十三話、察しの良い男
今回から分かりにくかった強化外骨格と重強化外骨格にそれぞれルビを振って分かりやすくする試みを実施、暇を見て過去の分にも添付していく予定です。
都市に取り残されて数日後、Rはようやくであった少年ゴミ漁りたちの頭目であるというアスマに出会った。
人間の生存を許さぬ夕刻が迫る中、アスマの率いる小部隊によって人の形を捨てた肉塊となった屍者の集団から救い出され、今ようやくまともな人間達の集団の中へと入りこむ事に成功したのだ。
そんな中でRは今何をしているかといえば―――。
「酷いなこれ、整備しようにも一度分解したらもう戻らないんじゃないのか…?」
ヘスコ防壁と車両自体を壁にして即席で作られた全周防壁に守られたベースキャンプの中、昨日自分を救ってくれた壊れかけの重強化外骨格 、そしてその起動の為に必要な強化外骨格本体の修理に悪戦苦闘していた。
アスマとその仲間達に多少知識があるという事を告げ、修理を請け負ったのだ。
いや、告げたというよりはそういう風に流れを仕組まれたという方が正しいだろうか。
アスマという男は口が巧みで耳聡く、マトリョーシカという機体の俗称を知っていたという所から見当をつけ、出会って早々に短い会話の中でを自分がそれらに対する最低限の知識があるという事実を引き出してみせたのだ。
知識があるならば、取りあえず見るだけ見てみてくれと押し付けられて今に至る。
何もしないというのも相手の心証が悪くなるのでこうしてアリバイ作りの様に壊れかけの二種類の強化外骨格 の前でマニュアル通りの対応を繰り返している。
ともかく、まずは検査と確認作業だと調べてみれば、問題点しか出てこない。
重強化外骨格 に関しては、胴体フレームが長年の酷使からか歪みが出ており、脱落していない装甲版にも亀裂が入り、内部の破断も酷い。
歩く度に金属がこすれる様な不協和音を立てていた間接パーツは潤滑油の量からして不十分であり、その質も悪い様で既に交換が推奨される摩耗具合であった。
内部の電装系ケーブルは所々で被膜が破けて漏電の危険があり、各種センサーは既に外装だけで中身はごっそりと抜け落ちており、ガンポッドなどを運用する為の火器管制システムも完全に御臨終であろうという様子だ。
整備コンソールも既に残っていないのでその辺の確認すら不可能である。
強化外骨格に関してはまずARK5では当たり前の気密処理がされていない、着用者は汚染された外気にさらされ放題だ。
戦前では汚染の心配がない後方地域防衛用に生命維持装置の省かれた軽装型や民生用の外骨格が運用されていたという話があるのでそちらがベースなのかもしれない。
こちらの破損も激しく、どちらの型であるか判別は困難だ。
装甲は殆ど残っておらず、外骨格のフレームと破断しかけの炭素繊維の人工筋肉が露出するに任せている。
機体に接続するだけならばこれでも問題ないが、装甲で守られていないという事は被弾時に剥離したパーツや歪んだ機体の圧力から身を守れないという事を意味している。
通常ならば看過出来る状態ではない。
頭部を守ると同時に戦闘や機体管理を一任するサポートシステムが内蔵されている強化外骨格の装甲ヘルメットも無い事から、半ば勘で両ユニットを動かしているのが察せられる。
これの様な状態ではこれらの機械は最早兵器とは言えない。
Rの様な正規品を運用する兵士から見れば、これは自走するだけで精一杯の錆びた一人用棺桶だ。
どこから整備すべきか、そもそも修理などできるのかとRは途方に暮れる。
基本的に戦闘が主任務であるRは修理は専門のエンジニアチームに任せてきたから尚更である。
しかし、それはRの怠慢ではない。
ARK5の戦前から続く重強化外骨格 の運用システムとマニュアルに原因がある。
兵士の負担を減らす為に、修理・整備には関与させない事で戦闘に専念させて無駄な疲弊を避ける。
その為に、破損した場合は機体の損傷部位をブロック単位で交換して修繕を済ませ、破損品は後方の整備拠点で再生するという完全な分業制を行ってきたのだ。
前線で乗機の右足関節がイカれたならば、右脚を丸ごと交換して即座に戦列に復帰させる。
そういったパッケージ交換による省力化と負担軽減を実現し、小型であっても整備性の悪い人型兵器を運用してきたのだ。
これは危険な前線に整備部隊を分散配置する事のリスクがあまりにも大きすぎたという事も要因の一つとなっている。
これによって機動歩兵部隊の将兵は戦闘を除いて乗機に関与するのは戦場での最低限の応急処置と操縦の為の微調整だけで、他は何もしなくても良くなっている。
後方の兵站部門と整備部隊が優秀であったが故に、Rは今応急処置ではどうにもならないレベルの案件に頭を悩ませていた。
「すまねぇな、デカブツの整備を手伝って貰って」
がっしりした太い腕を組んだ髭面の男が搭乗員が存在しない事で胴体中央部にぽっかりと穴の開いた重強化外骨格 の下で作業をするRに感謝の言葉を述べる。
油がのっているというには既に乗り過ぎていると言える、少し腹が出ているのが目立つ4,50代前後に見える東洋系の風貌のその男こそが先日、自分を助けてくれたアスマだ。
英語が通じる貴重な人材でもある。
話を聞くに、どうもこの周辺地域は混血が進んで既に曖昧ではあるが、かつてのアジア系人種が多いらしい。
『トウカイ』という集団が地域を支配する有力勢力として台頭しているという事だ。
ARK5は北米にあったというのに、ホームからほんの千キロにも満たない地域でこれほどまでに英語圏とかけ離れた人種が大勢いるという事から考えると、空間崩壊で大陸が混ざり合ってしまったのかもしれない。
やはり、あの戦いで失ったのは人命と文明だけでは済まされなかった様だ。
いずれにしろ、本来ならば地上人である彼らには自分の素性は極力隠すべきだろう。
こういった先進兵器に関わり合いがあるというだけで自分がどの様な勢力に所属していたか言外に告白しているようなものだからだ。
しかし、それは既に手遅れという物だろう。
彼らからしたら奇異としか見られない本名は既に明かしてしまっているし、彼らの技術力ではもう作れないらしいアサルトライフルも盛大に使用してしまっている。
こうなれば素性を隠すという行為自体がが彼らに疑念を抱かせ、信頼関係を壊しかねず、危険だ。
ならば守秘義務に当たる機密以外は包み隠さず聞かれれば答える程度で行くべきだろう。
最も、この様な状況ではホームの正確な位置はもう自分にも分からない、末端構成員の自分は大した情報など持っていない。
消耗前提の兵卒故に機密保持に努める必要性は薄く、その辺は気楽な所だ。
「いや、こんなのは修理にもならないよ。せいぜいが検査と応急整備程度だ」
アスマの感謝の言葉を流しつつ、作業を継続する。
とはいえ、やっている事は応急処置マニュアルに則った点検と専門工具を必要としない取り外し可能なパーツの洗浄程度だ。
正直、この程度で感謝されると逆に罪悪感が湧いてくる。
「これはもう本格的にオーバーホールしないといずれ動かなくなりそうだね。予備部品は?」
「からっけつさ、壊れたら基本そのままだ。こいつは俺の爺さんの代から酷使してきた死に掛けさ」
「しかし、修理設備ぐらいはどこかしらにある筈だ。多少費用が掛かっても間接パーツの交換ぐらいは最低限やらないとその内自走する事も出来なくなる」
「ねぇよ、そんなもん」
「なんだって?」
「こいつを修理出来る施設なんてもうどこにもねぇよ。基本共食い整備で、もう共食い出来る機材も残ってない」
Rは唖然とした。
仮に地上にまともな文明と呼べるものを維持している人類が生存していた場合、ある程度の衰退は想定していたが、これ程までとは予想外であったからだ。
彼らは修理も満足に出来ない過去の遺産を使い潰して生きているのだ。
運用している以上は機体の生産は無理でも維持程度は出来る筈だというRの予想は大きく覆される事となった。
これはゆゆしき事態である。
彼らの技術水準について知る必要が有った。
「Mr.アスマ」
「ミスターなんてつけないでくれ、アスマで良い」
「では、アスマ。単刀直入言うとこいつは稼働してるのが奇跡と言って良い様な状況だ。僕の技術じゃどうにもならんレベルで全体がボロボロだ」
「だろうな。素人の俺が見ても、もう駄目そうって分かるぐれぇだ」
「真剣な話をしている。これじゃあ緊急脱出用の射出座席も使えない」
「何?こいつにはそんなもん有ったのか?初耳だな、勉強になった」
どこかひょうひょうとしているアスマにRの語気が若干強まる。
機体でこれならば動力であるエーテル反応炉もほぼノータッチではないのか。
残党、かつての来訪者が展開する魔導防壁を解析して応用したエーテル制御力場を用いた安全性の高い常温核融合炉ではあるが、これほどまでに長期間の間整備されていないとなると暴走の危険がある。
リミッターを超えて全力稼働させれば暴走して爆発するのはプラズマピストルの弾倉も反応炉も大して変わりはしない。
今のこの機体は反応炉の出力調整どころか、今の反応炉の状態の確認すら出来ない。
救って貰った相手に文句は言いたくないが、せっかくここまで来てうっかりで蒸発するという結末に至るのは勘弁したいところだ。
「そう怖い顔をしないでくれよ。俺だってどうにかしたい、だがどうにもならねぇんだよこれが。こいつを生産だの整備出来る連中なんてもうこの世には残ってないし、部品もとうの昔に枯渇しちまってるんだからよ。」
そう言うとアスマはやれやれといった具合に肩をすくめて降参だとばかりに手を大袈裟にヒラヒラと揺らして溜息をついた。
これは反応炉も一応見といた方が良いなとRがアスマに背を向けて点検項目を追加しようとした時だった。
「それとも、お前はこれを修理できる宛てでもあるのか?」
冷たく鋭い声音で放たれた問いがRの背中を貫いた。
向き直り正対したアスマはそれまで同様に腕を組んで曖昧な笑みを浮かべている。
だが、目だけは鋭くRを見定めていた。
「お前さん、もしかするとエルクの民じゃないか?」
「エルク?なんだいそれは?」
「遥か東にまだ人類の黄金時代の技術を維持してる集団がいると噂で聞いた事が有るのさ。そいつらは変な名前の連中で、強力な兵器で武装してるってな」
エルク…ARKという名が語り継がれる内に訛ってその名になったのだろうか。
「もしそうだったら、どうする気かな?」
「興味があるんだ、この世界の連中の中にはそこに理想郷が有るんだとかありもしない幻想に憑りつかれて東に集団旅行に洒落込む奴らもいてな。実在するのか以前から気になってたのさ」
時折ARK5の勢力圏までたどり着く難民の正体が見えた気がした。
彼らはさしずめ伝説の聖地への巡礼者といった所だろう。
逃げた筈の楽園で彼らは肉体労働者や使い捨ての駒にされるのだから現実は非情だ。
「違う、と言っても信じてくれないだろうね」
「ほう、それはなんでだ?」
「君の目だ、もう自分の中では答えが出ていて答え合わせを待ってる様に僕からは見える」
この男は既に確信を持っている。
確定ではないが積み上げた状況証拠から自分をARKの人間であると判断し、信じ切っている。
その上で問いをしてきているのだ。
二人は目を見合わせ、しばし沈黙の中で睨み合う。
アスマの意図は何か、何が目的か、次は何をする気なのか、Rは頭の中で考えを巡らせる。
現状、状況は不利だ。
武器も背負っているアサルトライフル一丁だけでは戦いになれば何人か道連れにするだけで限界だろう。
戦いは避けたい、しかし捕まるつもりもない。
しかし、Rがそんな考えや覚悟を巡らせている等とは露とも知らぬ様にアスマは笑って答えた。
「ははは!意地悪して悪かったな!実はもう存在についてはほぼ確定ってなってるんだ。あんたら大人気だぜ、武器に関してはな」
悪意や害意の感じらぬ、快活な言葉と共に彼は手の内を明かしていく。
「これを見てくれ、エルクの民ならば見覚えがある筈だ」
アスマが懐から取り出したのはごくありふれた7.62mm小銃弾だった。
それをRに近づくと自ら手渡す。
「ケツの方を見るんだ」
「これは…確かにARK5の弾薬だ…。これをどこで?」
アスマに言われるがまま銃弾の尻、雷管の方に目をやるとRは見覚えのある刻印を目にした。
『A5C2』、雷管にはその四文字が刻印されている。
ARK5第二地上都市『アーモリー』製の純正弾薬だ。
7.62mm弾であるから、これは市民兵向けのコンバットライフル用の弾薬だろう。
なぜこんな物がここにあるのか、戦闘中に捕獲した物でなければ答えは一つしかない。
「ああ、エルクじゃなくてアークなのか、悪いな。こいつは高品質な武器とセットで流れてくるからどこでも大人気さ」
「横流しされてるっていうのか?」
「その通り、正解だ」
これを知ったら議会や軍のお偉方が大騒ぎするであろう一大不祥事との遭遇にRは乾いた笑いを浮かべる。
こちらは彼らの様な文明が残っているなど、まるで知らなかったというのに向こうは既にこちらの存在を察知していた上にその資産をかすめ取っていたのだ。
ある意味で、奪われても問題の無い装備で彼らの武装を固めるという対策は、それを行っている当人たちも知らない所で着実に成果を上げていたのだ。
「はは…知らぬは我々だけって訳か…」
「あんたら、結構排他的みてぇだからな。その癖、難民だって言えばホイホイ受け入れるからよ、辿り着けさえすれば入るだけならば楽だって言われてるぜ」
『まあ、辿り着くのが一番大変だけどな』、とアスマは最後に付け加えた。
地上での活動に限界のこちらと、技術力は低くとも地上を自由に動ける向こうではやはり情報の収集能力で一枚上手を行かれているらしい。
市民兵という名目で地上人を徴用しているのだから、これは仕方のない事なのかもしれない。
「まあ、痛くもない腹の探り合いはやめようじゃねぇか。どうせ今日一日ここにいる事にしたんだ。日陰でゆっくり茶でも飲みながら話そうぜ。お互い知りたい事は山ほどあるだろう?」
「修理はどうするのかな?」
「いいさ、どうせ直らねぇんだろ?」
アスマはそう言うとRを仮設テントの一つに誘う。
茶に期待は出来ないが、情報収集には丁度良いだろう。
自分には知らねばならない事が山ほどある。
当分の間とはいえこの地上で活動する以上は情報収集は最重要課題だ。
Rは直る見込みの無い重強化外骨格 を見捨てるとアスマの提案に従ったのだった。
―――
「じゃあ、弾薬が通貨代わりという話は本当なのかな?」
「拳銃弾1発で安い宿屋に一日泊まれる。拳銃弾10発で小銃弾1発分の価値だ、分かりやすいだろ?」
「なるほど、文字通り『実弾』ってわけか」
「ああそうさ、いざとなれば戦闘にも使える便利な通貨って扱いさ。まあ、使うのは精々人間相手までだがな」
これはニシにボラれたな、Rは話の中で先日ニシに何発も渡した5.56mm弾が急に惜しくなってきた。
予想通り、茶と言えるかも怪しい大きい緑色の葉っぱが一枚直接ぶちこまれた緑色のぬるい液体をちびちびと舐める様に飲みながらRはアスマと会話を続けていた。
ちなみに茶の味は青臭くて渋くて苦い、はっきり言って不味い。
「取引には銃器も人気だが、銃弾は特に人気で下手な流通貨幣なんかよりもよほど信頼されてる。トウカイじゃ紙幣の担保が岩塩だし、ターミナルの貨幣は石炭本位制だから信頼性や重量がな…」
「トウカイは先程聞いたが、ターミナルとはなんだい?」
「トウカイと似たようなもんだ、有名どころの勢力でここらへんで文明に云々を言うならばあそこが一番だな」
「なるほど」
アスマからの話で改めてニシの話がホラでない事をRは確認した。
貨幣経済が崩壊して以降、人々の経済は物々交換が主体であり、それで足りない分は塩、石炭、弾薬などで補っているという事だ。
前者二種は生活に必須であるが故に、後者は精巧な道具であるが故に複製しにくいという理由らしい。
何と言っても最高品質の物がARK5から横流しされてくるのだから当然と言えば当然だろうか。
だが、金属貨幣と言えば昔から鋳つぶしても価値のある金や銀と相場が決まっている。
これらの扱いはどうなっているのだろうか。
「金貨や銀貨は作ってないのか?」
「そんなもんが俺たちの生活の役に立つのか?教会も虚栄の象徴たる金や銀をみだりに使うのにはうるさいからな」
ニシが銃弾が通貨みたいなものだと言った意味がここにきてようやく察せられた。
彼らは実用性を何よりも重視するのだ、金や銀では腹は膨れないし燃料にもならなければ敵を殺す事も出来ない。
しかし、教会とは一体何なのか。
一つの答えを知るたびに新しい疑問が生まれる。
「アスマ、教会って言うのはなんなんだい?このご時世にキリスト教が残ってるとは思えないけど」
「キリスト?誰だそれ?」
「分からないならば良いよ、肝心な時に助けてくれなかったケチな神の親類だ」
Rは無神論者だ。
いや、ARK5の人間は基本的に無神論者といった方が正確だろうか。
人類が窮地に陥った時、そして最終決戦で世界が崩壊した時、世はまさに終末と呼んでも良い状況になった。
だが、結局のところ神とやらが降臨する事も無ければ、救世主や使徒や勇者の類が現れる事も無かった。
人類は多大な犠牲を払いながら自力で危機に対処し、そして崩壊したのだ。
その歴史を知るARK5の生存者たちに神などを信じる者はいない。
信じるのは己の力と人類同胞の団結、そして生きる意志そのものだ。
神を捨てた人類の末裔は、己の力と技術をこそ精神の支えとする事でここまで生きながらえてきた。
神に捨てられたのではなく、自らの理性によって神を捨て去ったと強い意思を持つ事でARK5という共同体は絶望に打ち勝ったのだ。
「教会ってのはプレッパー教会の事さ。この辺にも影響力はあるが、本部はターミナルの領域にある」
「プレッパー?先程から英単語がチラホラ出て来るが、ターミナル側は英語圏なのか?」
「白人は多めだが英語圏って程でもないな。でもよ、腐っても世界的な言語だったんだろ?単語単位では結構用語として残ってるんだ」
単語は分かるが会話出来るほどではない、という塩梅だろうか。
どうも半端に生き残った英単語が時代の変化で異なった意味で使われているようだ。
終末に備えし者などという言葉が宗教と結びついているのがその証左だ。
「あいつらは結構うるせぇし目を付けられると面倒だから愛想よくしてさっさと逃げるに限るぜ」
「どう面倒なんだい?」
「質素に暮らせ、機械に頼るな、穢れた血の悪魔憑きを滅せよ、神を崇めよ。良くある話だろ?」
「ああ、そういう…」
どこぞの暗黒中世世界を再現してくれていそうな愉快な組織にRはげんなりとしながら相槌を打った。
確かに、これは相手にしないに越したことがない。
「さて、俺がこんだけ話したんだ。あんたも話してくれ、情報はタダじゃねぇんだ」
「話せと言われてもね、機密事項は話せないし、それ以外にしても面白い話なんて無いよ?」
「良いからさ、あんたらエルク…アークの民ってのがどういう暮らししてるかとか教えてくれよ。俺らからしたらあんたら人間かも怪しいってよく言われてるんだぜ?」
「へぇ、それはなんでだい?」
「いつも装甲服着てるだろ?見てくれは人の形だけど中身は別もんじゃないかって言ってる奴もいるのさ」
ARK基準で言えば彼らこそが人間じゃないというのに、彼らもまたこちらを人間では無いのではないかと疑っていた事にRは皮肉を感じて苦い笑みを浮かべた。
「なるほど、やはりお互い分かり合う必要がありそうだね。じゃあまあ、当たり障りのない所だけは教えるよ」
「そう来なきゃな、茶のおかわりはいるか?」
「いや、それは遠慮させて貰う」
それから日が落ちるまでの間、Rとアスマの語らいは続いた。
互いの生活について、この世界の技術水準、非番の時の過ごし方、趣味や嗜好、そしてARKの発足の経緯やその目的など、互いが欲しいと思える情報を片っ端から出し合い教え合った。
Rにとって、この地上で初めて文明的で有意義と思える時間は瞬く間に過ぎ去っていった。
もっといろいろ書こうと思ってたんですが、文字数増え過ぎてちょっとあれなんで次回に持ち越しになりそうな塩梅
そろそろ色々世界観出していかないといけないという危機感は増してきている




