第十話 道具屋にて
優しいお姉さんは好きですか?はい好きですよね。
癒し系はいつの世界でも必要とされています。
結婚するなら美人よりも愛嬌です。
でも、やっぱり美人に惹かれますよね。
「早い戻りになったな団長」
「いやー、申し訳ないっす!まさか一日目にして破れたのは予想外っす。それにしてもリンネ君には見られちゃったっすね。あっ、リンネ君はそのままダンジョンに向かいたかったっすか?」
「バカな事言ってないで早く新しい寝間着を準備してくれ。俺は街に行ってテントを探してくるから」
「了解っすよリンネ君。じゃあ準備が終わったら団長室に来て欲しいっす」
「わかったよ。あと、寝間着は念のために何枚か準備しておいてくれよ」
「心配性っすねリンネ君は。テントも準備するから大丈夫っすよ」
「だから、念のためだ。じゃあ行ってくるからな」
「行ってらっしゃいっす。あっ、テントは経費っすから領収書は忘れないっすよ」
「わかったよ団長」
そう言って俺とクロエはそれぞれの準備に向かった。
クロエに関しては自身の寝間着の為、自宅に向かって取りに行くのでおそらくは短時間で終わるだろう。
俺は道具屋に行ってテントを購入することになっているので、今から街に繰り出す事になった。
クロエと別れて街に行くと、俺の住んでいたノンノ村ではありえない程の店が立ち並んでいた。
ノンノ村では防具や道具、回復薬など売っている店など一軒しか無かったのだ。
特に需要も無いから当然なのだろうが、需要も無い為品ぞろえに関しても非常に悪かった。
しかしシルビアン王国では当然防具なら防具屋、武器なら武器屋、各種回復薬なら薬屋と専門で分かれている。
大きな商店では全てを取り揃えている所もあるが、そう言ったところは一般的な物が多く、掘り出し物などは期待出来ない。
なので俺は一軒の目についた道具屋へと入っていった。
「いらっしゃーい」
店主はずいぶん若く、見た目で言うと俺と変わらないぐらいか。
青い髪をポニーテールにして、目は黒く顔には少しそばかすがあり、何と言うか愛嬌のある娘だ。
背はそんなに高くないが、おそらく155㎝ぐらいか。
でもなんだ、リフレと同じぐらいのお胸様が、その愛嬌ある顔とはアンバランスで、好きな人は好きなんだろう。
「今日はどんな品をお探しですか?」
「これからダンジョン調査に向かうんだが、道中やダンジョン内での野営用にテントを探しに来た。一人用…いや二人程度が寝れる大きさのテントを探しているんだが、何かおススメとはあるか?」
「ダンジョン調査ですか?それではお兄さんは魔法師さんですか?」
「ああ、一応第十宮廷魔法師団に所属だ」
「第十宮廷魔法師団って事は、クロエちゃんの団ですね」
「何だ、団長の事を知ってたのか?そうだな、それでこれからその団長とダンジョン調査に向かうから、その為にテントを買いに来たんだ」
「クロエちゃんはいつも一人でダンジョン調査に行ってますけど、今回は二人で行くんですか?」
「俺がまだ宮廷魔法師団に入ったばかりだから、説明もかねてなんじゃないか?」
「ふむふむ、それで二人でダンジョン調査ですね。それで二人で寝れるテント…」
店主の娘は何かを思いついたのか、手と手を打ち合わせると店の奥に入っていった。
そこからしばらく戻ってこないので、俺は他にも使えるものが無いかと店の中を見て回ることにした。
そこにはテントや屋外用の調理道具、他にも動物を捕獲する為のトラップや、何に使うかわからない鞭にろうそくと、色々な物が揃っていた。
店を適当に見て回っていると店主の娘が戻ってきて
「おまたせしました。これなんてどうですかお兄さん」
店主の娘が持ってきた物はずいぶんと小さくて軽く、短剣程度のサイズしかないものだ。
「これがテントなのか?」
「そうですよ。クロエちゃん考案で一般販売されている魔法具なのです。赤いボタンがありますが、それを押すとワンタッチでテントになるんですよ。しかも魔法障壁付きで外部からは雨風にも強くて防虫防臭効果付き。内部からは衝撃防止に防音機能付きでどれだけ激しい夜を過ごしても外部には漏れませんよ」
「ちょっと待て。外部からの障壁は確かに助かる機能だ。内部からにしても外部に漏れてはダメな話などには有効だろうな。でも俺と団長はそんな関係じゃない。ただの団長と団員だ」
「そうなんですか?今までクロエちゃんが男の子と二人でダンジョン調査なんてなかったですよ?それにわざわざ二人用のテントを探してるって事は、お兄さんも何かを期待してたんじゃないんですか?」
「何も期待なんてしてないし、そんな気は全くない。ほんとは昨日からダンジョン調査に行ってたんだが、団長が一人用テントを一つしか準備してないわ、一枚しか寝間着を持ってこないわ、一枚しかない寝間着が破れるわで一旦戻って来たんだ。だから、もしもの事を考えての二人用テントだ。狭いテントで団長と寝るなんて御免だからな」
「初日から服を破るなんて、お兄さんも積極的ですね。でもそうですか。じゃあこのテントはやっぱりおススメですよ。単純に小さくて軽くて丈夫なので(念のためなら一人用テントを複数持ってれば良いと思うけど、二人用テントを持たした方が面白そう出し、言わないでおこうかしらね)」
「破れたのは事故だ。それに、あれは団長が悪い。それでそうだな、機能的には問題ないし、そのテントを貰うよ。支払いは…」
そう言うと俺が言う事が分かっていたのか、店主の娘は人差し指で俺の口を押え
「第十魔法師団支払いでしょ。クロエちゃんがよく買いに来るから専用の領収書があるから、すぐに書くからちょっと待っててね」
「ああ、ありがとう。えっと…」
「ん?ああ、私の名前?私はイミル・エルメールよ。お兄さんは?」
「俺はリンネ・アルフィードだ」
「この店は第十宮廷魔法師団御用達なの。まあ、私とクロエちゃんが幼馴染だから、クロエちゃんがよく買いに来てくれるからなんだけどね。でもシルビアン王国でも結構品揃えは良い方だと思うよ。クロエちゃんの魔法具関連も沢山置いてあるからさ」
「え?イミル…さんて団長の幼馴染ってことは年上なのか?」
「イミルでいいよリンネ君。そうだよ。私もクロエちゃんと同い年の29歳だよ。意外だったかな?」
「てっきり同い年ぐらいと思ってたが、ずいぶんと若く見えるんだな」
「ありがとうねリンネ君。若く見えるなんて嬉しいわ。そんな良い子のリンネ君には私からサービスしてあげるね」
そう言うとイミルはカウンターから出てくると俺の前に椅子を置いてその上に上り、急にイミルは俺の後頭部へ手を回したと思ったら、その大きなふくらみに俺の顔を抱き寄せたのだ。
俺は突然の事に理解が出来ずフリーズしていると
「クロエちゃんはあんな感じだから誰かの支えが必要だと思うんだ。リンネ君、私の幼馴染をお願いね」
そう言いながらイミルは左手で俺を抱き寄せまま、右手で俺の頭を撫でてきた。
少し時間が経ち、やっと思考が落ち着いてくると今度は恥ずかしくなってきたのでイミルから離れ
「わかりました。団長の事は俺が支えるんで大丈夫ですよ。だからその、さすがに恥ずかしいって言うか。こういう事は控えてもらいたいと言うか…」
「あら、控えるだけでやめなくていいのね?じゃあこれからも何かあったら私がよしよししてあげるから、たまにはお店に顔を出してね」
イミルはちょっと悪戯っぽく笑い、その顔はなんだかすごく惹かれる顔で、俺はその顔を直視出来ないでいた。
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