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超常ポリスは眠らない〜異世界警察と天蠍の王女〜  作者: 白谷毛虫
第二章 超常警察官
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第八話 『SAT』

「あなた⋯⋯誰?」


 明らかに警戒した様子でサクを睨みつける絵麻。

 その時、二人に黒い影が疾風のように忍び寄っていた。


「うわっと」


 サクは背後から不意に肩の関節を極められあっという間に地面に組み伏せられてしまった。


「K1からベース。『マルチョウ』一名を確保」


 どうやら『超常被疑者』の仲間だと認識されたらしいとサクは思った。『マルチョウ』というのは『超常被疑者』を指す隠語だろう。

 

 ——この人達はもしかして⋯⋯。


 サクは振り解こうとすれば容易に出来るところを、しばらく静観する事にした。どうせ今事情を話したところで聴いてもらえるはずもないのだ。


「あなた達はっ⁉︎」


 絵麻は突然の出来事に驚いて声を上げる。が、すぐに黒いアサルトスーツに身を包んだ彼らの背中に『POLICE』の文字を見つけてハッと息を呑んだ。


「我々は警備部特殊急襲部隊だ。君達には速やかに機動隊の包囲網外に出てもらいたい」


 その言葉通り、既に商店街は隊バスで輸送された大規模な機動隊員によって包囲されつつあった。


「まさかSATか! こりゃあ署長も本気だぞ」


 刑事の一人が呟いた。


「あれが⋯⋯」


 絵麻はそれを聞いて彼らがヘルメットの防弾バイザーの内側、目出し帽の奥から覗かせる自分達とは異質な雰囲気に納得していた。何というか軍隊のような凄みがあるのだ。


「撤収だ月岡! 俺達の出る幕じゃない!」


「で、でも!」


 絵麻は東都署の警察官と共に離脱しながら後ろを振り返る。確保された金髪の青年が気になったのだ。彼は本当に被疑者だったのだろうか。


 一方、SATのミッションは着実に遂行されていく。


 ——ベースから狙撃班、ターゲットの補足状況知らせ。


 SATの指揮班が狙撃班に配置場所からの狙撃の可否を無線で問いかけた。


 ——S1狙撃不可。

 ——S2狙撃可能。

 ——S3狙撃可能。


 ——ベース了解。S2、S3は現状のまま待機。


 ——B1からベース、ビル内部に人影なし。


 続いて『超常被疑者』の居る雑居ビルで作業中の技術支援班から指揮班に無線が入る。コンクリートマイクや熱感知カメラでビル内部を探っているのだ。それを制圧一班が周囲を警戒しつつ護衛している。


 営業時間前のビル内部には、屋上の『超常被疑者』以外の仲間がいない事を確認すると指揮班は次の行動を指示する。


 ——ベース了解。P班はビルに突入し屋上入口で待機せよ。


 指示通り制圧一班は迅速に突入、自動小銃を構えつつ細い階段を慎重に登り最上階に到着した。どうやら屋上通用ドアは施錠されているようだ。

 そこへ技術支援班が手際よくプラスチック爆弾を仕掛け爆破可能な状態にする。


「B1からベース、屋上ドアの爆破準備完了。屋外に『マルチョウ』の反応を確認」


 これで制圧の準備は整ったことになる。

 指揮班はこの機を逃さない。


 ——S2、S3ターゲットを狙撃せよ。対象は人間ではない。繰り返す狙撃せよ!


 狙撃班のライフルが火を吹いた。


 ——S2命中。

 ——S3命中。『マルチョウ』転倒を確認。


 ——ベースからP班。屋上へ突入せよ!


 制圧一班は爆破したドアから閃光弾を投入すると同時に雪崩のように屋上へ突入する。そのまま被弾し地面に転倒した『超常被疑者』を取り囲み一気に制圧した。

 

 その時だった。


 地上から成り行きを見守っていたサクが激しい耳鳴りに襲われたのは。


 ——ウッ⋯⋯この感じは⋯⋯!


 知っている感覚だった。邪悪な魂が放つ悪意そのものが実体化していく様な感覚——王都にスコーピオンが現れた時のそれと同じなのだ。


 突如、組み伏せられた『超常被疑者』の体が爆発的に膨らんで、制圧中のSAT隊員を吹き飛ばした。さらに膨張は加速しその姿を巨大化させていく。


 そこに現れたのはもはや人ではない『何か』だった。

 全身を覆う赤い光の鎧が体表周辺の空気を歪ませ実体がはっきり視認できないのだ。


「なんだ⋯⋯こいつは!」


 流石のSATもあまりに現実離れした展開に思わず呟いた。しかし、その特徴的なシルエットには見覚えがある。


「P1からベース、『マルチョウ』の変身を確認。こいつは⋯⋯化け蟹だ!」


 ——ベースよりP班、自動小銃の発砲を許可する。『マルチョウ』を殲滅せよ。


 制圧一班の八九式自動小銃が一斉に火を吹いた。


 ところが雨のように浴びせた弾丸は、いとも簡単にターゲットの全身を覆う硬い甲殻に弾き返されてしまう。


「まさか⋯⋯。『マルチョウ』生存を確認」


 呆然と立ち尽くすSATに巨大な鋏が迫っていた。


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