表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臨界(仮)  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/100

2話

朝だった。


広場には柔らかな光が差している。


夜露が石畳に残っていた。

草の先には小さな水滴が光っている。


中央には剣が刺さっていた。


何十本もの剣。

それらは錆びた鎖で束ねられている。


風が吹く。


カチャ……


鎖が揺れる。


その近くに、一人の男が座っていた。


白衣を着ている。

眼鏡をかけた中年の男だ。


男はノートを広げていた。


何かを書いている。


「……妙だ」


男は剣を見上げた。


「金属の腐食状態と周囲の風化が一致しない」


ペンを走らせる。


「この剣は数百年以上前のものに見えるが……」


石畳を見る。


「広場はそれほど古くない」


男は息を吐いた。


「いや、そもそも——」


その時。


足音がした。


石畳を歩く音。


男が顔を上げる。


ローブを着た少女が立っていた。


杖を持っている。


少女は辺りを見回していた。


「ここ……どこ?」


男は言う。


「それを調べている」


少女は近づいてきた。


中央の剣を見る。


「すごい……」


男は聞く。


「君も気づいたらここに?」


少女は頷く。


「さっきまで森にいたの」


「なるほど」


男はノートに何か書く。


少女は剣の周りを歩く。


鎖を見る。


「戦場?」


「可能性はある」


少女

「でも骨とかないよ」


男は頷く。


「確かに」


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


少女が聞く。


「おじさん、何してるの?」


「観察だ」


男は剣を見ながら言う。


「ここは普通の場所ではない」


少女

「そうなの?」


「まず」


剣を指す。


「これだけの剣がある」


石畳を見る。


「だが戦闘の痕跡がない」


少女

「ほんとだ」


男は続ける。


「さらに」


空を見る。


「太陽の位置がおかしい」


少女も空を見る。


朝の光。


静かな空。


「おかしい?」


「君はどこから来た」


「魔法学院」


男は少し考える。


「私は研究所だ」


少女

「研究所?」


「科学の施設だ」


少女は少し首をかしげる。


「違う世界かもしれないね」


男は言う。


「その可能性もある」


少女は笑う。


「面白いね」


男は小さく笑った。


「そうだな」


風が吹く。


虫の音が聞こえる。


鳥が空を横切った。


少女が空を見上げる。


「気持ちいい朝」


男も空を見る。


「……ああ」


少女

「ここ好きかも」


「私もだ」


少し沈黙。


男が聞く。


「名前は?」


少女

「ミリア」


「私は——」


言いかけた時。


少女が消えていた。


男は周囲を見回す。


「……なるほど」


ノートに書く。


『人は突然消える』


ペンを止める。


男は中央の剣を見る。


風が吹く。


鎖が鳴る。


カチャ……


男は小さく呟いた。


「興味深い」


その瞬間。


男の姿も消えた。


広場には誰もいない。


朝の風だけが吹いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ