第六十七話 里帰りのエルシー
「さて、ではこれで今回の調査の目的は完了しましたし、帰るとしましょうか」
「ああ、そうだな」
「なあリフレにリンネ。私は一回ママの所に行ってからシルビアン王国に戻ってもいいか?」
「エヴァおばさんはノンノ村に戻ったんじゃないのか?」
「そうだぞ。だからノンノ村経由でシルビアン王国に戻ろうと思うんだ。今回の件の報告と、血液魔法を覚えた後に手合わせはしてないから、帰る前にもう一回だけ手合わせして帰りたいんだ」
「それでしたら、私も付いていきますよ。エヴァおばさんに聞いたお母さんの事実も知りたいですしね」
「だったら俺も付いていくさ。元々期間が決まってる調査でもないし、地元に寄るぐらいは良いだろうからな」
「それでは、ファウストさんに報告だけしたら、三人で久しぶりに里帰りとしましょうかね」
こうして、リンネたちはファウスト達に報告をした後に、一時里帰りをする事にした。
ファウスト達は報告を受けるも、今の生活に不便もないとの事で中央都へは移動せずに、その集落に留まるとの事だった。
そしてリンネたちはファウスト達に別れを告げるとノンノ村へと向け、移動を開始した。
道中は特に問題も無く、空中移動の為モンスター等に遭遇することも無く、二週間ほどの時間でノンノ村へと着く事が出来たのだ。
「あれエルシーちゃん?どうしたの?」
「ただいま、ママにパパ!最後にもう一回手合わせをお願いしたくって、シルビアン王国に戻る前に寄らせてもらったぞ!」
「そう言えば、血液魔法を覚えてからは手合わせしてなかったね。良いよ、軽く揉んであげるね」
「今度はそう簡単にはやられないからな!」
「ちょっ!エルシーちゃん!ママと手合わせなんて本気で言ってるの?」
「本気だぞパパ!私だってずいぶんと強くなったんだからな!」
「いやでも…ママはちょっとあれだから…」
「あれって何?私に何か不満でもあるの?」
「無い!不満なんて何も無いぞ!」
「ふふ、可愛い人ね。じゃあエルシーちゃん、訓練場に行こうか」
「ああ、宜しくだぞママ」
訓練場に着くと、エルシーとエヴァは向き合い、手合わせを始めた。
「さあ、どこからでも良いよエルシーちゃん」
「最初から全力で行くからなママ!」
『雷神』(足)
『炎神』(右手)
『大地神』(左手)
『血液操作』
『血刃×10』
エルシーは身体強化系魔法を同時に三種発動し、さらに体内の血液を操作し皮表を鋼の様に固くする。
更に自身の周辺に十本の刃を作り出して、血液操作で自在に操っている。
「これが今の私の全力だ!」
エルシーは、両手と十本の刃を使用し、エヴァに向けて全報告から攻撃を仕掛けていった。
エヴァはそんなエルシーの攻撃に対し、その速度をはるかに上回る速度で全てに対応していった。
しかし、360℃全方位からの攻撃という事もあり、時折打ち漏らしもあり、何回かはエヴァの身体に掠っていた。
しかし、掠っているだけで全くダメージは与えられておらず、時間経過と共にエルシー周りにあった刃を一本、また一本と砕いて行った。
再度作り直す事も可能だが、戦闘しながら新たに創り出しても精度が低く、最初に作り出した刃より劣ってしまい、それでは意味も無いので、残っている刃に集中することでさらに速度を上げていった。
約10分の時間が過ぎた頃には、十本の刃は全て砕け散り、残すは二つの拳となった。
「ずいぶんと上達したねエルシーちゃん。私もずいぶんと打ち漏らしちゃったよ」
「それでも一撃としてまともには入ってないじゃないか!全部掠るだけで、ママのダメージはゼロじゃないか!」
「確かにダメージは無いけど、今までは掠る事すら出来て無かったし、私はエルシーちゃんの成長が見れて嬉しいよ。でも、その掠った攻撃のおかげで私の恰好もきわどくなってきたし、そろそろ終わらせようかな」
エヴァはエルシーの攻撃をほとんどは撃ち落としていたが、その打ち漏らしの刃が服に掠っていた事で、来ていた服がすでのボロボロだ。
その破れたところからは下着だったりも見えてしまっている。
「あっ、恥ずかしいからあんまり見ないでねリンネちゃん。それにほら、横で怖い顔した旦那もいるし、ちょっと見ないでいてくれると嬉しいな」
そう言われ、横を見てみると鬼の形相のグランおじさんがいた。
今回の原因はエルシーにあるわけだし、そんなに睨まないでほしいのだが。
そんな事を考えていると、次の瞬間には決着がつこうとしていた。
「じゃあ、少しだけ本気を出すからねエルシーちゃん」
エヴァが大きく息を吸い込み、息を止めたと思ったら次の瞬間には一歩エルシーに向け踏み込んでいた。
そして、その一本の踏み込みでエルシーの目の前まで移動し、右手の拳を真直ぐ前へと突き出した。
その右手は、エルシーの鳩尾に綺麗にめり込み、エルシーはその一撃で数十メートルと吹き飛び、意識を失った。
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