適材適所
今日、3回目の投稿になります。
ロイドは、紙をうけとると、さらっと見ていった。
「三つのうち、二つの薬は、町で売っています。一つは、この国にはないですが、同じ効能の薬がありますので、それにしましょう」
「薬のこと、とても詳しいんだね」
デュラン王子が驚いたように言った。
「ええ。薬学は一通り学んでおり、薬師の資格も持っております」
さすが、大学を首席で卒業しただけあるわね、ロイド!
「騎士なのに、珍しいね。薬学に興味があるんだ?」
デュラン王子が聞くと、
「いえ、まったく。いずれ、アデル様の騎士となり、アデル様の健康をお守りするために、知っていて損はないかと思い、学んだだけです」
ええっ、そんな理由で学んだの?!
努力と理由があってない気がするんだけど、それでいいの? …ロイドさん。
ほら、みんな驚いてるじゃない?
「なんか君って、本当にぶれないねぇ…」
デュラン王子がつぶやく。
「ロイ坊、なんか、重すぎるぞ…」
さすがの師匠も笑えなくなったようで、顔がひきつっている。
すると、ドーラさんが、
「ロイちゃんは、がんばりやさんだもんね。こうと決めたら、貫き通すところもかわってないわ。えらいね」
と、おだやかにほほえむ。
はにかむ、ロイド。
一瞬にして、微妙だった空気が、浄化されてしまった。
ドーラさん、あなたは聖女ですか?!
そんな聖女のため、ロイドは、すぐさま、薬を調達しに出かけて行った。
そして、私たちは、ドーラさんにゆっくり休んでもらうため、部屋をでる。
廊下にダニエルが立っていた。
「大丈夫だ、ドーラさんは、風邪だ。数日、休んでればなおるからな。今、ロイ坊が薬を買いに行ってくれた。呼びに来てくれて、ありがとな」
安心したのか、ダニエルの顔が、ぱあーっと明るくなった。
「もうお昼だが、今日の子どもたちのご飯はどうする? 俺がなにか買ってこようか?」
師匠がダニエルにたずねた。
あら、もう、そんな時間?
「ぼくが作ります。普段、ドーラさんを手伝ってるので、大丈夫。それより、ドーラさんには何をたべてもらったらいいんだろう。病気なのに…」
「はい、はい、はい! 私も、手伝うわ」
「アディー、料理できるの?」
いいえ、今世ではしたことがないわね。
でも、前世では、自分のご飯を作ってたものね。得意ではなかったけれど。
病人といえば、おかゆ。おかゆなら作れるでしょ!
が、正直に言うわけにもいかないわね、そうだ!
「ほら、私、本好きでしょ。料理本も読むの。だから、なにか手伝えると思うわ」
「…そうだね」
デュラン王子があいまいな笑みをうかべる。
「つまりだ。料理はしたことがない、ということか」
師匠が言った。
ちょっと、簡単にまとめないで!
「でも、料理の知識があるなら、材料をみて、何かアイデアがあったら、教えてくれるだけでもうれしいよ。ぼくが全部作るから」
ダニエル…、なんていい子なのかしら!
あ、子じゃなかった。私とたった一つ違いなのよね。
「じゃあ、よろしく。ダニエル! あ、私は、アディーね」
「うん、わかった。アディー」
台所に行く前に、いったん、みんなで居間に戻った。
あ、マルク。すっかり忘れてたわ…。
でも、どうしたのかしら。
マルクのまわりに子どもたちが集まって、お行儀よくすわっている。
ダニエルが、
「みんな、ちゃんとおとなしくしてた?」
と聞くと、子どもたちがいっせいに声をあげた。
「うん、おにいちゃんに、おはなしをしてもらってた」
「すごい、おもしろいんだよ!」
「おひめさまや、おうじさまもでてくるの」
マルクを見ると、恥ずかしそうに言った。
「ほら、小さい頃、ぼくたちが一番好きだった絵本あったでしょ」
「あ、最初にマルクと出会った時、持ってた絵本のこと? あれが、きっかけで仲良くなったんだもんね」
「そうそう。あの絵本なら、数えきれないくらい読んだから、一字一句おぼえてる」
私は、うんうんとうなずいた。だって、私も同じだもの。
「だから、その絵本のお話をしてたんだ」
さすが、私の親友! 本を愛する仲間だわ!
では、ご飯ができるまで、子どもたちを頼んだ。
私は料理をがんばるわ!
まさに適材適所ね。
区切りのいいところまでと思ったら、今日は三回の投稿になってしまいました。読んでくださっている方、本当にありがとうございます! うれしくて、感謝の気持ちでいっぱいです。