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ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~  作者: 都鳥
獣人の国

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24 ランチタイム/ニール

◆登場人物紹介(既出のみ)

・ニール…冒険者見習いとして活動している、貴族の少年

・ミリア…『樫の木亭』の給仕(ウエイトレス)をしている狐獣人の少女

・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。王都を離れ故郷に帰省中。

・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属するAランクの先輩冒険者

 リリアンが旅にでてから二十日が過ぎた。

 一度、国境の町についたと手紙が来たが、それきり何の音沙汰もない。便りがないのは元気な証拠でしょう、とアランは言っていたが、やっぱりちょっと気にはなっていた。


 俺はといえば、ここしばらく先輩方のクエストの手伝いに同行させてもらう事が多く、大分経験値も貯まってきた。

 あと半年ほどすれば俺も15歳になる。そうすりゃ、すぐにリリアンにも追いつくんじゃないか?



 今日は珍しく冒険者ギルドには行かなかった。アランも用事があると言って出掛けてしまったし、そう言えばそろそろ新しい装備を見てみようかと思っていたし。

 北地区の職人街で武器や防具を物色し、ついでにちょっと町をぶらつこうと思った。中央の公園近くに差し掛かった時に、ミリアさんが歩いているのを見かけた。


 どうやらミリアさんも買い物の途中だったらしい。声を掛けたところ、公園脇のカフェで一緒に昼食をとる事になった。

 こんな可愛い女の子と二人でランチとか、余程の獣人嫌いとかでなければ喜ばない男はまず居ないだろう。今日を買い物の日に決めた自分を、全力で褒めてやりたいと思った。


 木漏れ日がかかるカフェのテラス席で、やたらと綺麗に盛り付けてあるお洒落なランチプレートを、がっつかないように気にしてゆっくり食べる。ミリアさんと今日の買い物の事とか、クエストの体験談とか、他愛もない話をして楽しい時間を過ごした。

 たまに通りかかる男どもが羨ましそうに見ていたり、あの娘可愛いなとか言ってたりするもんだから、なんだか気分が良い。


 そういえば、とミリアさんが俺に切り出したのは、食後の氷菓子が届いて、一口目を食べた頃だった。

「デニスさんを見かけませんでしたか?」


 ここ数日『樫の木亭』にも現れていないらしい。そういや俺も、冒険者ギルドでも見かけていない。

「さっきデニスさんの家に行ってみたんだけどね、やっぱり居ないのよ」

 その言葉に、(さじ)を持つ手が一瞬止まった。


「うん? ニールくん、どうしたの?」

 こういう時、ミリアさんは妙に察しが良くなる。下手に誤魔化(ごまか)そうとするとボロが出そうで、すぐに諦めた。


「いや…… デニスさん、彼女居るって言ってたから。 ……ミリアさんが家に行っても大丈夫なのかな、と……」

 言ったらまずい事だったかとも思ったが、ここでミリアさんに嘘を()けるほど俺は器用じゃない。


 気まずくて()らせていた視線をそっと戻すと、ミリアさんはちょっと(あき)れたような顔をしていた。

「ニールくん、その彼女居るって聞いたのって、いつ頃の話?」

「ああ…… 十日くらい前かな?」

「……なるほどね」

 そう言ってミリアさんは深いため息をついた。


「多分、それフラれたわね」

「へ??」

「デニスさんに彼女が出来ても、長続きするわけないもの。もって十日だわ。でもって、フラれると毎回の様に家出するのよ」

 じゃあ、しばらくすれば帰ってくるわね。諦め顔でそう言うミリアさんは、俺と三つしか違わないはずなのに、なんだか大人っぽく見えた。


 って、ミリアさんとデニスさんって、どんな関係なんだろう? 恋人でもなくて、でもただの友達にしては親しいというか。いや、そういうのとも何か違う気がする。


 多分俺はその時、余程阿呆(あほう)な面をしていたんだろう。ミリアさんは俺の顔を見て、ああと気付いたように呟いてから、にっこり笑って言った。

「デニスさんは私のお兄ちゃんなんです」



 『樫の木亭』に通うようになって、店主のトムさんや奥さん、ミリアさんとも大分親しくなった。

 店の料理も勿論(もちろん)美味いけど、あの店に通うのはそれだけが理由じゃない。他の冒険者たちの体験談、魔獣の噂、先輩方の助言や(つて)。あの店に行くことで得られるそんな事が、冒険者にとって大切で有難い事だというのが、今ならわかる。

 そして自惚(うぬぼ)れてもいいのなら、一応は常連と言われるくらいには『樫の木亭』にも皆にも馴染(なじ)んだつもりだ。


 でも今の今まで、ミリアさんがデニスさんを兄と呼んでいる所を見た事もないし、似ていると思った事もない。それ以前に、デニスさんは人間だし、ミリアさんは狐獣人だ。種族が違う。

 ……いや、人間と獣人が両親なら有り得るか?

 そんな考えを見透かすように、ミリアさんが笑った。

「やあね、ニールくん。勿論、血は繋がってはいないのよ」



 二人は同じ孤児院の出身だそうだ。

 孤児にはまれに後見人が付く場合がある。後見人は教会であったり、学者や先生であったり。あとは大きな声では言えないが、大店(おおたな)娼館(しょうかん)であったりする事が多いらしい。

 将来有望と見初められた孤児たちは、後見人の援助で教育などを受け、相応の年齢になると引き取られていく。


 さらに(わず)かな例として、ただ援助をするだけの後見人が付く場合がある。

 その場合にもやはり後見人の援助でしっかりした教育を受けられ、成人後にはちゃんと生活の基盤が作れる資金を持って独り立ちできる。

 そうではない多くの孤児たちは、住み込みの働き先が見つかるならまだ良い方で。少しの持ち金を元に冒険者になって生計を立てるか、女性なら夜の町に身を落とすか……


「私にも娼館からのお誘いはあったのよ。でも後見人付きだから身を売らずに済んだの」

 後見人はその子を育てる為の援助金を孤児院に渡す、もう一人の育ての親のような存在なのだと。



 昔、ミリアさんがまだ幼く、獣人の集落で本当の家族と暮らしていた頃。ちょっとした事故で、ミリアさんは大きな怪我をした。

 それは死に至る怪我ではなかったけど、足を折って速く走る事ができなくなったそうだ。


 狩猟生活を行う種族にとって、全力で駆けられないというのは致命的だ。しかも狐獣人は特にプライドが高い種族らしい。もう狩りができないとなると、そこに生きる場所はない。

 こういう場合は、殺されるか、売られるのが「普通」なんだそうだ。


 ……そんなのが普通って…… なんだよ、それ……


 でもミリアさんの親はそうはせずに、「生きたまま捨てる」という選択をした。

 ミリアさんが言うには、両親は「残酷」なんだって。


 足を折った幼子が、森で一人で生きていられる訳がない。でもミリアさんの親は、ただ森に捨てていった。

「そのままで居たら、私は生きながらにして夜の獣にこの身を食われていたでしょう」

 優しい親はわが子を殺して森に葬る。そうすれば、それ以上苦しむことはない。だから生かしておく親の方が残酷なのだ……


 それを聞いて、静かに息を呑んだ……

 俺にとっては想像もできない事だった。


 森の下草は霧で湿っていて冷たかった。昼でさえ薄暗い森は、時間と共に徐々にその闇を重ねて行く。森を当てもなく彷徨(さまよ)ったが、折れたままの足では長くはもたなかった。


 多分、そこで気を失うかしていたのだろう。人の声に気が付くと、冒険者らしい人たちに囲まれていたそうだ。


 ミリアさんはそうして死にかけてるところを拾われた。

 しかしその人は旅の途中で、ミリアさんを自ら育てる事は出来なかった。なので孤児院に援助金と共に託したそうだ。


 そしてまだ幼いデニスさんと縁があり、孤児院に多額の寄付をしたのも同じ冒険者だった。院長はその寄付からデニスさんの分の援助金を取り分けたのだと。


「私たちがこうして一人でも身をたてられるのは、その人のおかげ。私たちを育ててくれた、親のようなものなの」

 だから、二人は同じ育ての親を持つ兄妹のようなものなのだと。


 後見人が居ることは、本来なら本人にしか伝えられない。でもデニスさんはミリアさんの事を何かで知ったのだろう。

「私の事、まるで本当の妹みたいに可愛がってくれるし、守ってくれるの。と言っても、本当の兄はどんな人だったのか、もう覚えてもいないんだけどね」



 デザートの氷菓子はすっかり溶けて、ただの果汁になっていた。

 それに気付いたミリアさんが、「話し込んじゃってごめんね」と言って、給仕に新しい氷菓子を頼んでくれた。


 俺は…… ミリアさんが自身の生い立ちを語るのを黙って聞いているしかできなかった。あの時、デニスさんが言ってたのはこういう事だったのか、とようやく理解した。


「ごめん…… ミリアさん…… 嫌な事を話させて……」

 (うつむ)いたままで謝る。

「やっぱり。デニスさんになんか言われてた?」

「うん…… 昔の事は訊くなって……」

 ミリアさんはそこまでわかってたようだ。


「大丈夫よ。今、私はとても幸せだもの。確かに過去の事は良い事ではなかったけど、その過去があったから、今の私がいるんだもの」

 顔を上げると、ミリアさんは本当にニコニコと笑っていた。その笑顔が、ミリアさんの言葉が本心だと訴えていて、ほっとした。

 でも、

「全く、デニスさんは過保護よね。今でもまだ、私のお兄ちゃんをしてるんだから」

 そう言った時には、ちょっとだけ寂しそうな顔が見えた。


 もしかしたら…… ミリアさんはデニスさんの事が好きなんじゃないだろうか。


 聞かない方が良いかもしれないと、一瞬は思った。でも、なんだか自分を止められなかった。


「馬鹿ね。いいのよ、私は。かっこいい王子様にきゃーきゃー言ってる妹で居られれば、デニスさんを困らせずに済むんだから」

 ミリアさんはちょっと困ったような顔で、でも俺に笑顔を作って見せた。


 給仕が新しい氷菓子を持ってきた。

「さ、今度は溶けないうちに食べちゃおう」

 ミリアさんが自分の氷菓子に先に匙を入れるのを見て、俺は「うん」とだけしか言えずに同じように匙を持った。


 口に入れた冷たい氷菓子は、喉を落ちると詰まった胸にじんわりと染みて広がっていった。

 お読みいただきありがとうございます。


 ミリアは、自分の気持ちが叶わない事を知ってます。

 知っていて、だからこのままでいいと思って、その想いをただ胸に収めているのです。



(メモ)

 デニスの彼女、あの時(#16)

 (#16には色々なものが練り込んであります)

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一部の話を『『ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい』おまけ閑話集』への別掲載の形に変更いたしました。
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