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超常ポリスは眠らない〜異世界警察と天蠍の王女〜  作者: 白谷毛虫
第一章 ようこそアストラへ
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第十四話 『決起』

 翌朝、サクとアガーテは司法局にやって来ていた。


「うわっ。すごい人」


 どうやら大規模な数の捜査員を動員しているらしく

庁舎内は彼らでひしめき合っていた。二人はその中にマキネンを発見して声を掛ける。


「おはようございます、マキネンさん。肩の傷は大丈夫ですか?」


「あ、アガーテさんサクさん、おはようございます! 幸い傷は浅かったのでこの通りですよ⋯⋯ってアイタタ」


 と、マキネンは肩を回して見せた。

 

「しかし、すごい人数ですね」


「そりゃあ、『裏ギルド』に乗り込む訳ですからね。オフィウクスのような厄介な『能力者』を相手にする可能性もありますし」


「一つ訊いていいですか。『能力者』って何ですか?  俺とどう違うの?」


 サクはこれまで気になっていた質問をする。


「『能力者』とはですね、『来訪者』や『継承者』の遠い子孫から稀に生まれる特殊な能力を待った存在です。能力の強さは血統と才能次第だそうですが、『来訪者』であるサクさんを超える者はまずいないでしょうね」


「なるほどね。この世界は大きく分けて、『来訪者』、『継承者』、『能力者』の三種類の超人が存在する訳か」


 マキネンが頷く。


「ですから、我々にその『来訪者』が協力して頂けることは心強い限りなんです。今回の司法取引の決め手でした」


「ということは私の願いが聞き届けられたのですね?」


 アガーテがマキネンの言葉に反応する。


「はい! 我々にとっても大きなメリットがあると判断したようです」


「あんまり期待されても、まだ『来訪者()()()』なんでハードル上がりますけどね」


 すると奥からヤンセン、ハンセン、ヨハンセンの三人がやって来る。


「そういうことだ旦那! 取引の結果、捜査に協力したら俺達全員不起訴にしてもらえる事になった。全部アガーテ嬢のお陰だぜ」


「お前たちあっての捜査だからな、期待してるぜ! これで良かったんだよね、アガーテ?」


「はいっ!」


「「「アガーテ?」」」


 ヤンセン達三人が顔を見合わせる。


「⋯⋯ははーん。旦那、さては昨晩アガーテ嬢と何かあったな? 何かこう、二人の距離感がグッと縮まったような⋯⋯。どこまでいったんだよ? え?」


「ばっ、馬鹿! 何もねぇよ! ねえアガーテ?」


「知りません!」


 アガーテは顔を真っ赤にして下を向いてしまった。


 実は今朝目覚めの『おはよう』の後、二人の間に気恥ずかしさが存在していたのだが、お互いそこには触れずに自然を装っていた。

 ところがそれを蒸し返される形になってしまったのだ。


「⋯⋯ヤンセン 、野暮な事を訊くな」


「そうだよ。アガーテさん耳まで真っ赤だよ」


 ハンセンとヨハンセンがフォローにならないフォローをする。


 それを見かねたマキネンがパチンと手を叩いて空気を変えた。


「はい皆さん! この後、九時から決起会があります。時間までには講堂に移動しておいてくださいね。それじゃあ私は準備がありますのでまた後で」


 マキネンは小走りに去っていった。


「ヤンセン、お前一言余計なんだよ。ところで子分達は大丈夫なのか?」


 サクがそう言ってヤンセンの横腹を突く。


「おうっ。ああ、辛うじて皆んな刃物が臓器まで達するようなことは無かったよ」


「そいつは良かった。彼らにはアガーテを守ってもらった恩があるからな」


「でもしばらくは治療と安静が必要だ。まぁ俺達が捜査に協力している間の人質みたいなもんだな」


「ちょっとサク様! ヤンセンに何を話してるんですか!」


「な、何でもないよ。子分達の怪我の様子はどうかなってさ」


「サクの兄貴、もうアガーテさんの尻に敷かれてるみたい!」


「「え?」」


 ヨハンセンの一言に、サクとアガーテが思わず顔を見合わせる。途端にその場に笑いが巻き起こるのだった。



 程なくして、サク達は決起会の時間に合わせ講堂に集合していた。どういう訳か最前列に案内されそこで待たされている間に、続々と捜査員が集合し熱気がムンムンと込み上げ始める。


 すると予定時刻ぴったりに初老の男性が壇上に上がった。白髪混じりで角刈りの頭髪、肌は色黒で背筋がピンと伸び厳格な空気を纏っている。


「現場指揮を執るマルタンだ。皆、今日はご苦労。急な呼び出しに応じてくれた職員にも感謝する」


 マルタンはそう言うとゆっくりと一同を見渡した。


「さて、昨日庁舎内で起きた殺人事件はアムネジアの村襲撃事件に端を発する一連の事件と判明した。関係者の情報から事件は犯罪を仕事として斡旋する『裏ギルド』を通じて依頼されている事も判っている。速やかに王宮に報告した結果、『裏ギルド』への強制捜査と制圧の許可が下りた。我々の威信とフレデリくクセンの名誉に掛けて、そして王都の平和の為に必ず『裏ギルド』を壊滅しなければならない! 皆の奮闘を期待している」


 マルタンの話に講堂内の熱気が高まる。亡くなったフレデリクセンを想って涙を流す者も見えた。


「次に、皆に『協力者』を紹介しよう。まずはヤンセン一家、壇上に」


 ヤンセン達三人が壇上に上がる。ヤンセンは柄にもなくカチカチに堅くなっている様子だ。


「この三人は先日、『裏ギルド』の依頼を受けて手下と共にアムネジアの村を襲撃した被疑者だ。しかし襲撃に失敗し私人逮捕の後、護送中のところを命を狙われている。彼らの謀殺もまた何者かが目論み『裏ギルド』を経由して『能力者』が実行したものだ。そんな経緯もあってヤンセン一家と司法取引を交わし『裏ギルド』の情報を我々に提供してもらう事になった」


「次にアガーテさん」


 今度はアガーテが壇上に上がる。


「アガーテさんはアムネジアの村の村長エニグマ氏のお嬢さんで、氏の代理としてヤンセン一家を王都まで護送されていたのだが、一連の事件の参考人として協力して頂くことになった」


 アガーテはペコリと頭を下げる。


「最後にサクさん」

 

 続いてサクも壇上のアガーテの隣に立った。


「サクさんはアガーテさんの同行者で、アムネジアの村でヤンセン一家、王都では『能力者』オフィウクスを退けマキネンの命を救ってくれた恩人だ。そして彼は『来訪者』と呼ばれる特別な存在でもある。彼の協力を得られる事は我々にとって大きなアドバンテージとなるだろう」


『来訪者』という発言に講堂内が途端にざわつき始める。しかしマルタンは構わず一同に背を向け正面の黒板に大きな配置図を貼り付け始める。その短い作業が終わる頃、講堂内は静まり返っていた。


「ヤンセン一家の情報により『裏ギルド』はここ、ノルド運河沿いの会員制酒場『ノエル』と判明した。入店には合言葉が必要な為、まずヤンセン一家が扉を開け彼らと一緒に数名が潜入する。メンバーは私と『能力捜査官』ピクシス、スクトゥム、そしてサクさんの四名だ」


「私はどうしましましょう?」


 と、気の強そうな女性捜査員が挙手をするとマルタンは配置図を指して説明し始めた。


「テレスコピウムの配置はここだ。君の能力で屋外から監視及び逃亡者察知、並びに各隊への指示を頼みたい。その他の各隊は配置図の通りギルドを包囲する。屋内に居合わせた者全てが対象だ。一人も逃すなよ! また、各隊の隊長には『エニグマ銃』と『対能力者弾』を携帯してもらう。能力者には発砲も許可する」


「アガーテ、今『()()()()銃』って言ってた?」


 サクは隣に立っているアガーテに小声で質問する。


「はい、お義父様が考案した武器です。まだ数はあまりないのですが、近衛兵と司法局に配備されています」


「すごいなエニグマさんは⋯⋯」


「作戦の決行は今夜二十一時だ。それに向けこれから模擬家屋でリハーサルを行う。各隊の動きについては隊長から指示を受けるように。以上、解散だ!」


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