第八十八話 完勝
【クロエside】
「はあ、私はダークネス様のお迎えの準備で忙しいのですよ。虫けら如きに時間を割くほど暇では無いのですよ」
そう言いながら、ヨルダムは気配を消してクロエの背後に回り、何のためらいも無く手刀でクロエの首を刎ねようとする。
しかし、その手刀は確実にとらえたと確信するも、あっけなく空を切るのだ。
「気が早いっすね秘書の、えっとヨルダムさんでしったっけ?」
「ええ、私の名前はヨルダムですよ。それにしても、今の一撃で確実に殺したと思ったのですが、いったい何をしたのですか?」
「何って言われても、ただ避けただけっすよ。ずいぶんとゆっくり攻撃してくるっすから、何か罠でもあるのかと考えたっすが、特に何も無かったっすね」
「あれがゆっくりですか。どうやら、貴女は我々にとって邪魔な存在になりそうですね」
ヨルダムがクロエの事を対等な敵と認識し、先ほどまでとは違い殺気を纏わせ構えを取る。
そこで、クロエの通信用魔法具からみんなの声が順に聞こえてきた。
『こちらイミルです。えっと、ケルベイトスって魔族はしっかり消滅させましたよ』
『シオンだよ。ジャネンだったかな。死四天の一人の首は刎ねといたよ』
『我だ、シャロンじゃ。筋肉ダルマのザリエルとか言う魔族は上半身と下半身が綺麗に分かれたぞ』
『エルシーだ!死四天最強だって言うベルビュートは、私が魔力を解放したら勝手に自害してしまった!クロエ団長、ダークネスとか言う今代の魔神はクロエ団長よりも強いかもしれないらしいから、私はリンネの所に向かうぞ!クロエ団長もさっさと片づけてリンネの所に向かってくれ!』
「だそうっすよヨルダムさん。ヨルダムさんの部下の死四天は全滅したみたいっす。ヨルダムはどうするっす?ここで死ぬっすか?」
「死四天など、所詮は私の半分の力もない奴らです。それに死ぬのは貴女ですよ」
「話し合いは無理そうっすね。じゃあ、私もリンネ君が心配っすから、全力で行かせてもらうっすよ」
『妖精竜神』
クロエは左右別々に竜の翼と妖精の翼を生やし、手足は龍の鱗で覆われ、全身は青白く光らせ神秘的な状態へと変身する。
さらに、元々膨大になった魔力に加え、妖精族の特性として周囲から自然の魔力も吸収し、さらに膨大な魔力を身に纏う。
「近くに世界樹もあって、ここは魔力が溢れてるっすね。今ならリンネ君にも勝てそうっすね」
クロエはその溢れんばかりの魔力を使い、魔力で弓と光の矢を作り出す。
そして、その光の矢を弓で引きヨルダムへと向ける。
「覚悟は良いっすか、ヨルダムさん?」
「そんな一本の矢ごときで私を倒せると思っているのですか?」
ヨルダムはありったけの魔力を右手に集中させ、そこに黒い球体を作り出す。
ベルビュートたちとは違い、ヨルダムは魔力を集中させる事が出来る。
ヨルダムはその黒い球体をクロエ目掛けて発射する。
それに合わせ、クロエもヨルダムへ向け矢を放った。
「その黒い球体は単純な魔力の塊っすね。ずいぶんと威力もありそうっすね。でも私の光の矢は凄いっすよ」
「さよう、私の全魔力を注いだ黒球。その威力は世界樹ですら一撃で大破させるほどですよ」
次の瞬間、光の矢と黒球が衝突した。
そして、黒球は一瞬にして光の矢へと吸収されてしまうのだ。
「何!?私の黒球を吸収したですって?」
「これで、私の勝ちっすね。私の光の矢は悪しき物を吸収するっす。観念するっすよヨルダムさん」
「そんなそんなそんなぁぁぁぁ………」
光の矢はヨルダムへ到達すると、そのままヨルダムも吸収してしまった。
そして光の矢はその後、天へと上昇し上空で弾けて光の魔力が降り注いだ。
その光の魔力は魔族によって被害の出たユグドラシル神国を癒す光となり、森は命を吹き返し命あるものは流れてくる魔力で傷や体力も回復している。
『私も終わったっすよ。今、天から降り注いでる光の魔力は私の魔法の余波っす。その光の魔力に触れてもらえば魔力や体力も回復するっすよ。少しでも消耗してるなら、その魔力を吸収しておくっす』
こうして、死四天・魔神秘書との闘いに完勝した究極魔法師団の面々は魔力と体力を回復させると、全員がリンネの元へと向かったのだ。
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