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王宮に料理人として潜りこんだベンジャミンとは、定期的に連絡を取り合っている。
もちろん直接会っているわけではない。俺が創ったフェイクライフなので意識の共有が出来る。
思念で話をしたり見聞きしたりと色々便利だ。
大体は思念で伝わって来るのを頭で感じるだけなのだが、今日はベンジャミンの雰囲気が違うので何か気になる。
思念通話だけでなく実際の音と視覚もつなげて見るか。
ん?女性の色っぽい声が聞こえるような……何をしているのだ、ベンジャミンは?
「おわっ!」
「どうしました、ウィル?」
「びっくりした」
「ウィル様?」
ベンジャミン、お前と言う奴は何て羨ましい。昼間から若いメイドと。
「いえ、何でも無いです」
「そうですか?」
「はい」
『ベンジャミン、ほどほどにしろよ』
『これはウィル様、お恥ずかしい所を』
『何か判った?』
『もちろんで御座います』
ーーーー
「みんな聞いてくれ、バレタ公爵とガレキーニの反対勢力が判った」
「本当ですか?」
「国王の弟のサラン公爵、バナー伯爵、レント子爵の3名だ。貴族院は全員で25名で他は全てガレキーニの派閥と言う事になる」
「うわ、圧倒的に不利」
「ガレキーニの資金源になっている内の1つは商会でバゴラ商会と言うのが王都の経済を牛耳っている」
「何とか資金源を潰したいわね」
「1つずつ潰して行こう」
「バゴラ商会を1度見に行きましょう」
「そうですね」
バゴラ商会は人通りの多い中央広場を見渡すように建っている。
「2階建てなのね」
「どうやって潰すつもりですか?」
「奴らの主力商品を手に入らなくして、俺達が安く売るみたいな所かな」
「そんな事をすれば、妨害が入るのは間違いないでしょうね」
「妨害しに来たら容赦なく叩くさ。捜す手間も省けるし、口を割らせて全て潰していく」
「それも目的の1つのだものね」
「そう言うこと」
俺達は暫くはお客さんの観察をする事にした。
「やっぱり値段の高くても売れる物は香辛料と、この国は海に面してないので海産物ね」
「他にも有りそうだけど、この2つに絞るか」
「賛成」
「すると西のホビットと獣王国、海人の国だな」
「アナマサから行けば、ここからよりは全然良いわね」
「魔法陣を造れば何時でも手に入るし、鮮度も落ちないので有利だ」
「それでどうやって手に入れなくさせるの?」
「奴らの取引先をなくすのさ」
「どうやって?」
「それはお楽しみと言う事で」
「あの偉そうにしている奴がバゴラね」
「後ろで手揉みしている太鼓持ちみたいのと睨みを利かしているのは誰だろう?」
「後で調べてみよう」
「よし、戻ってアナサマに行ってから仕入先を探しにクライン王国とレイオン獣王国、シーミイア王国に行こう」
拠点の屋敷に帰る途中で思いがけない人に会った。リリアさんとパーティーの沈黙の旋風の人達だ。仕事で来ているのだろうか?
相変わらず可愛いな。元気そうで良かった。認識阻害の魔道具もあるし、向こうは俺の事など覚えていないもんな。リリアさんは俺の直ぐ側を仲間とお喋りしながら通り過ぎていく。
「リリア、どうしたの?」
「ううん、何でもない……前に会った事が有るような人が居た気がしただけ」
「王都は人が多いもの、そんな事はよくあるわ」
「そうよね」
ーー
「皆、入ったね?」
「「「「はい」」」」
魔法陣が光りアナマサへと転移する。部屋には誰も居なかったので、長であるテレスさんの建物に向かった。
入口に立っている男の人はダイラさんと言う名だ。もう顔見知りになっているので、俺達を見ると扉を開けてくれた。
「ありがとう」
返事の代わりに、"うんうん"と頷いてくれる。
「ウィルさん、いらっしゃい」
「順調に進んでますか?」
「お陰様で、防御用も攻撃用もだいぶ整いました。ザラスト様のお陰です」
「帝国も諦めれば良いのに」
「そうもいかないのでしょう」
「犠牲者が増えるだけなのにね」
「理屈通りには行かないものです」
「ウィルさん、今回はどのくらいここに?」
「今日は治療に専念して、明日ホビットの国に行きたいと思います」
「ホビットの国ですか」
「はい、香辛料や海産物を買いに」
「商売でもなさるのですか?」
「ええ、そうです」
「でしたらこれを売って頂きたいのです」
テレスさん差し出したのは数十枚の葉っぱだった。
「これはリベレルの葉ではありませんか?」
子供の時に1度だけ見たことが有る。それくらい貴重な物なのだ。この葉が有れば死んだ直後なら生き返るSSSクラスのポーションが作れるし、子供の頃から煎じて飲んだり食事混ぜて食べるだけでも持病は治り身体強化が自然と出来る。
「大金持ちになれますよ。何処で手に入れたのです?」
「骨がらみが治る薬を作ろうと研究していたら、偶然にリベレルの樹が育つ環境が出来たらしく、森が出来たのです」
「リベレルの樹の森……」
開いた口が塞がらないとはこの事だ。
「これを私達が売るのは危険ですし、お金が欲しい訳では有りません。生活に必要な物資が欲しいのです」
「な、なるほど」
確かにエルフの森の限られた所にしか生育しない、リベレルの樹が大量にあるなんて判ったら、恐ろしい事になりそうだ。
「解りました。お金に替える方法を考えますので、ちょっと時間を下さい」
「宜しくお願いします」
「びっくりした」
「ホントですね」
「これ煎じて飲んだらフレアさんの記憶喪失が治らないかな?」
「あり得るな。テレスさんにことわって試してみようか?」
「えっ、もったいないような」
「だって森が有るんですよ、森が」
「確かに」
ーーーー
テレスさんは2つ返事で了承してくれたので、昨日の夜にフレアはリベレルの葉を煎じて飲んだ。
「おはよう、どう?」
「……変わりません」
「残念」
「骨がらみは別として、普通では治せない不治の病気や人を生き返らせる事は出来ても治らない事が有るなど、この世界には解らない事がたくさん有るのですね。不思議です」
テレスさんにお礼を言って、ホビットの国に向けて出発し、1週間で色んな香辛料の産地、クライン王国のバマの街に着いた。
「今日は色んな店に行くのでしょ?そろそろ作戦を教えてよ」
「私も気になります」
「僕もだ」
「分かった、分かった。入って来てくれ」
「失礼します」
「げっ、何でバゴラがここにいるのよ?」
俺のスキルを忘れていませんか?皆さん。
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