9.風雲①
ただならぬ気配。
エラン地方。国境という名の辺境。森の中の大洞窟の1番奥に、黒ずくめの十数名の武人が現れた。100人程が洞窟の外で待っている。、
「これか」
黒ずくめの男達のリーダー格と思われる者がニヤリと笑った。
古い剣が1本大地に刺さっている。
「とりあえず抜いてみるか」
男は剣を握った。握っただけで電撃を受けた。男は痛みに顔を歪めながら言った。
「やはり魔術か。おい、この剣の魔法を無効化しろ」
10名ほどの男達が呪文を唱え始めた。だが、なかなか終わらない。
「まだか?」
「申し訳ありません。もう少しなのですが」
「では、最後の手段だな。娘をこちらへ」
1人の少女が連れてこられた。進軍の途中で誘拐した村娘。年齢は14~15歳といったところだろう。
リーダー格の男が娘を剣の前に引きずり込んだ。剣を抜き、娘の首をはねた。血が飛散する。結果として剣が血を帯びて真っ赤になった。
「娘の生き血で眠れるドラゴンを起こし、剣を引き抜きやすくした。もう一度呪文だ」
また呪文が唱えられ始めた。リーダーは待ちきれず剣を握る。雷撃を受けたような激痛。しかし、先ほどよりは軽い。リーダーは引き抜けると確信した。
「ぬおおおおおお」
リーダーが全エネルギーで魔法を発動した。すると、少し剣が動いた。
「もう少しだ」
呪文を読み上げる声が大きくなった。
剣が光った。引き抜かれた。先ほどまでの古びた剣ではなく新品のような輝きを放っていた。
その時、大きな地鳴りがした。
「ドラゴンが目を覚ます。帰るぞ」
「本当にこれで良いのですか?」
「ドラゴンを復活させて、剣をいただくことが出来た。一石二鳥ではないか」
男達は洞窟から出て、待っていた100騎と合流。全速力で自分たちの根城に帰っていった。
それから約1時間が経過して、洞窟からドラゴンが這い出してきた。
「ゴーッ」
その雄叫びは近隣の村まで届いていた。
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