよ」「いえ...(ドール家に)仕えたのはロイさんが先なので、敬意くらいは払わせて下さい」「そうかい?」「勿論ですよ!」
そんな二人が僕に聞いてきた事は、やはり
「アレって慣れるんですか?」「ソレを僕に聞くのかい?」「ハハッ、確かに...いや、失礼しました」
乗り物酔いの事だった。正直僕は馬車の揺れもあまり得意では無い。長時間乗れば酔ってしまうだろう。
「あの上下に激しく揺れる感覚...慣れる気がしません」
「殿下が言うには、同乗するより操縦すると良いらしいよ」
そうなのですか?!と彼らは驚きながら僕に質問してくる。
そう...試験当日、僕は
一日中、山道を装甲車で走り回っていたのだ。(実際には一週間前から)
だが練習の甲斐なく...僕は吐いていた。その事実を知った二人は顔を青くするも
「何だ...慣れればどってこと無いじゃないか♪」「おい!モーリス!?」
昨日宿泊した彼ら二人は...僕を置いてたった半日で(乗り物酔いを)克服するのだった。
セシル「地球人ってソコまで酔わないわよね?」
三歳「地球人?!」
リア「クランディア人と対比した言い方をしたのじゃろうが...」
セシル「いや、何か日本人って言うと変かなって」
三歳「まぁそう言われたらな」
サクヤ「それよりも小説として必要な回なのでしょうか?」
アヴェイル&カーウィン「たまには思い出して欲しいんだよ!」
クレア「学校中心だから仕方無いですねぇ〜」
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