65/69
65話
男は広場を歩いていた。
石畳の上を。
コツ……コツ……
中央の剣から少し離れた場所。
男は立ち止まる。
地面を見ている。
石畳の割れ目。
その中に、草が生えていた。
細い草。
風で揺れている。
男はそれを見ていた。
その時、声がした。
「そこ、気になる?」
男は振り向く。
女が立っていた。
女もしゃがむ。
草を見る。
女
「強いね」
男
「石の中なのに」
女
「抜いてもまた生えそう」
男は少し笑う。
「かもな」
風が吹く。
中央の鎖が揺れる。
カチャ……
女は剣の方を見る。
「遠くからでも見える」
男
「目立つからな」
女
「全部本物かな」
男
「どうだろう」
女は少し考える。
それから一本の草を指で触る。
「こっちは本物」
男は笑う。
「それは確かだ」
少し沈黙。
女が聞く。
「名前は?」
男
「ダイ」
女
「私はナナ」
男は少し頷く。
「よろしく」
ナナ
「ここで?」
ダイ
「ここで」
二人は少し笑う。
風が吹く。
草が揺れる。
鎖が鳴る。
カチャ……
その瞬間。
ナナが消えた。
ダイは草を見る。
少し揺れている。
空を見る。
雲が流れている。
次の瞬間。
男の姿も消えた。
広場には誰もいない。
草だけが揺れていた。




