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第十三回「小田原異世界」

(ナレーション)「天下の堅城小田原城を、未曾有の大軍で取り囲んだ秀吉様は、官兵衛の進言である重要な計画を実行に移そうとしていたのでございます…」


(小田原城を前に真剣な顔で軍議を重ねる秀吉と官兵衛。傍らには三成、そして軍議に参加するふりをして雑談に興じている徳川家康に前田利家。…さらになーんか怖い顔なので誰にも話しかけられない上杉景勝)


「だ・か・ら、官兵衛!ここはてこでも譲れぬと言うたであろう!ここ!ここじゃ!この一番広い区画に、お茶々殿の大好きなユーロブランドの免税店を丸ごと誘致してだなー、イケメン外国人ホストクラブをどーん!!それでええじゃないか!」

「はああっ!?何を寝ぼけたこと言ってるんですか太閤殿下っ、あーた血迷い過ぎですよ!野郎ばっかりのこの小田原陣にホストクラブなんて…誰が喜ぶんですか!?誰得ですか!?そもそもこの小田原こそは、この官兵衛が初めて作る絶対領域の異世界第一号店になる予定!ここには通勤電車イメクラ、ここにはデジタル撮影機の専門店、そして、お嬢様女子大に女子高があるこの区画には絶対駅を造ってもらわなくては!」

「官兵衛殿、お控えなされい!太閤殿下を差し置いておのれ一人身勝手な妄想をぶちまけるとは!調子に乗ってると通報しますよ。殿下、三成はこの小田原をリアルな性犯罪のない二次元の都にしたいと思っております。まずはここにはアニメメイト!コスプレ専門店、メイド喫茶・妹喫茶を。小田原城解放の暁には、ここでコミケや人気声優さんたちを招いての萌えイベントを開催して、海外からの集客も図りましょう!!」

「なーにが萌えイベントじゃ、いい年してこの犯罪者予備軍が!」

「直球ど真ん中犯罪者の官兵衛殿に言われたくないですよ!」

「二人ともわし、天下人なんだけど…ここは天下人の意見を尊重しようよ!」

「「うるさい!!」」

「…で、ほらこれこの前のお店の子」

「あー、あの例の女子大生の!…そうそう、あそこのママとはこの家康長いのよ!前の尾張のお店、信長様に連れてってもらったけな。又佐殿もまめですなあ。また鷹野の帰りに寄りたいですなあ」

(白熱する三人に対して、携帯の写メを駆使しながらおっさん臭さ満点のトークを繰り広げる家康と利家…そして一人沈黙している景勝)

「お前たちこの太閤の言うことを聞くのじゃ!つーか誰が金出してると思っておるのじゃ!」

「そう言う問題ではありませぬぞ、太閤殿下!この辺りはカトリック系のお嬢様女子高なども多いまさに激レア地帯!禁断の花園に我が絶対領域が足を踏み入れる最大のチャンスであり、これぞ小田原十数万の男たちの夢と言っても過言ではありませぬ!殿下も気になるでしょう!?お茶々様より若い上にお嬢様属性ですぞ!ここの通勤電車、お嬢様まみれですよ!?」

「けがらわしい!まったく軍議の席で堂々とチカン宣言とは、どこまで犯罪者が板についているのですか!お嬢様まみれだからこそ、我々男性の真摯な対応で見守っていかなくてなんとしますか!男たちの矛先が三次元に向く前に、ここは二次元の虜に致すのが得策でございます!この非合法野郎の血迷った発言に耳を貸してはいけませぬ!」

「ええいっ、この三人では埒が明かぬわ!そうじゃ、三河殿、加賀殿のご意見を訊くとしよう。…どうじゃ、お二人はわしと年齢が近いゆえ、若い愛人を喜ばせたいと言うこの太閤の気持ちが分かるであろう!?」

(突然話を振られた二人、戸惑い気味に相槌を打つ)

「えっ、ええ…その我々は太閤殿下の案で(どうでも)いいと思いますが。なあ、前田殿」

「うっ、うん。とりあえずそれでいいんじゃないかなあ」

「よくないですよ!茶々様はもう二十歳すぎの上に一人、こっちはお嬢様まみれですよ!お二人も若い子いっぱいのお店のが好きでしょう!?」

「「い、いやまあ、それはそうだけどね官兵衛殿」」

「お二人とも、そっちは悪の道ですぞ!押しも押されぬ大大名のお二人が『未成年に金を渡しみだらな行為をした疑い』とかで逮捕されてもいいんですか!?『愛知県自営業 徳川家康容疑者 石川県自営業 前田利家容疑者』ってテレビに出ますよ!?」

「「いやそれは困る」」

「お二人とも、自分の意見と言うものはないのござるか!?」

「「面目ない。若いものの話はよく判らなくて」」

(主体性のまるでない二人にいらだつ秀吉)

「もうよい。ここは景勝殿に頼るしかあるまい。見よ、景勝殿の堂々たるお姿を。さっきから怖い顔して黙ってるから誰も話しかけないし、正直何を考えているのか分からないが、さすがはかの軍神上杉謙信の再来と呼ばれたお方!謙信公には橋本ちかげが別の連載でお世話になってるし、ここは景勝殿の意見を聴くのが一番と思わぬか!景勝殿、貴殿の心中やいかに?」

「この景勝の意見を所望でござるか。承知致した。でははっきりと申し上げましょう」

(ぴくりと頬の筋肉を動かした景勝、やがて重厚な声音でしゃべり始める)

「…我らが先代謙信公は、誉れ高き武人にして今なお越後家中では軍神と崇め奉らるいわば絶対的存在。しかもそれだけには留まらなかった」

「…?」

(嫌な予感したが先を促す秀吉)

「かの虎千代さまこそ、ポニーテールにメイド服の似合うまさに魅惑の萌え美少女!」

「い、いや景勝殿。それは橋本ちかげの別の連載での話でござろう…?」

「しかも本人は好きでメイド服とか着てたわけではないと思うが」

「問答無用!先代謙信公…いや、虎千代姫さまは背の低いかわゆいお方でござった。よってこの景勝、ちっちゃい萌え美少女が大好物にござる!!」

(景勝の圧倒的力説に全員、げんなりして沈黙する)

「やっぱ訊くんじゃなかった…」(秀吉)

「景勝殿!では完全に三成側と言うことですな!メイド・ちっちゃい美少女・貧乳とくれば、この三成の二次元領域にはど真ん中ストライクではないですか!?」

「景勝殿、だまされてはいけませんぞ!奴が目指すは貧乳の楽園、つるぺた属性以外は認めませぬ!チビ巨乳と言うカテゴリがない以上、そんな場所に芳しきちちしりふとももの絶対領域はありませぬ!先代虎千代さまは背は小さくとも、貧乳ではありますまい!よく思い直して下され!」

「うう…確かにどちらの言われることも正鵠!こっちにはメイド…こっちはちっちゃい…巨乳…どうする…これは決められぬ…先代さま、お導きを!」

(結局、官兵衛と三成の間をゾンビのようにうろうろする景勝。一番主体性がない)

「どうする…なんだかいくさもやる気なくなってきたけど」

(意気消沈する秀吉の前に、鎧武者が二騎躍り込んでくる)

「ご無礼!敵襲にござる!」

「小田原が動いたか!せっかくこっちはいくさにかこつけて遊ぼうと思ってたのに!」

「そうではございませぬ!大坂より北の政所さまが大名勢の女房衆やその娘たちを率いてご進発!その軍勢は二十万、我が小田原を囲む勢いにござりまする!」

「なっ、なんと!」

(遊んでたのがばれ、青くなる秀吉)

「そ、それはやばいな」

「しかもそれだけではありませぬ!黒田家からは(てる)様が大阪府警・兵庫県警の合同機動隊を率いて進撃中!『軍チカン兵衛』『二次元三成』その他多数の手配状を携えておりまする!」

「「ひっひい…」」

(青くなる官兵衛と三成)

「みっ、皆の者!!いっ、今からでも遅くはない!まっ、真面目にやろう!!さすれば命ばかりは助けてくれるかも…!今からっ、今から小田原に攻め入ろうではないか!!」


(ナレーション)「こうして天下の堅城・小田原城はようやく落ちたのでございます…」


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