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36 礼侯

 黄初二年(221年)、于文則、没す。

 ひそやかな死であった。

 戦を離れ、旗を降ろし、野に風が吹いていた。

 

 その生涯は、乱世の礎を支えた一筋の律。

 誉れを求めず、その影をもって世を正した。


 時代は彼を蔑んだ。

 剛毅で威厳のある人柄と評しながら、その厳しさから人望を得ることの出来ぬ将であったと記し、終わりを全うしなかったと責めた。


 されど、その剛の内には、深い誠と悲しみがあった。

 法のために情を抑え、己を律し、なお人を人たらしめんとした。

 乱世を駆け、ただ懸命に人として生きた。


 天は名を厲(れい)と記したが、その心は礼にある。


 ゆえに言う。

 彼の一生は、厲侯にあらず。


「礼侯」であった、と。


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