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強面虎獣人と甘い恋  作者: Latte


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19/19

後日談1

蜜月休暇が始まってから二週間。ほぼベッドの住人と化していた私は、意を決してアルに「アルの家族に挨拶に行きたいです!」とお願いした。アルは嫌そうに顔をしかめて「行きたくない」と言う。もしかして私が嫁だなんて恥ずかしいのかな、家族に紹介したくないのかなと不安になり、思わず目が潤んでしまう。


でもアルは「お前の考えているようなことはない。俺がお前を外に出したくないんだ。まだマーキングが終わっていない」と、甘えるように額を擦り付けてくる。こんなに毎日一緒にいるのに、まだ足りないなんて……。でも、私はどうしてもアルの家族に直接会って、結婚を認めてもらいたかった。


「お願いします」と何度も頼み込むと、アルはついに折れて「明日行こう」と約束してくれた。ただし「今日はベッドから出さない」と言われ、結局その日はまた甘く愛されてしまった。


翌日、馬車でアルの実家へ向かう。大きな門と広い邸宅に圧倒されながら、アルに手を引かれて中へ。玄関では執事のセバスチャンさんが丁寧に出迎えてくれ、「アリスと申します。どうぞよろしくお願いします」と緊張しながら挨拶した。アルは私の肩をしっかり抱いて、まるで家族に私を見せつけるようだった。


案内された応接室には、アルのご両親とお兄さん、お姉さんが揃っていた。美しい虎獣人の女性が「アドルフの母のリリーです」と名乗り、私は思わず「お母様!?お姉さんかと思いました!」と口走ってしまう。お母様は優しく微笑み、「抱きしめてもいいかしら?」と両手を広げてくれたけれど、アルがすぐに私を抱き寄せて「ダメに決まってるだろ」と唸る。家族の前でも独占欲全開のアルに、思わず苦笑いしてしまった。


父のルシアさんは「アドルフ、ここには家族しかいないんだ。そんなに囲い込むのはやめなさい」と笑っていた。私は「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。皆様にご挨拶もしないまま婚姻してしまったことを謝りたくて参りました」と頭を下げる。


「違う、アリスが謝ることはない。俺が婚姻を急いだんだ。アリスを離せなくて、早く証明が欲しくて。」

アルが優しくそう言ってくれる。


「私達は気にしてない。アドルフの家族になってくれてありがとう」

「そうよ、こんな可愛い子が嫁に来てくれるなんて嬉しいわ」

お父様もお母様もそう言って優しく微笑んでくれた。


「まぁ、番だからな。番を一刻も早く自分のものにしたいという衝動は獣人の本能だから仕方ないさ。君はただアドルフのわがままに言いくるめられただけだろう」

お兄さんはそう言ってニヤリと笑った。アドルフはバツが悪そうに顔を逸らす。


和やかな雰囲気で進む中、険しい顔をしたお姉さんが私を睨んで口を開いた。

「みんなめでたいわね。この子がアドルフを騙してるかもしれないのよ。ねぇ、あなた、本当にアドルフが好きなの?伯爵の身分欲しさに近寄ってきたなら早く逃げた方があなたの為よ。虎のしつこさったらないからね。」


その言葉が棘となって突き刺さる。


「リーリア姉さん、アリスになんてこと言うんだ。」

アルが私を背に庇い、唸る。

「あら、本当のことじゃない。突然現れて突然あんたを受け入れましたなんて信じられるわけないわ。前の婚約者のことだってアドルフは傷ついてたのに、これ以上訳のわからない女に傷つけられてたまるもんですか!ねぇ、あなた本当のこと言いなさいよ。アドルフは三男だから爵位なんて継げないし、騎士なんてやってるけど顔が怖いからほとんど裏方よ。華やかな職業だけど実際は違う。あなたにメリットなんて何もないわ。アドルフを裏切るならはやく消えて。」


私がアルを愛しているなんて全く信じていない瞳に怯みそうになる。アルも最初こんな瞳をしていた。


「リーリア」

お父様がお姉さんを嗜めるように名前を呼ぶ。

「アドルフが一方的にあなたに執着したんでしょ?今なら私があなたを逃がしてあげる。」

お姉さんは嘲笑うように私を見る。


「そんなことしたら絶対許さない。アリスは絶対離さない」

アルがお姉さんの言葉に反応して私を巻き込む手に力を入れる。


「2人ともやめなさい」

お父様が低い声で2人を止める。

お姉さんは言葉を飲み込んで座り直した。


重苦しい沈黙が降りる。私は発する言葉を探す。


「あ、あの、私が先に好きになったんです」

うまく伝えられるかはわからない。でも伝えなきゃ伝わらない。


「えっ?」

お姉さんが怪訝そうに私を見る。


「私が先にアルを好きになりました。王都に来てすぐにアルに助けていただいて……一目惚れだったんです。今のリーリア様のようにアルは最初信じてくれませんでした。でも私がしつこく追いかけ続けたんです。アルに大切な人ができるまででいいからそばにいさせて欲しいって……私も初めての気持ちでどうしても諦められなくて……でも身分が違うこともわかっていたので、結ばれるはずなんかないって思っていたけど、アルが好きな気持ちだけは止められませんでした。申し訳ありません」


目頭が熱くなる。なんで泣きそうになっているのか自分でもわからないけれど、気持ちが昂って、どうしようもない。伝えたい思いが大きすぎて、気持ちが止められない。


「なんで謝るのよ」


「皆様の大切なご家族のアルを私なんかが好きになってしまいました。私がこの想いを伝えていなければ、アルはもっと素敵な良家の御息女と結ばれて祝福されて幸せになっていたかもしれません。平民の何も持たない私がアルを好きになって、アルにこれ以上ないほど愛してもらって……申し訳ありません。もしアルの幸せを奪ってしまっていたのならと考えると私は自分で自分のことが許せないんです。でもアルを離したくないと思ってしまう自分がいるのも正直な気持ちです。不敬を承知でお伝えいたしますが、アルが貴族でなければと思ってしまったこともあります。アルにも伝えましたが……私はアルの爵位なんて興味ありません。何も持たなくてもアルが好きです。」


ぽろりと溢れる涙を隠すように、アルの手が私の目元を覆う。


「アリス、ありがとう。でも、もう充分だ。」

照れくさそうなアルの声。


「で、でも、まだうまく伝えられてません!!」


「充分よ!!疑って悪かったわ」


アルの指の隙間から、顔を真っ赤にするお姉さんが見えた。

「前の婚約者のことでアドルフが傷つけられたのが許せなかったの。」

「婚約者・・・」

ズンと気持ちが沈んでいく。


「アリス、違うからな、お前に出会う前の話だし、実際俺は相手の顔も知らない。」

アルは慌てて私を宥めるように説明する。


「あの小娘、アルの顔も見ずに婚約破棄したのよ!確かにアルの顔は人を殺した凶悪犯のように怖いし、威圧感はあるけど、何も悪いことしてないのよ!あっちから頼み込んできた婚約のくせして、陰からアルを見て『こんななりだから婚約解消してくれ』なんてありえないでしょ!」

お姉さんは顔を真っ赤にして憤る。


アルを陰からこっそり見て、婚約破棄・・・


「もしかしたら自分には釣り合わないくらいアルが格好良かったから、泣く泣く諦めたのかもしれません。その気持ちならわからなくないです。」


「「それはない」」

お姉さんとお兄さんが声を揃えて突っ込む。


「アリス、もう本当、頼むからやめてくれ」

アルが真っ赤になった顔を手で覆って私を止める。


「何を止めるんですか?もし今元婚約者の方が『やっぱりアルを諦められない』って出てこられたらどうやって戦おうって考えていて・・・私にはお金も身分もないけど、この気持ちだけは誰にも負けません!!アルの格好良さを語り合える人がいるのは嬉しいけれど、元婚約者の方なら私絶対嫉妬しちゃいます。想像するだけで嫉妬しそうです!」


「本当やめてくれ」

アルが慌てて私の口を塞ぐ。


「むぐ」

アルの耳と尻尾が落ち着きなく動く。こんなに可愛くてかっこいい人を見て惚れないなんて信じられない。


「ははははは」

お父様の大きな笑い声にびっくりして体が跳ねる。


「ふふふ、本当可愛らしいわね。私、アリスさんが大好きになっちゃった。アリスさん、心配しなくていいわよ。元婚約者はもう二度とアルの前に現れないから」

お母様はそう言って微笑んだ。


「アドルフ、面白い子捕まえてきたな。」お兄さんがそう言ってくつくつ笑っている。


「疑って悪かったわ。あなたみたいな変な子もいるのね。」

私のどこが変だと言うのだろうか・・・首を傾げると、アルの家族は顔を見合わせた後、愉快そうにさらに笑った。


アルは恥ずかしそうに、でもどこか幸せそうに私の髪に顔を埋めた。




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