第八十一話 ミヤビ・ルルメルク
「少しの時間、遊んであげるから好きに攻撃してきな。5分間は僕様は攻撃しないでいてあげるからね」
「ずいぶんと余裕だな。途中で泣き言を言っても知らないからな」
リンネは身体強化、血液操作、竜化で限界まで身体能力を向上させ、さらに2000万の魔力を込めた小型人形を100体作り出す。
リンネは100体の小型人形と共にケルベイトスの方へ全力で近づいて、全方向から無数の攻撃を繰り出した。
「へえ、人間にしては少しは出来るようだね。三級魔族如きじゃ負けちゃうわけだ。君なら二級魔族にも勝てちゃうかもね」
ケルベイトスは、その無数の攻撃を全てかわしながらも軽口を続けている。
時折当たりそうな攻撃もあるが、その攻撃も簡単にいなされてしまう。
「でもこの程度じゃ、僕様にかすり傷も与えれないよ」
「一級魔族って言うのは、ここまで強いのか?」
「僕様は魔力放出量1億で、魔力放出量だけなら魔王様に次いで魔族№2だからね。固有魔法も魔力倍化で常時魔力放出量2億になってるしね。だから僕様が人間如きに傷を負わされるなんてありえないんだよ」
「魔力放出量はよくわからんが、お前が強いってのは分かったさ。でも、俺がどうにかしないと、他にどうにか出来るやつもいないしな」
「ふーん、君が人類最強なの?」
「どうだろうな。俺達の国では俺より強い奴はいなかったが、世界は広いからな」
「そっか。でもそんな事はどうでもいいかな。それより、そろそろ5分経つけど、もおやりつくしたかい」
「そうだな、ぶっちゃけお前に勝てるビジョンが見えてこないな。どうしようか悩んでるところだ」
「君は随分と素直だね。じゃあ5分経ったし、こっちからも行かせてもらうよ」
ケルベイトスが一瞬でリンネの背後に回り、右手を軽く振り下ろす。
その右手がリンネの左肩に当たると、豆腐を切るかの如く簡単にリンネの左腕が切り落とされた。
「っく!『小回復』」
リンネは小回復を唱えて左腕を一瞬で元通りにした。
しかし、ケルベイトスの動きが全く見えていなかった為、その後も両手両足を何度も切り落とされては回復の繰り返しだった。
「凄いね、どれだけ切っても回復出来るなんて、君の魔力は随分と沢山あるんだね」
「俺の魔力は無限だからな。尽きる事はないんだよ」
「へえ、魔力総数なら僕様より上なんて誇ってもいいよ。でもまあ、君もここで死んじゃうんだけどね。今は手足を切り落としてるけど、首を落とせば回復も出来ないだろうからね」
「そうだな、さすがに首を落とされたらどうしようもないな。だが、俺も最後まであきらめるつもりはないからな」
戦闘が始まって僅か10分程度だったが、その間にすでに数百回と手足を切り落とされては回復をしていた。
魔力は無限だが、精神力には限界があり、すでにだいぶ消耗している状態だ。
途中でクロエたちも到着はしていたのだが、正直戦いに混ざっても邪魔にしかならないのは分かっているようで、誰もが見守るしか出来ない状況だった。
そして、その後も数百回と手足を切り落として遊んでいたケルベイトスだったが突然冷めたような口調で言葉を発する。
「さすがに僕様も飽きてきたな。人間にしては随分頑張るし、何回切っても回復するから愉しんでたけど、特に今よりも愉しくなりそうなことも無し、そろそろ死んでもらおうかね」
そう言って、ケルベイトスがその手をリンネの首へ向けた時だ。
その手がリンネの首に届く瞬間に首と手の間に一本の刀が割り込んだ。
「最近私の所に来ないと思ったら、こんなところで何してるエンマ」
桜色の美しいセミロングの髪に赤い瞳。
随分と小柄でエルシーやクロエと同じぐらいの見た目の少女。
至極整った顔だが、その表情からは感情を読み取ることが出来ず、何を考えているのか全く読み取ることが出来ない。
「何だい君は?僕様はこれからこの人間を殺すところなんだから邪魔しないでくれるかな?」
「お前こそ何?私のエンマを殺す?冗談でも許さないよ?」
「冗談だって?まあいい。誰から殺しても一緒だし、先ずは君から殺してあげるよ」
「自分が切られてることにも気付かない雑魚が私を殺せると思ってるの?」
「何を言って…はっ!?」
今さっきリンネの首を落とそうとしていたケルベイトスの右腕が根元から綺麗に切断されていた。
ここにいる誰一人として、その一閃を目でとらえる事など出来ていなかった。
「いつの間に僕様の腕を!お前はいったい何者だ!!」
「私はミヤビ・ルルメルク。そこにいるエンマのお嫁さんよ」
「ミヤビ・ルルメルクだと。先代の魔神サタンロード様を倒したあのミヤビ・ルルメルクだっていうのか!?」
「サタンロードなんて知らないけど、お前みたいな変な奴なら何人も殺して来たよ。お前も死ぬ?」
「ミヤビ・ルルメルクが相手じゃ分が悪いね。僕様は一旦引かせてもらう事にするよ。ミューラン、君は用済みだから、じゃあね」
こうして、一級魔族のケルベイトスは次元の向こう側へと去っていった。
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