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24話:ここに眠る

「・・・?」


 気が付くと、意識がやけにはっきりとしている。どうしてだ?


 目を開けると、そこには白い天井が見える。

 最初は「これで三度目の保健室か」と思ったが、背中にベッドの感触も無いし辺りに人の気配も無い。


 気になり体を起こすと、そこには中年のハゲたオッサンが立っていた。


「やめろよ、俺それ気にしてんだから」


 心が読めるオッサンか、最近のオッサンは高性能だな。


「・・・で?今回はなんで呼ばれたんだ?」


 目の前のオッサン、もとい神様さんに今回呼ばれた理由を尋ねる。

 前回はなんか、今日の評価とか言って呼ばれた。今回もそんな感じか?


「神様さんって、斬新な呼び方だな」


「いいから。俺死んだのか?」


 あまりここにいるのは気分が良くないので、早く現実に帰れるなら帰りたいものだ。


「お前がここにいたくないって思ってんなら、まだ死んでないな」


「なんだよその言い方」


 まるで俺がここに居たいって言ったら死ねるぞ、みたいな。


「生憎、天界はそんな簡単な構造にはなってないけどな」


 神様さんは俺の心を読んで質問に答える。

 じゃあ一体どうして呼ばれたんだ?


「いやなに、今日初めてお前の能力が本格的に発現したぞ、ってのを伝えようと思っただけだ」


「今日?昨日からじゃないのか?」


 確か、化け物と初戦闘を行ったのは昨日であり、俺の再生能力が発現したのも昨日の骨折が治癒された時のはずだ。

 これが能力じゃなかったら、一体何が能力だというんだ。


「言っとくけど、お前の能力は再生能力じゃねぇぞ?」


「は?」


「お前の能力は・・・、そうだな、名付けるなら『不死鳥』だな」


 うわダッサ。


「なんだよ、他に相応しい言葉が無いんだからいいだろ!?」


 他に相応しいのが無いって・・・、どんな能力だよ。


「で?一体どんな能力なんだよ?」


 ネーミングセンスの問題はどうでもいいとして、能力の詳細を教えてもらう事にする。


「・・・お前、なんで腹に穴が空いて生きてんのか疑問に思ったろ?」


「ああ」


 正直自分の体が化け物に感じてキモかった。なんで立てていたのかは本当に分からない。


「お前の能力はな、微再生能力に加えて半不死身の能力が付いているんだ。不死身の方が大きいかもしんねぇけどよ」


「・・・は?不死身?」


 何それ、俺死なねぇの?


「馬鹿言え。もちろん歳を取って寿命が来たら死ぬし、首や頭を潰されても死ぬぞ」


 それ不死身やないやん。


「だから半っつってるだろ?」


 神様さんが半ギレになって拳を震えさせている。

 おお怖い怖い、これ以上怒らせたら本気で死んでもおかしくない。


「・・・まぁ、腹に風穴開けられたぐらいでは死なないぐらい丈夫には出来てんだよ。痛みは感じるけどな」


「痛み感じるってのは中々不便だな」


 人間ってのはショックでポックリ逝ってしまう時もあるんやで。


「そうならない為の微再生能力だろ」


「?、解説オナシャス」


「微再生能力の特徴として、回復する量は微々だが即効性が高くてな。お前の痛みが直ぐに消えたのもそれが原因だ」


「質問いいですか神様せんせー」


 手を挙げて質問をする。


「どうぞ逢坂さん」


「どーして回復量が少ないのに腕の切り傷が一時間ちょいでくっついたんでしょうか?」


 化け物と対峙する前に俺は、ゴロツキの斧で腕に傷を負っていた。しかし、化け物と対峙する頃にはほぼ塞がっていた。


「さぁな、そんぐらい浅かったんじゃねぇか?」


 そんなガバガバな結論でいいのか・・・?色々疑問が残るぞ?


「という訳で、能力発現おめでとう逢坂よ。これからも転生ライフを頑張って生き抜くんだぞ」


「え、ちょ、本当にそれだけ?」


 なんかもっとこう、新たな力が授けられる的な何か無いんすか・・・?


「あるわけねぇだろ。常人より遥かに有利な立場で生きてんだ、甘えんな」


 まぁデスよねー。

 ダメ元で言ってみたが(言ってはいない)、そんなに上手く行くわけないな。


「そうだ、あの戦闘みたいに上手く行かないことばっかなんだよ。現実ってのは」


 神様さんが立ち上がると、俺の足元にいつかの魔法陣が浮き上がる。


「それじゃ、世界に戻って人生楽しんでこい」


「うぃーす」


 能力の呼び方に関しては、後でいい感じのに変えておくとしよう。



 ーーーーー



「・・・」


 再び目が覚めると、灰色の天井が見えた。

 見たことがない場所というのを一瞬で理解する。意識体だけになっていたからか、やけに思考がはっきりとしている。


「・・・気が、付いたか?」


 隣から聞き慣れた声がする。

 起き上がって横を見ると、リーナの姿があった。服装は化け物と対峙していたときのままだ。

 傍にはアスモも座っている。


「・・・あの化け物は?」


 ここがどこだかは大体察する。腹からも違和感が消えている。おそらく、ディーネが治してくれたのだろう。


 だとすると、後の心配事はあの化け物だけだが・・・。


「・・・あの青髪の女が、トドメを刺した」


「・・・そうか」


 言い切ったということは、その現場を直接目にしたのだろう。自分の母親が殺される、その瞬間を。


「・・・もう少し、早くあの場所に行っていたらもしかしたら助けられたかもしれないな」


 思えば、あの人は道に蹲っていた。俺がもう少し早くあの場所で発見していれば、彼女も変異しないで済んだかもしれない。

 変異の原因は分からないからどうしようもないとは思うが・・・。


「・・・そういえば、どうして人間が変異するんだ?」


 授業で習った内容だと、確か狂霧(デスミスト)は人間には無害であるとのこと。

 生物の死が当たり前に起こるスラム街と言えど、人間が狂う事は有り得ない。


 何か他の原因があるのか?


「・・・さぁ、あたしにも分からない」


 リーナは泣きそうな顔で首を横に振る。


「だよなぁ・・・」


 どうしてああなったのかは知らないが、誰かの手が加わったことは確かだ。裏に誰かがいるはずだが・・・。

 誰か分かれば苦労はしないよなぁ・・・。


「・・・なぁ、あたしは一体どうすればいい?」


 リーナは遂に我慢が出来なくなり、徐々に嗚咽が大きくなっていく。


「父さんも死んだし、母さんも死んでしまった。あたしはこれからどうすればいいんだよ・・・!」


「・・・・・・・・・ん?父さんも死んだ?」


 確か、リーナの父親は行方不明だったはずでは。


「・・・あの時に死んでいた男が、あたしの父さんだ。あたしを守ろうとして母さんに・・・」


 ・・・そうだったのか。余計な事を聞いてしまったな。

 それにしても、あんな所で偶然父親に会うとは・・・。何かの運命が働いているとしか思えないな。


「・・・」


 リーナは泣いている。隣のアスモがどうにか慰めようとしているが、どうにも言語が通じないので上手くいかない。


 俺自身も、なんて声を掛ければいいのか分からない。

 深刻な問題を抱えた女の子の慰め方なんて、俺もう分かんねぇよ・・・。


 その夜は、リーナが泣き止むまでその場に留まっていた。



 ーーーーー



 夜が明け、リーナも泣き止んだ頃。


「・・・泣き、止んだか?」


 恐る恐る聞いてみる。


「・・・ああ。悪いな、1日中付き合ってくれて・・・」


「これぐらい、当たり前だ」


 リーナの母親が死んだことには、俺にも非がある。これぐらいで償えるとは思っていない。


「・・・悪い、今日も先生に休むって伝えといてくれ」


「何をするつもりだ?」


「母さんと父さんの墓を・・・」


 墓を作るつもりか。一体どこのそんな金が・・・?


「・・・いや、今日は俺もサボるか」


「え・・・?」



 ーーーーー



 学生区を移動して、俺たちは今城下町に来ている。


「では、シルジアル様の墓碑はこちらになります」


「どうも」


 スーツを着たリーマンに大銀貨を数枚渡し、支払いを済ませる。


 とある城下町の墓地で、俺とリーナ(とアスモ)は墓碑の前に立っていた。

 にしても、墓地って即買OKなのか。この世界では土地はあまり重要ではないのだろうか。


「・・・ユウマ、どうしてこんな・・・」


「これぐらいは俺にさせてくれ。せめてもの償いだ」


 リーナの両親の墓碑を、代わりに俺が購入した。リーナは家の近くに適当な石を置いて作ると言ったので、そんな適当なものでは両親も報われないだろうと思い、俺が間に入って上等な墓碑を購入した、という訳だ。


 ・・・でも、今考えたらこの行動は迂闊かもしれないな。両親も、どこぞの馬の骨が買った墓碑に名を刻まれるよりも、娘が作った気持ちのこもった墓碑の方が喜ぶかもしれない。


「・・・ありがとな、これなら母さんたちも喜んであの世に逝けるはずだ」


「これぐらい・・・」


 ・・・まぁ、リーナは満足そうにしているからもしかしたらそれでいいのかもしれない。


「さて、合掌するか」


「がっしょう?」


 リーナはキョトンとした顔で意味を聞いてくる。アスモも同じような表情をしている。


「こうやって手を合わせて・・・」


 実際に動作を見せて、一人と一匹にやり方を見せる。


「こ、こうか?」


「そう、そんな感じ」


 リーナはぎこちない様子で手を合わせ、目を瞑る。

 俺もそれを見習って、手を合わせて二人の冥福を祈る。


 ちゃんとした顔を見たことが無い二人だが、誰かの手によって、そして俺たちの手で殺してしまった。

 せめて、二人で天国でちゃんと過ごせるように祈っておこう。


 神様さん、二人のことは頼んだぞ・・・。




 祈り終わって、すっと目を開ける。


 隣のリーナとアスモは、まだ合掌を続けていた。


「・・・・・・・・・」


 それ程祈りが強いっていう事なんだろう。終わるまでそっとしておくか。


 ・・・。




 ・・・・・・。






 ・・・・・・・・・。


「・・・な、なぁ。これいつまでやってればいいんだ?」


「もう終わってたんかい」


 リーナとアスモは目を開け、ゆっくりと立ち上がる。


「・・・じゃあ、帰るか」


「・・・・・・・・・そうだな」


 リーナが墓碑の前から離れ、その後に俺とアスモが続く。

 リーナが今何を考えるのかは分からないが、きっといい事では無いはずだ。


 きっと一人になって辛いことも色々あるはずだが、コイツならきっと強く生きていけるだろう。


 最後に墓碑に振り返って、リーナの後を追いかけた。




















 リラ・シルジアル カルマ・シルジアル

 ここに眠る 

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