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ソードサモナー  作者: 猫の手
5/12

クラスマッチ


例の事件、テグが岩の槍で貫かれた直後

ギルドの人や学校の先生が来た


皆が声を掛けてくれる


でも私の中では何処か遠くで響いて聞こえる


目の前が真っ暗になり次第に完全に暗転




(こんなのあんまりだよ…)


『終わったか…』

頭に直接聞こえる声


(ソロモンさん…?)


『そう…我はソロモンだ』

ソロモンはゆっくりそう告げる


(私…なんで無力なんだろ…?)


『無力?何を申すか、お前は力を手に入れた、悪魔と契約する力を…』


(…なんであの時ラウムを呼んだの…?)


『選んだのは我ではない…無意識かも知れないがお前が選んだのだ、お前があの獣と【和解】をしたかったが為にあいつは現れた』


(でも助けれなかった…)


『力をさらに付けるのだ…さすれば己が無力とは思わなくなる…これを受け取れ…』


目の前に光り輝きながらゆっくりと本が現れる


(これは…?)


『グリモワール…それを読み解け…力が欲しいならな』


(一つ…聞きたい事が有るの…)


『なんだ?』


(なんで私に力をくれたの…?これも契り剣の力なの…?)


『契り剣…か…だがお前に力を与える理由はそれだけではない…』


(そうなの…?)


『我と同じ王の器を持つ者だからだ』


その言葉を最後に暗闇に光が刺した





ーーーーーーーーーーーー

《剣術学校 医務室》


「ん…?ここは…?」

気づくと私はベットの上に居た


「あ、気が付いたみたいですね」

白衣を着た女性…おそらく医務の先生がこちらに気づく

「どう?体調悪くない?」

「はい…大丈夫です」

「それは良かった、あなた3日間気を失ってたのよ?」

「3日!?」

どんだけ寝てたんですか私!?

「ずっと気を失ってたからお友達が心配してたわ」

「そうなんですか…」

「そこに御見舞いの品が置いてあるわよ」

先生が指差した先に5つの品が置かれていた

「皆…!」

心配してくれたんだ…!

私はベットから起き上がり御見舞いの品を一つ取って、箱に包まれている紙を丁寧に剥がしその品をとりだす


フラムからの贈り物


『食べかけのリンゴ』


「……?」

一瞬思考停止してしまったのですがこれは新手の嫌がらせと受け取って良いのでしょうか?というか一発目からぶっ飛びすぎでしょうこれ、もしリンゴがそのまま入ってたとしてもおかしいんですけどね、だってそういう果物って大抵籠にいくつか入れて持ってくるものですよね?ここにあるのはただ一つのリンゴ…箱に仕掛けがあるわけでもなくただ一つしかないリンゴ、メロンとかならまだギリギリ納得しますよ高そうですし箱に入ってそうだし…いやもしかしたら凄く高いリンゴなのかも…!


しかし食べかけである

(※中の芯だけが残っている状態)


「これ残飯…」

「あ、手紙入ってるわよ」

いつの間にか落としていた手紙を先生が拾ってくれた

「ありがとうございます」

手紙を受け取り中身を開く



シェルンへ!

『冷蔵庫に余ってたミカン置いとくね!』



「んー?」

おかしいよね?なんか色々とおかしいよね?あれ?もしかして私がおかしくなってるのかも…いやもしかしてフラムの頭がおかしくなったのかもしれない、よくよく考えたらあんな事件が起きた後だし無理もないかな…後で心のケアに向かわないと…


フラムのプレゼントについて考える事を放棄した私は次の御見舞いの品を取り出す


「あ!グラン君のだ!」

フラムの時同様包みを丁寧に取り、中身を確認する



グランからの贈り物


『肩叩き券』


「子供かッ…!?」

柄にもなくツッコんでしまった


「私まだ肩こってないよ…!?」

嬉しいけど贈り物のベクトルがおかしい、いやフラムの『食べかけのリンゴ』よりはマシか…


半分呆れ気味で次の贈り物を取り出す



テイルからの贈り物


『休み分の課題』


追い討ち!追い討ちだよ!なんで御見舞いの品に課題入れちゃったのテイル君!?

いやテイル君らしいけどなんか嫌だ!?


次に手に取るのはラギ君の御見舞いの品


(お願い!せめてマシな物でありますように!)



ラギからの贈り物


『手紙』

手紙…?いや…気持ちが篭っているならこの際なんでも…!


シェルンへ

『生きろ』


一言…!?一言!?いやフラムのわけわからん手紙よりは遥かにマシだけど!なにか…!なにかが違うッ…!?



戦慄しながら最後の品を見る

「え?」

名前タグには【ルイン】と書いてある

5つの中では一番小さな箱だった


「優しいなぁルイン君(白目)」

ここに至るまでに私のHPは限りなく0に近い

色々とゲシュタルト崩壊しそうだ


箱を開けるとそこにあったのは一つの飴玉、折りたたまれた状態で入っていたカードには『お大事に』の一言


「これだ…!これですよ!」

若干涙目になりながら飴玉を取り出す












飴玉にはわさび味辛子エキス配合と書いてある



「……………………………」




「シェ、シェルン!復活おめでとうなのですぞ!」

「どうだお嬢!俺の渾身のプレゼントは!」

「次の授業までに課題忘れるなよ」

「生きてたか…良かった」

「俺のドッキリどうだった?」

フラム、グラン君、テイル君、ラギ君、ルイン君が後ろのカーテンに隠れていたらしくぞろぞろと出てくる


「おいフラム…」※シェルン

「シェ、シェルン!?口調が変わってますぞ!そういうのキャラ崩壊って言って…!」

「なぜ残飯を置いたのです…?」

「え、えっと!ドッキリ!そうドッキリですぞ!」

「なぜそんなに動揺しているのです…?」

「ど、動揺なんかしてないですぞ!!?」


「シェルンに渡す果物全部喰ったって素直に言えよ」

テイルが爆弾投下


「ほーう…?」

「テイルは嘘を吐いてるのですシェルン!」

「謝れば許す」

「ごめんなさいですぅぅぅぅ!!私が食べましたぁぁぁぁぁぁ!!」

「歯を食いしばるのです…」

「シェルンの嘘吐き!?許す気無いでしょ!?」

「冗談です」

「怒ってるよね!?絶対怒ってるよね!?」


「とりあえずこれまでの流れを教えてくれれば許してあげないこともないです」

「喜んで!」

フラムは事の顛末を話し始めた


ーーーーーーーーーーーー

時は遡り…

《シェルンが倒れた直後》


「お嬢!?」

グランがシェルンに駆け寄り

シェルンを受け止める

「おぉー、ナイスキャッチだチャラ男」

隣りに飛んでいたカラスはそう言い残し姿を消す

「テイル!遅れてすいませんですぞ!」

フラムが先生を連れて走ってテイルに伝える

「いや今終わった所だ…」

テイルはそうフラムに言う

「えっ!?これは…何があったんですか!?」

フラムは腹部に岩の槍が突き刺さった巨大な犬に驚く


「シェルンだ」

フラムの疑問に答えたのはテイルの隣りに座っているホーロットだった


「ホ、ホホホ、ホーロットさんッ!?」

ホーロットの言葉に反応しフラムの声が裏返る

「シェルンのあの力…おそらくシクレット系統の剣陣か…」

「シェ、シェルンを知ってるのですか!?」

「知り合いだ、ちょっとだけ剣の使い方を教えた」

「な、なんだってー!?」

フラムがテンプレな反応をしている間にラギも戻って来ていた

「何が有ったんだ…!?」

「僕が説明しよう」

そう言ってテイルは現在その場に居る全員に聞こえるように説明した

先生、一部の生徒、ギルド関係者など様々な人が集っていた。テイルは簡潔かつ分かりやすいように伝えた


突然、巨大な犬が学校を襲った事


それに対し抵抗した事


ホーロットが助太刀に入った事


シェルンが巨大な犬を討伐した事


テイルは自分達が育てていた犬に近いという事は説明しなかった

自分達の立場を考えての選択だった


その後、ギルドによる撤去作業などが進み

今に至る…



ーーーーーーーーーーーー

現在…

《剣術学校》


「なるほど…」

「痛いっ!?痛いですシェルン!?」

私はフラムに関節技を決めつつ話しを続ける

「皆には迷惑かけて申し訳ないです…」

「いや、迷惑なんてかかってねぇよお嬢」

「そうだ、これも生徒会長の務めだからな」

「無論…俺も問題は無い…背負ったりとかは出来ないが…」

「まぁほどほどの迷惑ならかけても良いんじゃね?」

「申し訳ないと思ってるなら離してシェルン!?死ぬ!死んじゃうから!?」

グラン君、テイル君、ラギ君、ルイン君はそう私に言う

「ありがとうございます」

「シェルン聞いてます!?私の体力は限りなくゼロに近づいているのですぞ!?」

「良いんじゃないかな」

「良くないぃぃぃぃ!!?」



ーーーーーーーーーーーー

《ギルド本部 会議室》


「あのフードの男何考えてるのかしらね」

ななゑはそう言うとコップに注いだ水を一気に飲み干す

「目的はアルド・ゲートの指名手配撤廃…そう言ってたよ?」

ルプスがななゑの問いに答えるがななゑは首を横に振る

「違う違う、私が知りたいのはその先よ」

「その先?」

「何でその大罪人を助けるのかってことよ」

「戦友と言ってたし…仲間の為じゃない?」

「大罪人を果たして戦友と呼べるかは謎だけどね?それにアルド・ゲートが起こした罪は深いわ…私は5年前の事は良くわからないけど【女王殺害】は洒落にならないわ」


「そうですな…」

扉を開け会議室に入って来たのはティグスだった

「あ…ごめんねティグス、この話は…」

「構いませんぞ、実際に起きてしまった事実ですからの…」

「そう…」

「なんなら私が事件の催促をしましょうか…?」

「ティグスが構わないなら…」

「では…」


ティグスは5年前の出来事をななゑとルプスに伝え始めた




ーーーーーーーーーーーー

《5年前 王女殺害の日》


ギルド最強の剣士【剣帝ティグス】と軍の最高戦力【聖騎士アスハ】は王の護衛をしていた


その日は王位継承の日だった


王位継承をされるのは王女


王女を護衛していたのは、万を超える敵軍を一人で斬り伏せ、時には町を賊から何度も守り抜いた人々の希望【英雄ホーロット】だった


王女はパレード形式で街を回った後王宮の祭壇で王位継承をされる予定だった


王や王女を守る兵士は合計数千は超え、それに加え三大剣士による護衛


絶対に失敗は無い、そう誰もが信じていた


自惚れている訳ではなかったがティグス本人もそう思っていた



その自信は最悪の形で裏切られる




「で、伝令です!!」

1人の兵士が駆け込んみ王に告げる

「王女殺害を企む輩が…!」


そんな馬鹿な…


私達は一瞬動揺したが直ぐに平静を取り戻す


ホーロットが居る、あいつは私が認めた剣士の一人だ、そんな賊に負けるような奴じゃない



「伝令ですっ!!」

続いて入る兵士は報告を始める


こんなに早く伝令が続いて着いたのだ、ホーロットが賊を倒したのだろう





「ホ、ホーロットさんが…!!」

「ん…?」



「賊に斬られ負傷を…!」


一瞬理解が出来なかった

あいつが負けた…?

「王の護衛を頼む!」

「私も行くティグス!」


剣帝と聖騎士は地を駆ける




王女が居る場所に急ぐ


全力で疾駆


着いた時に目にしたのは賊が王女の胸に剣を突き刺している所だった


周りの兵士は無残に倒れ


道の開けた真ん中の場所に倒れていたのは…


「ホーロットッ!」

アスハはホーロットに近づき介抱する

「貴様っ…!」

私は女王に剣を刺した賊を睨みつける


「ん…?」

賊が気づき後ろを振り向く


「何をしたのか分かってるのか…!?」

「【剣帝ティグス】…それと、【聖騎士アスハ】さんですか?」

「だったらどうした!?」

私は剣の柄に取り付けられた魔障石の力を使い光の剣を賊に向けて飛ばす


ティグスは魔障石を使う光剣の使い手であり初めてのエンチャントウェポンの使い手、剣に光を纏わせたり、光の斬撃を飛ばしたりなど、様々な光の魔法を駆使して戦う


エンチャントウェポンの最大のネックである圧倒的魔力不足はティグスによる体術技量一つでカバーされていた


一瞬の魔法、一瞬の決着による魔力コストの削減


机上の空論を無視する技量


光を操る技術


世界最速の斬撃




それらがティグスがギルド最強の所以だった






「でもその程度だ」

賊は素手でティグスの光の斬撃を掴んで掻き消す

「なに…!?」

「悪いね

ソウルイーター」


賊が持つ剣が淡い青色に輝き、ティグスに振り下ろされる


ティグスはそれを剣で受け止める


最善手と思っていた行動は突如裏目にでる


受け止めた直後意識が途切れそうになり、身に危険を感じたティグスは回避行動に移る


「ぐっ…!」

「流石剣帝と言っておきます」

賊は続け様にティグスに攻撃しようと動く

「させないっ…!」

ティグスと賊の間に割り込むようにアスハが右手に持っている盾でガードしようとする

「よせっ…!?」

ティグスの警告はあまりにも遅すぎた


ガァァァンッ!!


盾と剣がぶつかり合い衝撃音が周りを支配する


「…っ!?」

アスハが蹌踉めく

左手に持っている剣を支えに立つのがやっとの状態だった


「タフだね、でも英雄君の方がもうちょっと頑張ってたよ?」


「貴様…!」

「英雄、剣帝、聖騎士…三大剣士も大したこと無かったな、それじゃあいつかまたどこかで


ソウルインパクト」


剣から放たれた謎の衝撃波に為す術も無く


ティグスとアスハは意識を手放した


その後、賊は女王の屍を持ち去り姿を消した


さらに数日後、女王を殺した犯人はアルド・ゲートということが発覚し指名手配


そして三大剣士の三人は英雄、剣帝、聖騎士のそれぞれの称号を剥奪された



ーーーーーーーーーーーー

《ギルド本部 会議室》


「剣陣…」

ルプスはそう呟く

「そうですな…今思えばあの力はそれで説明できます」

「ティグス」

ななゑがティグスに話しかける

「なんですか?」

「女王を殺した犯人、アルドが憎い?」

「………そうですな…しかしそれ以上に自分の弱さの方が憎かった…」

「あなたが5年前に山に篭ったのはそれが理由?」

「そうです、最初は私だけが行くつもりでしたが妻も一緒に着いてきてくれました」

続けてティグスは言う

「そして、あの子に会ったのはそんな時です」



ーーーーーーーーーーーー

《剣術学校 医務室》


「ヘェックシュッ!」

「大丈夫ですかお嬢?」

くしゃみをした私をグラン君が心配してくれた

「大丈夫、誰かが噂してるだけだよ」


そう会話をしていると唐突に医務室の扉が開く


「おぉ、起きたかシェルン」

入ってきたのはタキリ先生だった

「お久しぶりです先生」

「早速ですまないが、シェルン、テイル、フラム、グラン、ラギはギルド本部に来てくれないか?」

「ギルド本部に…?」

え?何か悪い事したかな私達…

「そんな不安そうな顔すんなよ、今回の事件について少し聞くだけだ、悪いがルインは此処に残ってくれ」

「まぁ、部外者が行ったら迷惑だろうししょうがないな」

「すまんな」

「ちなみに脳筋先生」

「おい表出ろフラム」

「じょ、冗談です…ちなみに先生、話を聞くだけならここでも出来るのでは?」

「大事な秘密が漏れるかもしれないからな、そこら辺は慎重にしている」

私がベットから起き上がったのを確認しタキリ先生はギルドに向けて歩き始める



ーーーーーーーーーーーー

《???》


暗い空間に居るフードの集団は話を始める


「作戦は失敗だ」

フードの男はそう言う

「生徒ガ無駄ニ強カッタナ…」

別の男がそう言う

「あの兎さん強かったー」

少女が言う

「じいさんもかなり強かったぜ…!」

少年が言う


「俺達の目的は一つのみ…忘れるなよ」

「「「当然」」」


待ってろよアルド…




ーーーーーーーーーーーー

《ギルド本部》


「ここだ」

タキリ先生はそう言い部屋の前で止まる

扉の横には会議室の文字


「入るぞ」

タキリ先生は扉を開け中に入り、それに続くように私達も中に入った


そこに居たのはセルフィ校長と和装の女の子、もう一人は…



「おじいちゃんッ!!?」

声が若干裏返り奇声に近い声で私は驚く

「シェルンか、どうだい学校は?楽しいかい?」

「知り合いなのティグス?」

セルフィはティグスに問う

「私の孫みたいなものです」

「えっ!?えっ!!?」

会話についていけてないのは私だけでなく、後ろの四人にも動揺が走っていた

「シェルン!?ティグスの孫って本当ですか!?」

フラムが私に問いかける

「う、うん…でも何でおじいちゃんの事知ってるの…?」

「ティグスは昔、三大剣士として名を馳せた剣士の一人だ…昔は【剣帝】の称号を持っていて、現在は剣陣を持っていないにも関わらずギルドの序列第5位…だが剣陣知られて無かった頃の序列は1位だった…」

テイルは驚きを隠せないままおじいちゃんの説明をする


「う、嘘…本当に!?」

「すまんのシェルン、隠すつもりは無かったんじゃが、言うタイミングが合わなくての…」

ティグスはそうシェルンに伝える

「流石お嬢!ティグスの孫なら納得の強さです!」

「いや…孫じゃないはずだ……」

ラギがそう話を切り出す

「どういうことです?」

フラムが問う


「ティグス老は子を持たなかったはず…孫という血筋はあり得ない…」

「その通りだ、ティグスに孫は居ない」

テイルもラギに続いて話す

「シェルン…お前は一体…」


「話し中悪いが、そこで一旦ストップだ」

タキリ先生が会話を止める

「セルフィ、あいつは?」

「あの子なら別件が有るって言ってどこか行ったわ」

「まぁ、問題無いか…とりあえずこの前の事件についての情報交換だ」

「タキリが司会すると面倒くさそうだから私が司会するね…」

そう言って前に出たのは和装の女の子だった

「私の名前はルー・ルプス、ギルド序列第3位…とりあえずよろしく…」

「ルプス!なんで俺じゃあ駄目なんだよ!?」

「え…?脳筋じゃ無理だよ…?」

「脳筋って言うんじゃねぇ!」

「分かった分かった…それじゃあ話し始めるね……今回の事件、首謀者は【レジスタンス】…所在不明の組織」

「聞いたことの無い名前ですな?」

「ほとんどの情報は不明…ただ目的は、ある人物の指名手配の撤廃並びに無実の確立らしい…」

「ある人物?」

「それはここでは言えない…それだけの重罪人ってのは察して欲しい……私達はそのレジスタンスのグループだと思われるフードを深く被った二人と戦った…学校での事件の時にもそんな人居なかった…?」

「居た…」

反応したのはラギだった

「俺がギルドに応援を頼もうとして走っている時に邪魔しに来た奴がフードを被ってい いて声は若い女の声だった…」

「その子は?」

「戦って倒した、だが戻ってきた時には居なくなっていた…剣陣を折ったからすぐには起きれないだろうしおそらく協力者がいるはずだ…」

「君強いんだね…タキリも見習って欲しい…」

「俺の方が強いから!まだ生徒には遅れ取らねぇよ!?」

「はいはいワロスワロス…他の皆は?」

「知らないです…」

「知りませんな」

「知らないな」

「知らねぇ」

「そっか…じゃあこれで私達の話は終わり…協力ありがとね…次会うのはクラスマッチの時かな…?」

「クラスマッチ…?」

「あぁ、そう言えば今月はやってなかったな」

タキリが怠そうにしながら説明する

「クラスマッチは月に一度行う学校行事だ、各クラスから選抜メンバーを選んでその選抜メンバー同士で戦う、とまぁ大雑把に言えばそんな感じの行事だ」

「その行事に毎回ギルドと軍が視察しに行くの、簡単に言えばスカウトね」

セルフィ校長が補足してくれた


「クラスマッチ…」

なんかワクワクしますね…!

「とりあえず解散だ、また何かあったら呼ぶからなー」

タキリ先生にそう言われ私達は部屋から出た




「で…話しの続きだシェルン」

部屋から出て早々にテイル君が私を呼び止める

「あ、おじいちゃんの件…?」

「そうだ…お前は一体何者だ…?」

ラギ君にそう聞かれ私は普通に答える


「私、おじいちゃんに拾われたんです」

「ん?養子では無いのですか?」

フラムの疑問は最もだった

「私、山に倒れてたみたいで…」

「それなら帰る家があっただろ?」

「いえ、どうしても帰れなかったんです」

「「「「???」」」」

皆の表情からは更に疑問が見て取れる

その疑問を払拭するように私は伝えた

「記憶喪失みたいで、13年間の記憶が無いんです」


「そ、そうだったのか…」

「名前も覚えてなかったのでおじいちゃんがシェルンという名前をくれたんです」

「悪い事を聞いてしまったな…」

「全然大丈夫ですよ!そんなことよりもクラスマッチ頑張りましょう!」

こんな下らない話しで場の空気を悪くしてはいけないと思った私はクラスマッチの話題をし始めた


「クラスマッチつってもクラスは実質2つしか無いぞお嬢?」

「え?そうなんですか?」

「タキリ先生のクラスとトウカ先生のクラスですぞシェルン?」

「トウカ先生???」

「そう言えばあの先生自己紹介してなかったな…いつも剣陣の授業を担当している先生だ…」

あっ、あの先生か

「ということはトウカ先生のクラスにも剣陣召喚士が居るのですか?」

「居るぞ二人な」

「ん?私達のクラスは私含めて剣陣を使えるのは五人…私達のクラスの方が有利なんですね?」

「いや…言い辛いんだがお嬢…」

グランが口籠る



「私達のクラスは毎回惨敗なのですよシェルン」

フラムが言った


「え?」

「お嬢、認めたくねぇが…まともに戦えたのはテイルとラギぐらいだ」

「あれはまともに戦ったとは言えない、連携がそもそも出来て無い時点でな、特に際立つのはあの二人だ…俺の義兄と義姉、カエンとカレンの連携は凄まじい」

「へぇ…テイル君のお兄さんとお姉さん……えぇっ!!?兄弟居たんですか!?」

「俺は養子でな、バーグ家に引き取られた身なんだ」

テイル君のお兄さんとお姉さんめっちゃ怖いイメージが有るのは私だけでしょうか…?


「双子なだけあって連携もバッチリなのですぞ」

「オファーも凄いらしいな、軍とギルドが引っ張りだこって話だぜお嬢?」


「じゃあ勝てるように練習しましょうよ!作戦を立てると尚良いかも…!」

「君は馬鹿か?あの二人の連携は簡単には崩せないぞ?」

「でもテイル君って強いから生徒会長なんですよね?」

「個人戦に強いだけだ、正直団体戦は苦手分野なんでな」


「苦手分野作ってたら強くなれねーぞ」

扉から出てきたのはタキリ先生


「今回はシェルンも居るんだし、ちょっと考えてみたらどうだテイル?」

「しかし…真面目に勝てる見込み無いのですが」

「いいや必ず弱点は有るぜ、それに今回は強力なコーチも呼んでるしな」

「コーチ…?」

「学校に行ったら準備してると思うぜ、今日の授業はもう無いしそのコーチに指導してもらえ、誰なのかは行ってからのお楽しみな」

「あの…タキリ先生」

「どうしたシェルン?」

指導を受ける前に言っておかなければ…


「お腹が空きました…」



ーーーーーーーーーーーー

《街道》


「うーん…どうしようかな…」

タキリ先生になんか食って来いって言われてお金貰ちゃったし…


「何たべよっかな…」


下を向いて歩いていた私は目の前に人が居る事に気づかずにドンっと目の前の人にぶつかってしまった


「ご、ごめんなさい…!」

「あぁ?テメェどこに目ェ付けてんだよ」


不幸な事にメッチャ怖い人に当たってしまった

「わざわざこっちに当たって来るなんてなぁ、俺に喧嘩売ってんだろ?」

「い、いえそんなことは…」

やばい…お腹が空いて力が入らない…

3日も食べてないから当然と言えば当然なんだろうけど…

「その喧嘩高く買ってやんよぉ!」



「はい、ストップ」

私とメッチャ怖い人の間に入るように私より背の低いキャスケット帽の子が割り込む


「なんだテメェ?」

「へぇ?私を知らないんだ?」

キャスケット帽の子は少し帽子を上げて顔を見せる


直後

「ひっ…!?す、すいませんでしたぁぁ!!」


男は一目散に逃げていった

なんで????


「大丈夫?」

「あ、ありがとうございます…!」

よくわからないけど助けてもらったのは事実なので御礼を言う

「いやいや、当然の事をしただけ…ん?」

キャスケット帽の子が何かに気づく


「君が例の…」

「?」

ほとんど小声で聞こえなかった


「ちょっと時間良いかな?これも何かの縁だし何処か食べにいかない?」

「良いんですか?」

「むしろこっちからお願いしたいよ、人と食べるとかあんまりしないしね、私は舞浜ななゑ、よろしくね」

「私はシェルンと言います、よろしくねななゑちゃん」

「ちょっとぉー!私の方が歳上だよ?」

「えっ!?すみません…何歳なんですか?」

「19」

「えぇ!?ってきり16歳ぐらいかと…」

まさか私の一つ上だったなんて…

「失礼だなー!」

「ご、ごめんなさい…!」

「でも良いよ、よく間違えられるし」

ななゑさんはそう言い近くのレストランに入る


ちなみに滅茶苦茶高そうな高級レストラン


「ス、ストップッ!!?」

「え?何?私のモノマネ?」

「違いますよ!?ななゑさん、そこのお店凄く高そうなんですけど…!?」

「高そうじゃなくて実際高級レストランだよ?」

「そんなお金持ってないです!」

「私の奢りだから気にしないで〜」

「ファッ!?」

私の驚きを気に留めないままななゑさんは高級レストランに入る

抵抗は有りつつも遅れないように私も続いて入る


私達は従業員の人に案内され席に座った



席に座るや否や、ななゑさんが話しかけてくる


「シェルンは剣術学校の生徒なの?」

「え?なんで知ってるんですか?」

「ただの勘、それでどうなの?」

「はい、といってもこの間入学したばかりですけどね…」

「ふーん…そういえばそろそろ剣術学校はクラスマッチの時期だよね?シェルンは出るの?」

「まだわからないんですけど、多分出ます」

強い人順で言うなら出れるはず…多分


「そっかー、じゃあシェルンは召喚士?」

「そうですね」


そう話をしていると食事が運ばれてくる



「そうなんだー」

「そういえば、ななゑさんってお金持ちなんですか?」

「うーん、まぁ間違っては無い…かな?」

「じゃあどんな仕事に就いてるんですか?」

「秘密ー」

「えぇっ!?ズルい!?」


「私の事なんてどうでも良いのよー、そんなことよりシェルンの事知りたいなー」

「ななゑさんの事だって知りたいんですけど…」

「シェルンって誰に剣術教えて貰ったの?」

「もー…話をすり替えないでくださいよー…剣術はホーロットって人に教えてもらいました」

ガタッ!

「ッ!!?」


ななゑは驚き急に立ち上がる


「な、ななゑさん…?」


「どおりで…」

「え?」

「ごめん、急用を思い出したから私行くね」


そう言ってななゑは、明らかに有り余る程のお金を机に置き店を立ち去る


「私何か悪い事言っちゃったかな…?」

あの分だとホーロットさんと知り合いだよね…?


私はご飯を食べ終わった後、支払いを済ませ外に出た


とりあえず学校に戻らなきゃ…



ーーーーーーーーーーーー

《剣術学校》


「お待たせしましたー…えぇっ!?」

学校に戻り練習しているであろうグラウンドに行くと、地面に突っ伏している5人が居た


その先に私の剣の師ホーロットさんとタキリ先生、シケットさんが居た


「遅かったなシェルン」

「タキリ先生!?一体何が有ったんですか!?」

「訓練だ」

答えたのはホーロットさんだった

「噂には聞いていたがまさかここまでとはな…」

「言っただろう…噂通りだと」

「あれで加減してるとかありえねぇ…」

「危ない…意識飛びかけ寸前でしたぞ」

「剣陣無しであそこまでやれるのか…」

ラギ君とテイル君、グラン君、フラム、ルイン君がゆっくりと起き上がる

「お、結構タフだな」

「ホーロットは手加減が下手だニャ」

「全力の手加減なんだがな…」

「じゃあそろそろシェルンにルールを説明しよう」

タキリ先生がそう私に言う

「ホーロットに一撃当てれば合格だ」


えー…


「タキリ、今思ったんだがやっぱり難しいんじゃないか?」

ホーロットさんが異議を唱える

「お前に一撃当てれるなら基本どんな敵でも倒せるからな、レベルアップにはもってこいだろ?」

「レベル差がありすぎるだろう」

「じゃあどうすんだよ?」

「私が相手になるニャ」

そう言ってシケットさんが手を挙げる

「ホーロット、お前に会ってから一番気になってたんだけど、この女の子何者?」

「旅仲間だ」

「強いのか?」

「試しますかニャ?」

「それは生徒で試してもらう」


三人の会話はそこで終わり、シケットさんが前に出る


「ブリーフィングを挟ましてもらいます」

テイル君はそう宣言し、皆に円になるように促す


「ホーロットに勝てないのは仕方ないとしてもだ、今回は何処の誰かとしれない相手だ、負けるわけにはいかない」

「で、作戦はどうすんだメガネ?」

「基本はさっきと同じだ、前衛はグランとラギ、中衛から前衛間のサポートはフラム、後衛が俺、ルインとシェルンは遊撃を頼む」

ここで気になるのは

「私が遊撃?」

「あぁ、お前の剣陣の力はイマイチ分からないからな隙があれば狙え、ルインは…」

「分かってるって、いざとなったら盾になってやんよ」

「すまん」

「剣陣を持ってねぇんだ、仕方ねぇよ」

「ところでシェルン、シケットさんはどんな剣陣を使うのですか?」

「え?」

「ホーロットの元で訓練受けてたんだろ…?なら必然的に知ってそうだが…?」

「ご、ごめん分からない」

というか、シケットさんが剣を使ってる所すら見たことが無い…


「ならしょうがない、臨機応変に行くぞ」

分かった!了解など皆が言って賛同を得たテイルはブリーフィングを終える


「大丈夫です」

「じゃあ勝負開始ニャ」

そうシケットが宣言した直後、グランとラギフラムが走り出す

「ワンパターンだニャ」


同時にシケットも動き始める


「悪りぃが勝たせてもらうぜ!」

グランが自身の剣陣である鉄塊を振り下ろす

「ニャ♪」

バァァンッ!!

衝撃音を鳴らしながらシケットは鉄塊を白羽取りの容量で受け止める

「なっ!?」

「あ、折らないように戦わないといけなかったニャ、危ない危ない」

「ちぃっ!!」

グランが一層に力を込める

「ほい」

シケットは手を離し剣をすり抜け、グランの腹に拳を叩き込む

「ガハッ!!?」

「一人目だニャ」

「空きあり!!」

剣陣クロノスの力で早送りになったフラムが背後に回りシケットに斬りかかる

シケットはそれを宙返りで避ける

「良い能力ですニャ」


宙でシケットとフラムの目が合う

「猫技、猫騙し」

パァァァァァンッッ!!


シケットの両手が合わさり強烈な炸裂音が鳴り響く

「わっ!?」

フラムはそのまま仰け反り転んだ

「お前…何者だ…!?」

ラギが蹴りを打ち込む

それに合わせるようにシケットも蹴りを打ち込み、相殺


「その身は脱兎の如く…舞え《兎神》ッ!」

剣陣を召喚し姿を消す勢いで瞬間移動

「ニャ?」

流石のシケットも驚く


「もらったッ…!」

猫技、猫耳探知

「あぁ、後ろですかニャ」

「!!?」


ラギは不自然に後ろを振り返ったシケットと目が合う

「くっ!!?」

ラギは苦し紛れに手刀兎神を振り下ろす

「猫技、肉球構え」

シケットは両手を交差し前に突き出す

振り下ろされた手刀に合わせて両手を振り抜く

「ぐうっ!!?」

ラギは宙を回転しながら飛ぶ

「テイル…!」

「わかっている!炎よ!理に反し炎の渦を巻け!ファイアストーム!!」

テイルの手に握られている剣陣イフリートによってシケットを炎の渦に閉じ込めた

「炎よ!理に反し槍を持って貫け!ファイアスピア!」

その炎の渦を貫くように炎を槍が突き抜ける


ゴォォォォッ!!





「ここまでやれば大丈夫だろ…」

「猫技、猫パンチ」


唐突に目の前に現れたシケットの拳を受け吹き飛ぶ事を余儀無くされたテイルはそのまま後方に


「今のはヤバかったニャ」

私の目の先には軽く服が焦げたシケットさんが居た


「最後はシェルンですニャ」

「シケットさんこんなに強かったんですか…!?」

「当然だニャ、とりあえずこれでチェックメイトだニャ」

猫技、猫パンチ


シケットは正面から突撃


振り抜かれた右腕は正確にシェルンの腹部を捉え…


「潮時だ」

「ニャ!?」

突如、シェルンと入れ替わるように前に出たのはルインだった



ルインは剣を盾にしシケットの拳を受ける

剣は砕けそのままの勢いでシケットの拳はルインに突っ込む


「これが俺の出来る精一杯だッ!」

ルインは拳を受け流し、無防備になった右腕を掴む

「シェルン!」

「はい!」

剣陣…ではなく私はいつも隠し持っている短剣をシケットさんの喉に当たらないギリギリに突き付ける

「お、お見事だニャ…」



ーーーーーーーーーーーー

《街道》


「せっかくだし使ってみようかな」

舞浜ななゑはポケットからフォレストンで入手した術式板を取り出す

説明を受けたように入力し話し相手を呼ぶ

「もしもーし」

『何か用?今忙しいんだけど?』

「忙しいなら出なくても良かったのにー」

『用が有るから呼んだんでしょ?用が無いなら切るけど』

「ホーロット頑張ってるみたいだよ」

ガタァッ!!ガタン!

電話先で物音が鳴る

多分、急に立ち上がった反動で椅子が倒れたのだろう

『ホーロット帰ってたの!?』

「多分居るよ、何処に居るかまではわからないけど」

『良かった…』

「ところでさ次の剣術学校のクラスマッチ来る?」

『その日はちょっと忙しい…』

「私の予想だとホーロット来るよ」

『行くわ』

即答した事に少しドン引きしながらもななゑは会話を続ける

「忙しいじゃ?」

『今キャンセルが入ったわ、というか入れたわ』

「おいぃ…」

『それによく考えたら私の弟も出るらしいし、たまにはこういうのも悪くないと思うわ』

「へぇー、弟居たんだ」

『まぁ、苦戦するのは目に見えてわかるんだけど』

「じゃあ応援してやんなよ、それじゃあまた今度のクラスマッチにね」

『えぇ』

そう言ってななゑは術式板の通話を切る



ーーーーーーーーーーーー

《テレスクレア軍本部》


「ホーロット…」

私は術式板をしまい、倒れた椅子を元に戻す


コンコンッ

部屋のドアからノックの音が聞こえる

「入りなさい」

「失礼します、司令官、今度の会議についてなのですが…」

「別の日に変更して頂戴」

「え!?ですが…」

「命令よ」

「わ、わかりました…ではそのようにします」

そう言い兵士は部屋を出た


「堅苦しい地位に立ってしまったわね…」

叶うなら今すぐにでもホーロットに会いたい


だけど…


「会えたとしてもなんて言えば良いんだろう…?」

あの事件の後、ホーロットはまるで死人の様に無気力な状態が続き、その状態で行方を眩ました…

「あの日以来会ってないわけだし…というか私が最高司令官になってるって事も知らないだろうな…」


私は引き出しにしまっていた一枚の写真を取り出す

そこには、ホーロット、ティグス、タキリ、セルフィそして私が写っている


「もうあの頃には戻れないのかな…」


軍の最高司令官アスハ・チェイスはその写真をしまい仕事に戻った



ーーーーーーーーーーーー

《剣術学校》


「完璧にシケットの油断だな」

「ご、ごめんですニャ…」

「謝る事じゃない、だがこれが実戦だったら大変だからな?」

「ニャー…」

ホーロットがシケットを怒っている姿はまるで親と子のようだった


「いやぁ、咄嗟だったのによく合わせれたなシェルンとルイン」

タキリ先生が関心したように私とルイン君に言う

「相手が油断しているの前提の行動だったのでそんなに凄くないですよ、それ以前にテイル達が上手く注意をそらしてくれたのが大きいです」

「へぇ、お前剣陣を持ってないのに中々強いじゃないか、名前は何て言うんだ?」

ホーロットさんが関心が有るようにルイン君に問う

「俺はルイン…

ルイン・チェイスだ」

「チェイス…?じゃあお前…」

「まぁ、あなたならそんな反応するだろうと思ってましたよ」

「………」

名前を聞いてからホーロットさんの歯切れが悪い

ホーロットさんと知り合いだったのかな…?

でも名前を聞いて気づいた感じだし…


「姉さんが心配してましたよ」

「そうか…悪かったな」

「???」

話しが見えないのですが…?

よくわからない時は本人に聞こう、それが良い

「ホーロットさん、いろいろと聞きたい事が…」

「シェ、シェルン!ちょっと!用事が有るのでこっちに!」

「そうだ、ちょっとこっちに来い」

「え?え!?なんですかいきなり!?」

フラムとテイルに両腕を掴まれ引きずられていく


そのまま私は校庭の裏に連れてこられた

「絶対に本人の前で過去の話題を言うなよ!?わかったな!?」

テイルが焦るように私に伝える

「え?なんでですか?」

「フラム」

「しょうがないですね…私から伝えます


過去に何があったのか」



そこからフラムから聞かされた話を私は聞いた


ホーロットさんが三大剣士の一人として活躍していた事、女王の護衛任務でただ一人の賊に敗れ、女王を殺されてしまった事

その際に称号が剥奪されてしまった事


その後行方を眩ました事



「そんな…」

「わかったか?本人だって思い出したくない記憶のはずだ」

「こんな事件思い出さない方が良いに決まってますぞ」

「じゃあルイン君とはどんな関係だったの?」

「ルインは三大剣士、聖騎士アスハの弟だ」

「えぇっ!?」

通りで歯切れが悪いわけだ……


ん…?

「ちょっと引っかかるのですが…」

「どうしたのですかシェルン?」

「どうしてタキリ先生はホーロットさんを呼んだのでしょうか…?こうなること分かってただろうに…」

「タキリ先生の事だからな…容易に想像出来る」

「そうなのですか?」

「そりぁ、我が校が誇る脳筋ですからな」


ーーーーーーーーーーーー

《剣術学校 グラウンド》


「俺はそろそろ帰る」

「もう帰んのか?」

帰ろうとするホーロットを引き止めるようにタキリが声をかける


「タキリ」

「なんだ?」

「なんで俺を呼んだ?」

「生徒に良い刺激になるだろ?」

「あぁ、お前はそういう奴だったな…」

タキリ自身、俺の過去について気にしてないんだろう…常に前だけしか見ない、あいつの悪い癖だ


だが必ずしも悪い癖というわけでは無いだろう


俺に比べよっぽど良い癖だ


「俺から生徒にアドバイスが有るとすれば一番に言いたいのは連携だな、個々の能力は学生の現時点では合格点だ、後はどう考えて周りと連携を取るか…それだけだ」

そう言って俺はその場を去った


ーーーーーーーーーーーー

《ギルド本部》


「たっだいまー」

扉を勢いよく開けななゑは会議室に入る

「何やってたの…?」

一人書類を片付けていたルプスはななゑに問う


「聞き取り調査」

「そう…ちなみに学生についての聞き取り調査はななゑが居ない時に済ませたから」

「わかったー」

「ななゑ」

「何?」



「何か企んでる…?」

「なんでそう思う?」

「………………」

「………………」


しばらく二人の間に沈黙が流れる



「まぁ、楽しみにしといてよ」


ななゑはそう切り出し空いている席に座る


「楽しみに出来る内容ならね…」


ルプスはそう言い残し会議室を出た



ーーーーーーーーーーーー

《剣術学校 グラウンド》


「あれ?ホーロットさんは?」

「帰った」

私の質問にタキリ先生が即答

「えぇっ!?」

「ホーロットが連携を頑張れってさ、とりあえず特訓は俺が引き継ぐから」

「次は先生が相手なんですか…?」

流石に疲れる、いや精神的に


「安心しろよ、今からやるのは組手じゃねぇから」

「じゃあ何をするというのですかな?」

フラムがタキリ先生にさりげなく聞いた

「さっき言っただろうが、連携だよ連携」






ーーーーーーーーーーーー

《闘技場》

クラスマッチ当日


「うわぁ…人が一杯…」

会場となっている闘技場の観客席には

「月に一度の祭りみたいなもんだからな、そりゃあ盛り上がる」

テイル君が分かりやすく解説をしてくれている

「でもクラスマッチにしては規模がデカ過ぎる気がするのですが…そもそも私達って一戦しかしませんよね?」


「確かにメインはクラスマッチだがそれだけじゃない、観客達はエキジビションマッチの方にも期待があるみたいだ」

「エキジビションマッチ?」

「まぁこれは説明するよりも見た方が速い、そんなことよりもそろそろ始まるぞ」

テイルはそう言って闘技場のメインフロアに進む

それに続くようにグラン君フラム、ラギ君ルイン君が動く


「お嬢!頑張りましょう!」

「今回は勝ちますぞ」

「無論…」

「気張らずに行こうぜシェルン」

それぞれが呼びかけ気合いを入れる


「行こう!みんなで勝つんだ!」




ーーーーーーーーーーーー

《闘技場ギルド特別席》



「お、始まったか」

タキリは戦いの場に現れた自分の生徒を見つけ楽しそうに笑う

「あなた毎回楽しそうよね?」

不意に後ろから話しかけたのはセルフィ

「戦いの場ってのはいつ見ても楽しいもんだぜ?」

「脳筋って言うよりは戦闘狂なのかしら?」

「狂ってはねぇから安心しろ」

「それで今回は勝てるのかしら?」

「大体勝率は30%くらいだな」

「相変わらずの低さね…」

「エリート相手で30%はデカイだろ」

「勝てると断定出来るまで勝率を上げるのが普通でしょうが」



「まぁいくら勝率を上げたとしても結果は誰にもわからんよセルフィさん」

横の通路から現れたのはティグス

「遅かったな」

「間に合って何より、孫娘の試合楽しみに見させてもらいますよ先生」

「ティグスのおっさんに言われるとなんか調子狂うな…」


「タキリが狂ってるのはいつものこと…」

いつの間にか後ろの席に座っていたのはルプスだった

「狂っとらんわ!」

「はいはいそうですね…」

「自分で振っときながら簡単に流すなよ!?」

「ところでななゑは?」

「あ?見てねぇけど…?」

「そう…」

「なんか用でもあったのか?」

「なんでもない…」



ーーーーーーーーーーーー

《闘技場テレスクレア軍特別席》



「はぁ…」

溜息をつかさざるを得ない

「ホーロット来てないじゃない…」

いやもしかしたら顔を隠して一般の席に居るのかも…

まぁ普通に考えたらそうだろうな…


「それにしてもななゑは何やってんのかしら…?」

術式板を使って連絡をしようとするがどういうことか繋がらない

ギルドの特別席の方を見てもななゑの姿は無い

「どういうこと…?」


そうこう考えている内にもう一つのクラスが入場し始める


「そろそろ始まるわね…」




ーーーーーーーーーーーー

《闘技場》


「テー君元気ぃ?」

「ようテイル!死んでるか?」

一人はのほほんとした雰囲気を

もう一人は笑顔でテイル君の死亡確認

「元気だよカレン姉さん、カエン兄さんは耳を噛んで死ぬ事をオススメするよ」


テイル君お兄さんと仲悪いのかな…?

っていうかどうやったら耳を噛めるの!?


「まぁ御託はいいや、またボコボコにしてやんよテイル」

「足元すくわれないようにね?カエン君」

そう二人は言って定位置に着く

他の相手クラスの四人は既に準備が出来ているようだった


「シェルン、最終確認だ」

テイル君はそう私に話しかける


「6対6のチーム戦、相手チームの全滅もしくはチームリーダーを倒したらこっちの勝ち…僕達のリーダーは僕、相手のリーダーはカレン姉さんだ…良いな?」

「はい!大丈夫です!」



そう言った直後戦いのゴングが鳴り響く





「行くぞ前衛ッ!俺に続け!」

相手チームのカエンさんがチームに指揮し、こちらに近づいて来る

カエンさんを含め相手の前衛は3人


相手が動き始めたと同時に私達も動く



「時を共に歩め!剣陣 《クロノス》!」

「鉄の意志よ集え!剣陣 《鉄塊》!!」

「その身は脱兎の如く…舞え《兎神》ッ!」

「全てを灰にしろ!剣陣イフリート


「契りを交わせ!剣陣《契り剣》!」



「おうおう豪華だなぁ!だが一人残らず斬るぜ!


戦の神よ!その力を持ってして打ち砕け!

剣陣 《アレス》!!」

召喚された剣陣をカエンが掴む


剣陣アレス…確かテイル君が説明してくれたその剣陣の効果は…

「危ねぇ!お嬢!」

気がつくとカエンさんは私めがけ走りだしそれに割り込むようにグラン君が私の前に立つ


「相変わらずだなぁグラン!」


それぞれの剣陣、アレスと鉄塊がぶつかり合う

ぶつかり合った衝撃で軽々とグラン君の身体は浮き闘技場の壁まで吹き飛んだ


「ガハッ…!」

「お前じゃあ役不足だぜッ!」



《アレス》その効果は敵対者の腕力を上回る力を得るパワオン系統の剣陣

まさかここまでなんて…!


「グラン君!」

「他人の心配してる場合じゃないぜルーキー!」

カエンさんの攻撃をバックステップで避けつつ距離を取る


正面の力比べじゃあ負ける…だったら!

「テイル君!」

「打ち合わせ通りで行くからな!

炎よ!理に反し立ちはだかる壁となれ!

ファイヤウォール!!」


炎の壁が私とカエンさんを遮るように展開される


「ちっ…!」


「参るッ…!」

ラギ君はそう端的に言い、10mぐらいの高さの炎の壁を飛び越える


《兎神》召喚者の跳躍力等の足の筋力補正が強くかかる剣陣、刀身は無く世界で最も珍しい手刀の剣陣…フェイスとパワオン、ステタスの3つが合わさった稀少の混合種…

フェイスの特徴である憑依の効果で付いた垂れ気味のウサ耳が印象的だった


「一気に決める…!」

ラギは着地し、カレンに急接近

防御に回ったカレンの後衛の生徒二人がそれを阻もうとラギに向かう


「邪魔だッ…!」

パキパキィン!!

手刀の一線で後衛二人の剣を折る


「カレン!」

前線にいるカエンが叫ぶ

「カエン君は心配性ねぇ、でも大丈夫…


守護神よ…全ての悪意を断絶せよ…剣陣 《アテナ》」

一振りの剣陣を召喚し、その刃先をラギに向ける


「障壁よ…理に反し敵対者を拒め

ワンポイントシェルター」


ガァンッ!

ラギの手刀は半透明な壁に阻まれる

「ちっ…!」


《アテナ》 高い硬度を誇る剣陣、生半可な攻撃は全てを防ぐ


「良い連携ねぇ〜、今まではしなかったことの挑戦は良い事だと思うわ〜…でも…」

「それだけじゃあ俺らには勝てねぇぜ?」

ラギは背後からの気配に気づき跳躍


「相変わらず兎だなあいつ」

「ラギ君速〜い」

背後からの奇襲は避けれた…だが落下地点には相手生徒が迎撃の準備を整えている

「くっ…!?」

やられる…!?


「おらっ!よそ見してんじゃねぇ!」

ルインが相手生徒の背中に蹴りを入れる

唐突の参戦に戸惑っているもう一人の生徒の剣を弾きラギの退路を確保

「行け!」

「二人同時は危険だルイン…!」

「良いから!剣陣の無い俺が出来る事なんて時間稼ぎぐらいだ!その仕事を取るんじゃねぇ!だから行け!ここが山場だろうが!」

「っ…!すまんっ…!」


ラギは自分の陣営に戻るのを確認しルインは二人組の生徒と相対する


「悪いな凡人が相手で」

ルインは剣を持ち直し臨戦態勢に入った


ラギが戻ると同時に炎の壁が消失


「炎よ!理に反し槍を持って貫け!ファイアスピア!」

テイルは最大まで溜めた炎の槍をカレンに向けて放つ

「フラム…!」

「任せろなのですぞ!

時よ理に反し加速せよ『Quick【早送り】』!」


《クロノス》時間操作を得意とするエフェクト系統の剣陣、フラム本人曰くまだ完璧には使いこなせていないらしい



フラムの剣陣クロノスの効果でラギに早送りの魔法をかける


ラギは放たれた槍よりも速くカレンの背後に着く


「っ!?障壁よ!双方の悪意を食い止めろ!ツインシールド!」

前方の槍と後方のラギにそれぞれ半透明の壁を展開


ガァァァンッ!

衝撃音が鳴り響くも、カレンは攻撃を防ぐ


「ちょっとヒヤリとしたけど…ここまでねぇ〜」

「「行けぇ!シェルンッ!!!」…!」

ラギとテイルは叫ぶ

カレンは周囲を見渡すがどこにもシェルンの姿は無かった

「上だカレンッ!!」

「えっ!?」

カエンに言われた通り上を見ると例の子が

飛んでいた


「嘘っ…!?」

まさか空を飛べる剣陣…!?

だけどそんな素振りは一度も…

「ん…?」

シェルンの背中に違和感を感じたカレンは、その背中を凝視する

「羽?」





「テメェ!シェルン!俺を空を飛ぶのに使うんじゃねぇよ!」

「ゴメンねラウムさん」

そこに居たのは喋るカラスだった


「!?!???」


わけがわからないの一言に尽きる


だけど…


「来るのが分かっているなら攻撃は防げるわ〜…!」


テイルとラギの攻撃を防ぎつつ先程と同様に半透明の壁を頭上に展開


「それを待ってたんです!」

「え…?へっ!?」


最初の「え?」はシェルンの言葉に対して

次の「へっ!?」は…シェルンよりも上空から落ちてくる物に対してだった


「あれは…!剣陣《鉄塊》!?」

「お嬢!受け取ってください!」

「借りるねグラン君!」

シェルンが落ちるのに合わせてグランが投擲したであろう剣陣《鉄塊》をシェルンは空中でキャッチしそのまま落下


あんな質量が有るものをあの高さから落とされたら…!?

一瞬で壁が壊されてしまう…!

「俺が行く!」

カエンが上空に展開した半透明の壁を足場にしてシェルンを迎撃しようと跳躍


「中々やるじゃねぇかルーキー!だがここまでだ!」









「はい!私の役目はここまでです!」

「は…?」


カエンの攻撃によってシェルンは拍子抜けが過ぎる程にあっさり迎撃された


「どういうことだ…?」

「カレンさんがこれ以上壁を作れないのはテイル君に聞いてますから」

シェルンはそう言いながら落ちていく


「だからって…」

もう攻撃出来る人間なんて…


「カエン君!!」


カエンは即座にカレンを方を見る



カレンに向かって走る2人の剣士



「時間稼ぎって言ったが…まぁ悪いな、あれは嘘だ」

「後私の事も忘れないで欲しいですぞ」


ルインとフラムによる左右からの同時攻撃…!?



「最初からそれが狙いか…!」

「まんまと騙されたわね〜…」







「「まったく…やれば連携出来るじゃねぇか…」じゃない…テイル」」



フラムとルインがカエンの首元ギリギリに剣を突き付けたところで、戦闘終了の合図が流れ会場は歓声に飲まれた




ーーーーーーーーーーーー

《選手待機室》



「お、終わったぁ…」

「やっと勝てましたな…」

「お嬢、そろそろエキジビションマッチが始まるみたいです」

「僕達は先に席に行ってるからな」

「早く来ないと終わるぞ…?」

そう言ってグラン君とテイル君、ラギ君は部屋を出た

「あっ!待ってくださいよ!」

残った私達もテイル君達を追いかけるように付いて行く



「そういえば、エキジビションマッチって…?」

「特別ゲスト同士の模擬戦ですぞ、大抵はギルドの人か軍の人が戦うハイレベル戦闘を見れるのです」

「へぇー…」

フラムが簡易に説明したのを聞きながら

私達は選手専用の指定観客席に座る


座ったと同時にアナウスが流れる

中々にナイスなタイミングですね


『それではこれよりエキジビションマッチを…って!?ちょっ…!?』


「ん??」

アナウスが止まり会場がどよめく


『みんなー!楽しんでるー?』



次にアナウスから聞こえた声は聞き覚えがあった


「ななゑさん…?」


『それじゃあエキジビションマッチを始めるよー!

戦うのは私と…!


スペシャルゲストのホーロットさんでーす!』


「「「えっ!!?」」」





NEXT

#6《遠征》


投稿が遅れて申し訳ありません、中々に内容長くなってしまったもので…(汗

次の投稿も不定期ですがどうぞよろしくお願いします

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