1話
夕焼けだった。
石畳の広場に風が吹いている。
広場は広い。
崩れた柱が遠くに立っている。
中央には剣が刺さっていた。
何十本もの剣が地面に突き立ち、
鎖で束ねられている。
カチャ……
鎖が揺れる。
一人の青年が立っていた。
鎧を着ている。
背には剣。
青年は周囲を見回した。
「……ここは」
さっきまで森を歩いていた。
魔王の城へ向かう途中だった。
しかし今は、見知らぬ広場にいる。
青年は中央の剣へ歩く。
「すごい数だ」
柄に触れる。
冷たい。
その時。
声がした。
「抜けないぞ」
振り向く。
黒い鎧の男が立っていた。
マントを羽織っている。
青年はすぐ剣に手をかける。
「……何者だ」
男は肩をすくめる。
「安心しろ」
「ここでは戦う気はない」
青年は睨む。
「魔族か」
男は少し笑った。
「そう見えるか?」
沈黙。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
男が言った。
「俺は魔王だ」
青年は剣を抜く。
「……そうか」
男は動かない。
「だが安心しろ」
「俺の世界の勇者は別にいる」
青年は眉をひそめる。
「勇者?」
男は青年を見る。
「お前も、そうなんだろ」
青年は答えない。
風が吹く。
夕日が沈み始めていた。
男が空を見る。
「綺麗な夕日だな」
青年も空を見る。
「……ああ」
少し沈黙。
男が聞く。
「名前は」
青年は少し考える。
「……」
「まだ名乗るほどじゃない」
男は笑う。
「そうか」
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……
次の瞬間。
黒い鎧の男は消えていた。
青年は中央の剣を見る。
夕日が沈む。
空に星が一つ現れる。
青年は呟いた。
「……必ず倒す」
その瞬間。
青年も消えた。
広場には誰もいない。
風が吹く。
鎖が鳴る。
カチャ……




