100話
どの世界にも
似た噂がある。
世界のどこかに
剣の広場がある。
そこには
数えきれない剣が刺さっている。
神に抗った者。
運命に抗った者。
世界を変えようとした者。
その最後に
辿り着く場所だと言われている。
誰も場所を知らない。
誰も戻らない。
ただ
剣だけが増える。
風が吹く。
広場の中央。
何十本もの剣。
鎖でまとめられている。
カチャ……
鎖が鳴る。
石畳の隙間。
草が揺れる。
丸い石がひとつ転がっている。
誰かが置いたのか
最初からあったのか
誰も知らない。
風が吹く。
その時。
少年が現れた。
まだ若い。
剣を腰に差している。
少年は広場を見渡す。
中央の剣を見る。
しばらく黙る。
「……なんだここ」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
少年はゆっくり歩く。
石畳。
コツ……コツ……
丸い石を軽く蹴る。
石が転がる。
カツン。
音が広場に響く。
少年は中央の剣の前に立つ。
何十本もの剣。
全部違う形。
古い剣。
欠けた剣。
見たことのない剣。
少年は空を見る。
雲が流れている。
「静かだな」
風が吹く。
鎖が揺れる。
カチャ……
少年は少し笑う。
そして言う。
「ま、いいか」
その時。
少年の後ろで
風が少し強く吹いた。
鎖が鳴る。
カチャ……
剣の束。
その奥。
一本の剣があった。
風化していない剣。
少し前に刺されたような。
少年はそれを見ていない。
ただ
風が吹く。
草が揺れる。
丸い石が少し転がる。
少年の姿が
消えた。
広場には誰もいない。
風だけが吹いていた。
中央の剣は
また
一本
増えていた。




