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王都奪還

 与えられた兵は1万人、キースロイ王国からの増援が5千人。対して帝国軍は10万人と言われている。


「後は王都で残っている者達をまとめあげよ」と、のたまった国王にバカかお前は、と心の中で悪態をつく。


「ウィル君、心配しないでくれたまえ」


話しかけてくれたのはレント子爵だった。


「近しい者にしか知られてないが、私の家は代々魔道師の家柄でね。私の家にしか伝わらない秘術も有るんだよ」


「本当ですか?凄いですね」


確かに魔力量も多いし補助魔法も充実してる。召喚魔法か、確かに珍しいな。


「私だけでなく公爵も伯爵も人に知られていないスキルがある」


成る程、それが自信の根拠なわけなんだ。それにしても戦力差が有ると思うんだけどな。


心配なのは俺達が着くのが間に合うか、という事だ。王都が陥落してからだと街内戦になり、少し面倒くさい。



俺の仲間が同行することは、サラン伯爵を通してアホ国王に許可をもらった。


「あの2人はウエリントン子爵の御子息達なのかね……?」


「はい」

「さぞ辛い日々であったろうな」


「だと思います。ウエリントン子爵と私の父は親友でしたので手を尽くして捜しました」


「そうか、こたびの戦は是が非でも勝たねばならんな」


「はい、必ず」




王都ビルコンに着くには3週間弱かかる。俺達が出発して1週間後には伝令の従魔も来なくなった。


「嫌な予感しかないな。バルディ将軍、先を急ぎましょう」


「そうですな。よいか、皆!勇敢なる同胞がキースロイの為に戦っているのだ。一刻も早く合流するのだ」


「「おー!」」


アルバウア軍もキースロイ軍も一刻も早く着く為に強行軍を続け、2週間足らずで王都が見下ろせる丘に着いた。


「間に合わなかったか」


防壁の中のあちこちで火の手が上がっているのが見える。


「サラン殿、いかが致しますか?」

「中の状況が知りたい所だが……」


「それでしたら私達にお任せください」

「ウィル君、どうする気だね?」


「タクトのスキルを使います」


「スキルか……解った、任せよう」

「ありがとう御座います」




「タクト、頼むな」

「任せろ」


草むらの中にタクトが入ると、何処からともなく蜂が集まってくる。


巨大な黒竜に見えるほどに、大きくなった黒い塊は王都に向かって行った。


「蜂達から映像が送られて来るには、少し時間がかかるよ」


「そうだね」


空き時間を利用して、出発前に公爵達にと師匠から預かった物を渡しに行くことにした。


「戦ともなれば、お前達だけが目立つわけにも行くまい」と言って、俺が話した公爵達のスキルや特性にあった魔道具を師匠が貸してくれたのだ。


「サラン公爵、出過ぎた真似かもしれませんが、これをお使いください」


「これは?」


「私の師匠が公爵方のスキルに合わせて授けてくれた魔道具です」


「君の師匠?君の師匠がなぜ私達のスキルが判るのだね?」


師匠にも何か考えが有るのだろう。正体を明かしていい事になっている。


「私の師匠はザラストと言います」


「ザラスト?……ザラスト……あの伝説のザラストか、生きているのか?……なんでまた……君がそんな……いや、この非常時だ詮索は後にしよう。使い方を説明して来れたまえ」


「はい」


ーー


「公爵は頭も良いし、懐が深いですね」

「その通りだよ」


「この状況だもの、何が最優先かが解っているのさ」


「あっ、蜂が王都に着いたようだ」

「そうか、どんな感じです?」


「街の人達は、既に避難しているみたいだ。連合軍は城に立て籠もっている。残って居るのは1万人程度かな」


「帝国軍は?」


「城を取り囲んでいるのは3万人位で、壊れた西門の奥に6万人位が陣をとって構えている」


「解った、公爵に報告しに行こう」



「成る程」

「サラン殿」


「うむ、人々が避難しているのなら、ガラザスの国王と民達には申しわけないが、街を破壊してでも一気に方をつける」


「そうですな、後ろに控えている帝国の奴らも、押し込まなければなりませんからな」


「よし、直ちに進軍開始だ」

「はっ!」



「公爵、西側にいる帝国軍は私達に任せてもらえませんか?」


「ふっ、ザラストの弟子の力をみせてもらおうかな。頼む」


「はい、皆んな行くぞ」

「「「「お~!」」」」



ーー


「レント子爵、君の一族は召喚術だったな。何を預かったのだ?」


「この巻物です。やってみます」


レント子爵が魔力を巻物に込めると、炎の柱が兵士達の前に立ち上る。


「えっ?」「お、おお~」


「イ、イフリート……」


「こ、これはまた、……伝説の大精霊を見る事が出来るとは……」


「こ、公爵は?」


「ああ、そうだな」


私の得意は土魔法、錬金術は全て会得している。我が家の秘伝書によりゴーレムを造り出そうと思っていたのだが。


「私も巻物なのだが」


魔力を巻物に流す。途端に大地が揺れだす。地の底から這い出て来たかの様に、巨大な手がそこらじゅうから出てきた。


「何と……私が造ろうとしたものと桁が違う」


這い出てきた手は20ほど有り、見る見る間に20mの巨人ゴーレムになったのだ。


「つ、次は私の番ですな。ここまでの経緯を見るとある程度の想像がつきますが……」


「そ、そうだな、君はアンデット使いだったな」


バナー伯爵は巻物に魔力を流す。


巨大ゴーレムが出てきた穴から、静かにスケルトンソルジャーがスゥ~っと上がってきた。


「ううっ、一体、何体いるのだ?」

「100体はくだらない」



「い、いやぁ、サラン殿も人が悪い。こんな切り札があるのならもっと早く言ってくれれば良いものを、兵士が腰を抜かしてしまったでは有りませんか」


「い、いや。これは或る御方が貸し手くれた物でな、いつもの事ではないのだ。と、とにかく全員、突撃!」


「お、おおー!」





「やはりガラザスなどたいした事がなかったな。腹ごしらえもしたし、師団長の命令を待つだけだ」


「早く終わらせて嫁の所へ帰りたいぜ」

「結婚したばかりだったなお前は」

「ヘヘ」


「ま、待て。なんだこの地響きは?」

「お、おい、あれ……」

「ア、アンデット……」

「違う、上だ」


「イ、イフリート?」

「ち、違う、その後ろ」


「…………し、師団長に報告、がはっ」

「ば、ばかな……」



☆☆



「この辺で良いだろう」

「皆、広域魔法の準備をしてて」

「「「「解った」」」」


俺は魔力を倍加させる魔法陣を帝国軍の上に造って行く。そう、以前にアナサマで帝国軍の要塞を壊滅させた時に使ったやつだ。


4個の魔法陣を5層にした物を形成していく。




「セルト様、上空に魔法陣のような物が」


「なに?……あれは、……何処かで見たような、何処だったか?……思い出した。そうそうアナサマだ。えっ……バ、バカな!不味い、不味い、不味い。全員、待避待避だ。この魔法陣の下から早く出ろ!」




「あれ、皆んな逃げ出して行くよ」


「気がついたか?アナサマでこの魔法陣を見てた奴がいたのかも」


「根性無いわね」

「そう言う問題じゃないと思うけど」


「練に練ったこの魔力をどうしてくれるのよ」

「それは言えますね」

「もったいないです」


「う~ん、じゃあ撃ったら。もう攻めて来ようなんて思わなくなるかもよ」


「よし、やろう」「そうね」

「偶にはこう言うのもいいですね」

「気持が良さそうですものね」



皆が放った、それぞれの広域魔法は5層の魔法陣を通り漆黒の魔法エネルギーになって大地に落ちる。


各魔法陣の下からは逃げた帝国軍だったが、その衝撃波からは逃げる事が出来ずに吹っ飛ばされ塵と消えた。


その後、帝国軍は2度とガラザス王国に侵攻する事はなかった。


いつも読んでくださりありがとう御座います。


面白いと感じられましたら、下段に有ります評価の☆星やブックマークを付けて貰えると嬉しいです。



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