タールの戦い6
比較的開けている。だが足場が良いと言うわけではない。舗装された道や押し固められた土などと違い辺りには雑草が蔓延っている。もちろん血飛沫などが飛べば直接、土が吸ってくれるわけではなく滑りやすくなることは考えられる。足を取られれば敵に…。そのようなことはお互い分かりきっているがあまり気にしてはいられない。なぜなら既に乱戦状態であるからだ。しかしそのような条件下の中でも駆けていく集団がいる。レオン率いる王国騎士団である。騎士団が乗りこなしている馬達は軽やかに進む。この馬達は実は魔物である。魔物は飼いならすことは容易ではないが可能ではある。しかしこれはそういった系統の魔物を何世代も交配させ出来上がったモノであり生まれつき純粋な王国産である。このようなことは各国行っているが詳しいことは秘匿されている。国以外も独自に開発していたり所有していることもある。
「まず少し数を減らそう」
そうレオンは指示を出し剣を抜き、剣先を右方へと向け、レオンを先頭に帝国軍の右側へとすれ違う様に駆ける。それに沿うように帝国軍も身構える。
「騎馬が接近!」
「馬上からくるぞ!気をつ…」
そして王国騎士団が馬上から一斉に帝国軍へと攻撃する。
ドスドスッと帝国軍へと槍先が突き刺さる。刺さった体の先からまるで水分が抜けていくように傷を受けた帝国軍が干乾びて絶命していく。騎士団の持つ武器も魔道具であり、これは魔力を込めると水分を吸収する槍である。
その場の帝国軍の一人が声を上げる。
「渇き…【高燥】のレオンだ!レオンが出たぞ!」
そのまま後方へと騎士団は回り込む。
レオンは声が上がった方へと馬上から魔法を唱える。
〘ヒーステン/灼熱の泥沼〙
帝国軍の足元の野草が段々と枯れ始める。その周辺からグツグツと音が聞こえる。するとドロっと辺り周辺が所々足場の悪い泥沼と化した。気づかずに帝国軍の一人が泥に足を踏み――
「なんだこの臭いわ‥熱っ!?うわっ!」
泥を踏んだ帝国軍から火が上がる。そして一瞬にして泥を踏んだ足…その者の体ごと火柱となり黒く炭となった。そうこれは非常に温度の高い作られた泥である。衝撃が加わると引火するレオンの魔法だ。
「泥を踏むな!避けて戦え!」
すぐ様、帝国軍の隊長が声を掛ける。流石の帝国軍であり対応も早い。それを見越してレオンも騎士団に指示を出す。
「一旦引け!陣を取り直す」
その場にいた騎士団は槍で牽制しながら続々と脱出していく。最後にレオンも撤退し―――レオンはここに【魔導殺し】がいないことを先程の魔法で確認したのだ。そして更に追い打ちをかける。レオンは魔法を唱え剣が光り始める。
〘ウォータースラッシュ/水の斬撃〙
そして剣を手首をひねる様に軽く振り抜き剣先から斬撃が飛ぶ。それを連続で斬り放つ。しかし放った斬撃の行き先は帝国兵へではない。自身が作り上げた泥だ。周囲の泥へとザシュ、ザシュッと斬撃が当たる。すると一瞬で燃え上がりそして斬撃の水分が一気に蒸発する。ドォォォオーンと音を立て爆発が起き泥の周囲にいた多くの帝国兵が吹き飛ぶ。魔法の組み合わせにより水蒸気爆発を起こしたのだ。
「さすがに派手にやりすぎたか」
レオンは手綱を引き騎士団へと合流―――
騎士団の一人がレオンに報告する。
「レオン様、こちらに向かってくる集団が見えます」
「数を減らしましたからね」
「向かってくる集団の先頭に大剣が‥見えます」
「来ましたか(魔導殺し…)丁度良い。そのまま私達は大森林へと行きましょうか」
レオン、王国騎士団はそのままジュラール大森林へと誘い込むように動き出した。
―――ドォォォオーンと帝国軍より音がなる。
「報告します!帝国左翼、被害多数です。敵将レオン・エヴァレットが見えます」
「【高燥】ですか。思ったより激しいことをしてきますね」
杖を人差し指の指先でトントンと軽くタップする。
シュメールは考え―――
【高燥】が早くも1手打ってきましたか。しかも貴方の初手を見えている前提で、あえて魔法を使ってきましたか。随分と誘ってますねー。さてどうしますかね。
杖からビリっと音が聞こえ、シュメール自身へと雷魔法を使う。目を閉じスゥッと息を吸い、今一度考える。フゥーと息を吐き考え終わると同時に目を開け、更に魔法を使う。【ラシャブの転遷】により雷魔法を思考の活性化、そしてこれから行う、情報の伝達へと変換したのだ。
「ギヴン様――」
「―――ああ。分かった」
「―――では私も動きますので」
シュメールは杖をコンコンと2回叩き、自軍の兵と更に指示を伝える。そして【ラシャブの箱舟】に乗る。
「さて、私も久方ぶりに参りますか」
シュメールも兵を引き連れ、ようやく動き出した。
シュメールの雷魔法の優位性は戦闘面だけではない。【ラシャブの転遷】のおかけでもあるがやはり訓練すればするほど使い方一つ世界が広がっていく。
何をするにも相性というモノは存在する。それが本人にとって、どんな時にどの場面でやってくるのか。良いのか悪いのかはその時にならないとわからない。また相手と対峙すれば相性が悪く引くことも大事である。一旦引いて生きてさえいれば誰でもまた駒として次の盤面で舞えるのだから。そういった意味では逃げ生き長えるということも一つの才能であるのかもしれない。




