ペンギンさんのぬいぐるみ⑩
「ねえ、なんで、まさとくんは、こっそりぬいぐるみを拾おうとしたの?」
わたしは、それがわからなかったから訊いた。
「それは……男がぬいぐるみなんか持ってたら恥ずかしいだろ」
まさとくんは、足でランドセルをつつきながら答えた。
「そうなの……?」
「そうだろ。ましてや、ぬいぐるみの写真撮ってるなんて、もっと恥ずかしいだろ」
そっか。まさとくんは、そういう風に思ってたのか。
「……わたしは、そんなことないと思うよ。私の知ってる人でも、男の子で、ぬいぐるみが好きな人がいるよ」
「ふーん。そうかよ」
まさとくんは、ランドセルを乱雑に拾い上げて背負った。
「……あの池で、ペンギンさんのぬいぐるみの写真とるの、すごくいいね」
「なんでだよ。ペンギンと言えば氷だろ」
「そんなことないよ。ペンギンさんにも、寒くないところに住んでるのもいるし」
「……そうだな。ペンギンに詳しいんだな柴崎は」
まさと君はそう言って、ペンギンさんのぬいぐるみをランドセルにしまって校庭に出た。
わたしは、まさとくんがサッカーに乱入してボールを蹴るのを見てから、家庭科室に向かった。今日は、手芸クラブの日だ。
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