終章 そして二人は
心地よい鳥のさえずりの聴こえてくる緩やかな傾斜の並木道。
朝の光がひときわ鮮やかなのは、きっと今日が特別な日だからだ。
ここで昨日美しい夕日の中、一生忘れることはないであろう鮮やかな景色を見た。
そう、あの人の肩越しに。
そして昨日までと違う新しい朝が目の前に広がっている。
穏やかな風が揺らす少し色づいた葉をつけた桜の木の下で、少女は静かなときめきを胸に少年の姿を探す。
やがて今日も少し恥ずかしげな顔をした少年は、少女に向かって手を振るのだ。
「おはよう」
そしてひかりは駆けだす。
抑えきれない心のままに。
澄みわたった空の下、長い黒髪は弾みながら光を集める。
お互いに初めて出会ったかのように二人は恥じらいを見せ、少しはにかむ。
「持ってあげる」
肩に掛けていた荷物に少女はそっと手を伸ばす。
そしてこの眩しい笑顔を見せる少女の手は、簡単に少年の心の中に届いてしまうのだ。
「いつもありがとう」
ひかりの大好きな少し恥ずかしげな声。
「いいの。持ちたいの」
そしてひかりはいつも優しい笑顔を向けてくれる少年にそっと寄り添う。
顔を上げた二人の向こうに朝日に映える白い校舎が見える。
昨日までとはまるで違う鮮やかな景色につつまれながら、二人は肩を寄せ合い歩き出した。
あとがきに代えて
初めまして、ひなたひよりと申します。
最後まで「ひかりの恋」をご覧頂き感謝申し上げます。
ある意味衝撃的な少年と少女の出会いから告白までを、切なく描き上げようと筆を進めた本作は、ヒロイン時任ひかりと高木誠司がお互いに惹かれ合いながらも、その想いの深さゆえに悩み苦しみながら成長してゆく物語となりました。
取り巻く人たちに支えられ、ひかりと誠司はお互いに想いを伝え合い、ようやく新しい一歩を踏み出すことが出来ました。
そしてひかりは誠司と共に、それからの物語を歩んでいきます。
思い入れのある登場人物の心の揺らぎを通して、青くてすっぱい青春の一頁を少しでも表現できていれば幸いです。
一つの物語を終えた「ひかりの恋」は「ひかりの恋それから」に舞台を移して、ふたたび皆様の前に戻ってきます。
願わくばもうしばらくヒロインひかりと共に、それからの物語を駆け抜けて下さればと思います。
それでは最後にもう一度お礼を言わせてください。
ありがとうございました。そしてまたお会いできることを楽しみにしています。
ひなたひより




