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ペンギンさんのぬいぐるみ⑨

 放課後。わたしは落し物コーナーからペンギンさんのぬいぐるみをとって、校庭でサッカーをしようとしているまさとくんを追いかけた。


 下駄箱で追いついた。


「まさとくん」


「どうした柴崎」


「あの……」


 まさとくん以外の男子はみんな校庭に出た。


 今ならきっと言っても大丈夫。


「これ、まさとくんのだよね?」


 わたしは、ペンギンさんのぬいぐるみを差し出した。


「な、なんだよ。おれそんなぬいぐるみ持ってないんだけどな」


「……まさとくん。でも、たぶん、これはまさとくんが大切にしていたぬいぐるみだよね」


「……なんでそう思うんだよ」


 まさとくんは黒いランドセルを足元に置いた。


 わたしは、自分なりに考えたことを言うことにした。


「まさとくんは、今日の朝、ペンギンさんのぬいぐるみを池に持って行った。そうしたら美山先生に会った。まさとくんは、美山先生に自分がぬいぐるみを持っているのを見られたくないから池から立ち去った。そしてその後、理科室に向かった。その向かうときに、渡り廊下のところで、ペンギンさんのぬいぐるみを落とした」


「……」


「まさとくんは授業が始まる直前にそれに気づいた。おそらく、理科室に来る途中で落としたとわかったまさとくんは、みんなにバレないようにペンギンさんのぬいぐるみを拾おうと思った。だから、みんなと一緒にならないように、けんびきょうに夢中なふりをして、最後まで教室にいた」


「なんでそうなるんだよ。柴崎、教室おれより先に出たよな」


「うん……でも、そうかなって思って。だってあんまり虫すきじゃないんでしょ。ミジンコって虫じゃないけど、節足動物だから近い仲間だし。ゾウリムシはもっと虫じゃないけど、動きはちょろちょろしてるし。なのにけんびきょうに夢中なのおかしいよ」


「なんで虫嫌いって知ってるんだよ」


「かこねちゃんから聞いたよ」


「女子っておしゃべりだなまじで」


 まさとくんは、女子は呆れたもんだぜといった感じでため息をついた。


「……でもきっと拾えなかったんだね。今度は次の三年二組が来たから。二組にだっていっぱい友達がいるでしょ、まさとくん。だからそこでも拾えなかった」


「……ていうかなんでそんなおれがこそこそ拾おうとしてるってことになるんだよ」


「それは、わたしもわかんない。だから教えて。だけど、わたしは、まさとくんがぬいぐるみを好きだって知ってるよ。だって、ぬいぐるみ写真コンテストに、応募しようと思ってるでしょ、まさとくん」

 

 わたしがそう言うとまさとくんはランドセルを足で端に押しやってわたしのほうに一歩近づいた。


「……そうだよ。そのペンギンのぬいぐるみ、おれのだから、返してくれ」


 わたしはまさとくんに、ペンギンさんのぬいぐるみを渡した。まさとくんはそっと受け取った。


 よかった。ペンギンさんのぬいぐるみはちゃんと持ち主の手に戻った。


お読みいただきありがとうございます。


次でペンギンさんのぬいぐるみ最終話です。

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