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臨界(仮)  作者: vastum
1/7

1話

夕焼けだった。


石畳の広場に風が吹いている。


広場は広い。

崩れた柱が遠くに立っている。


中央には剣が刺さっていた。


何十本もの剣が地面に突き立ち、

鎖で束ねられている。


カチャ……


鎖が揺れる。


一人の青年が立っていた。


鎧を着ている。

背には剣。


青年は周囲を見回した。


「……ここは」


さっきまで森を歩いていた。


魔王の城へ向かう途中だった。


しかし今は、見知らぬ広場にいる。


青年は中央の剣へ歩く。


「すごい数だ」


柄に触れる。


冷たい。


その時。


声がした。


「抜けないぞ」


振り向く。


黒い鎧の男が立っていた。


マントを羽織っている。


青年はすぐ剣に手をかける。


「……何者だ」


男は肩をすくめる。


「安心しろ」


「ここでは戦う気はない」


青年は睨む。


「魔族か」


男は少し笑った。


「そう見えるか?」


沈黙。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男が言った。


「俺は魔王だ」


青年は剣を抜く。


「……そうか」


男は動かない。


「だが安心しろ」


「俺の世界の勇者は別にいる」


青年は眉をひそめる。


「勇者?」


男は青年を見る。


「お前も、そうなんだろ」


青年は答えない。


風が吹く。


夕日が沈み始めていた。


男が空を見る。


「綺麗な夕日だな」


青年も空を見る。


「……ああ」


少し沈黙。


男が聞く。


「名前は」


青年は少し考える。


「……」


「まだ名乗るほどじゃない」


男は笑う。


「そうか」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


次の瞬間。


黒い鎧の男は消えていた。


青年は中央の剣を見る。


夕日が沈む。


空に星が一つ現れる。


青年は呟いた。


「……必ず倒す」


その瞬間。


青年も消えた。


広場には誰もいない。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


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