16話 フライングキャット
「やっど終わっだぁ゙...」「お疲れ様でした」
クレアに労われながら、私は紅茶を一口啜る。
ズズズッ...「かぁ゙〜!?」「おっさんかよ?!」「(口を)慎め!脳筋!」
アヴェイルを睨みつつも私は固まってしまった筋肉を解すべく伸びをしたり、身体を前後に揺すったりした。
「姿勢を変えながら執務はこなして下さい。それと...」「うひぃ!?」
そうしていたら何処から現れたのかいきなりサクヤが私の元へ来て、いきなり太ももを触りだした。
「違います!揉み解してるんです!長く座ってからいきなり立ち上がると、半刻もしないうちに突然苦しみだして死ぬ事もあるんですよ!」
「おぉ〜エコノミー症候群だっけ?」「えこ?私は医者ではありませんから病名までは...って!知ってるならちゃんと御自愛下さい!」
最初はビックリしたがまさかこの時代...いや、異世界だからこの文明レベルで血栓の知識が有るとは思わなかった。
「サクヤは他にどんな医療知識があるの?」「医療?」「さっき言った血栓の事よ?」「決戦?どこと戦うんですか?そんな話、してましたか?」
どうやら血栓の知識は無かったらしい。あと【医療】の概念も無いかもしれない。
「サクヤ?医者にかかった後って...普通どうしてるの?」「はい?」
私の問いにサクヤは何を聞きたいのやら...とでも言いたげな顔をした後
「普通はそこで終わりですが年寄りやこども、妊婦の場合は様子を見に行ったりはするんじゃないですか?」
サクヤがそう答えた。私はそれを聞いて、予後観察も一般ではないらしいと悟った。
「お母様の時は御殿医が診に来ていたけど「それは貴族でも最高位のドール家だからですよ」...なるほど」
既にランシェを出産した後、お母様の様態を診に来ていたのは貴族の特権だったとも知れた。今の受け答えだと先程サクヤが言った年寄りやこども、妊婦に関しては自力での移動が困難かつ自身で回復具合を認識しずらい者にだけ医者が善意で診に行くことがある...くらいの感覚だろう。
「セシル様?先程おっしゃられたケッセン?と言うのは何ですか?話の流れからするとエコ?なんとかと関係ありますよね?」
「あら?知りたいの?」「えぇまぁ...と言うか、私はセシル様の問い掛けに答えたのですから教えて下さっても良いのでは?!」
私が思案に耽ようとした瞬間、サクヤが質問仕返してきた。どうやらエコノミー症候群の事を詳しく知りたいようだ。
「サクヤ?あなた...エコノミー症候群について、詳しく知りたいのね?」「はい」
私が姿勢を正しサクヤを正面から捉えると、サクヤは短く返事をした。それから...まるで今から何か拝命を受けるような面持ちで、私の言葉を待っている。
「答える前にサクヤ。あなた...何故長く座っていると、人が死ぬかも知れないと知っているの?そして、その原因を知ってはいないの?」
私がサクヤの眼を見て真剣に問うと、サクヤは報告を上げる時と同様に答えた。
「我がエルフ家は古来より色々な事象を観測、及び検証もしております。そうやって知り得た事象ではありますが、残念ながら検証段階ではその【エコノミー症候群】とやらは再現出来ませんでした」
「でしょうね」「!?セシル様!まさかその条件をご存知なのですか?!」「たぶんね」
私が勿体ぶって話すも、サクヤは自分の知らない事を知っている私に驚愕する一方だ。
あまりからかい甲斐もないので、私は素直に教えてあげる事にした。
「長く座って死ぬものにはある特徴があるのだけど...サクヤ?それに心当たりは?」
「...貴族や一部の成り上がり、金銭に余裕のある者に多く見られる事ぐらいかと...」
私はサクヤの答えを聞いてにわかではあるが、自身の知識に自信を持った。
「血栓...も聞いた事無いのよね?」「はい」「血栓とは血の塊よ」「???」
「長く座る事で、抑えられた血管の中で血が固まるのよ。それが「なるほど!」...えぇ?!」
血栓を知らないと言ったサクヤに、何故血栓が出来るのか説明を開始したら...納得してしまった。
「だから皆、胸を抑えて死んでいったのですね!その血栓とやらが、心の臓に詰まるのですね?!」
「あぁ...ちょ〜っと違うと思うなぁ〜」「違うんですか?!」
もし自分がなったらそう感じそうだなとは思いつつ、私はサクヤに内臓の仕組みを交えて再度説明した。すると
「つまり血栓と言われるものが肺臓に詰まり、その所為で心の臓に負荷がかかるため体感的に胸が苦しくなる...と?」「大体そんな感じね。私はなった事無いから知識だけだけど」「それはそうですよ?!なったら死ぬんですから!?」「そ、そうね」
私がサクヤの勢いに押されたじろいでいると、サクヤが怪訝な表情でこちらを視てきた。
「セシル様?他にも何か...隠してません?」「!?も、もうないわよ?!」
少し狼狽えながらも、私はサクヤに全て語ったと嘯いた。多分...いやサクヤにはバレバレだろうが、これ以上はサクヤも聞いてこないだろう。彼女は私が転生者だと気付いている節がある。だが今日はサクヤの様子がいつもと違う気がする。そう思ってサクヤを見ていると
「セシル様、少し内密なお話があります。お人払いをお願い出来ますか?」
いつもは少しだけ目を伏せ、視線を合わさぬようにして(コチラを見ていても地味に視線を逸らせて)いるサクヤが目線を合わせてきた。
「真剣な話のようね...アヴェイルとカーウィンは外せないわよ」「御意」
私もサクヤに合わせて真剣な面持ちで答えると、サクヤは私の要求をすんなりと呑んだ。
「クレア」「はい...お嬢様」
クレアが私の意を汲んで退室しようとするが、心配そうにコチラを見てくる。
『リア?』『やれやれ、一人で起きるのは難儀なんじゃが...』
実際私も大丈夫だとは思っているが、サクヤからは人ならざるモノの気配に近しい感触が漂ってきている。
「もう少し我慢して下さい」「???」
そう思っているとサクヤが急に「我慢?」「お気になさらず」変な事を言い出したが、悪魔族の気配は一瞬膨らんでから...消えた。
扉を開けて出ようとしていたクレアも一瞬の出来事ではあったが、流石に見知った気配に同様を隠せない。
「ねぇサクヤ?前に言ってた上司って...」「...はぁ...玩具を待ち切れない子どもですか?」
サクヤの言った一言で、先程消えた気配が今度は一気に膨らんで
〚我を子ども扱いするでない!?〛
どこかで聞いた事のあるフレーズを残しながら、目の前に悪魔族が現れた。
サクヤ「私が真剣な面持ちでセシル様にお伺いを立てたのに!」
バエル「だって...」
サクヤ「だってじゃありません!」
バエル「(´・ω・`)ショボーン」
セシル「なんか...」
三歳「シュールだな」
リア「シュールで済ませるのがお主ららしいの」
クレア「続きます♪」
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