第15話 そして俺は途方に暮れる
こうして俺の中のカピバラは、無事エレキネズミに進化した。これでこの島には用はない――いや、もう一つ用事があったな。
パリパリ、ピキッ。
「ギャウ」
アルティメットブレイズドラゴンからドロップした、まだら模様の卵。研究所のインキュベーターで孵化させて、出てきたのはフレイムディーノ。形は一丁前に恐竜っぽいが、可愛くデフォルメされている。嫌われ者のワメーバと違って、なんという優遇っぷり。ブレイズドラゴンが、何作か前の看板モンスターだったからな。
「やっと孵ったわい。さあ、さっさと合体合成じゃ」
「ギャウ?(おまえがママか? ドロドロママ?)」
卵から孵したモンスターは、デフォルトで親愛値が高い。俺は一抹の罪悪感を覚えつつ、合成ポッドに足を踏み入れた。
「さて、この先の予定じゃが」
(さて、この先の予定じゃが)
向かい合うクローンジジイの言葉が聴覚から、内側のオリジナルジジイの思考がダイレクトに脳に届く。なんかちょっと酔ったみたいで気持ち悪い。
「気持ち悪いと言うでないわ!」
(便利じゃろが!)
「コホオオ(便利ではない)」
そう。とりあえずなんとか生き延びたいと思っていた俺と、ワメーバになって綺麗なお姉さんに化けてみたかったジジイとの目的は、概ね達成された。多少思っていたのと違った形だが、まあそれは置いておいて。しかし問題はこの先だ。モコチュウをエレキネズミに進化させ、ついでにフレイムディーノまでゲットしてしまった。俺たちは一体なにを目指せばいいんだろう。
キュブモンといえば、世界各地を武者修行しながらモンスターの育成と絆を育むゲームだ。一応ストーリーはあるが、キュブモンマスターとしての成長を促すスパイスでしかない。プレイヤーの目的は、プレイヤー同士のバトルを楽しむこと。ガチ勢は大会を経て勝利を目指し、エンジョイ勢は流行りのモンスターを自慢する。そしてゲーム会社は、ソフトのみならず大会運営やグッズ販売で収益を得る。このゲームに限っていえば、画面の向こう側の活動がメインなのだ。そこがMMORPGなどの異世界と違うところ。
簡単に言うと、この世界に転生したはいいが、特にやることがない。魔王がいるわけでもなければ、生産職ヒャッハーができるわけでもなく。そもそも散々遊び倒したゲームだ。もちろん画面越しのプレイとリアルとは全然別物だが、キュブモンがいる以外は地球とそう変わらない世界だ。一言で言えば、つまらん。
贅沢なものだな。マスターに放逐された直後は生き延びるのに必死だったのに、いざジジイというカードを手に入れた途端「つまらん」とか考えてしまう。
「まあそう言うでないわ。この世界にもあるのじゃよ、未知の領域が」
「?」
(むほッ、食指が動いたようじゃの。そう来なくてはな!)
「JASINが調べたところ、極東に出現したのが魔の領域じゃ」
研究所の地下深く。ここには大型転送装置があり、末端の支部と本部の研究所とが転送装置で繋がっている。
(船旅要らなかったじゃねェか!)
(そう言うでないわ。ワシもたまにはマスターとして活動すると宣伝になったじゃろが)
俺たちは転送装置でサクッと元の街に戻った。巨大な本部の建物には、まだまだいろんな仕掛けが眠っていそうだ。そのうちの一室、宇宙ステーションの司令室みたいな部屋の大きなモニターに映し出されたのは、この世界のマップ。
驚いたことに、そのマップにはこれまで九世代分のキュブモンの拠点が示されていた。左上から第一世代、第二世代、第三世代。二段目左が第四世代、第五世代、第六世代。そして三段目左から7、8、9と続いて、俺がいるのは第八世代の世界。
ちょっと待て。世代ごとにシステムとか色々違うだろ? 地続きで繋がってていいのかよ?




