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18話:ニックネーム を きめて ください

「・・・・・・・・・ん?」


 気がつき目を開けると、どこかの天井が目に入った。


「・・・」


 背中には少し固いベッドの感触がある。俺ん家のではない。

 察するに、ここは保健室なのか。でもなぜ?


「ん、気がついたね」


 声のした右の方に目を向けると、そこには白衣の女の人が椅子に座っていた。うちの担任ではない。

 ・・・この学校の教師の間では、白衣が流行っているのか?


「えーと・・・、ここは?今は何時です?」


「質問は一つずつしなさい。ショウトクタイシみたいに私は1度に聞き取れないんだ」


 聖徳太子は複数人の声を聞き分ける人なんだが・・・。


 ん?聖徳太子?ジャパニーズ?

 この世界にジパングが存在するのでスカ?


 ・・・そんなことどうでもいいか。おおよそ大昔の国として扱われているようなことなんだろう。


「・・・ん?!」


 何故か今まで気づかなかったが、教師はどっかで見た黒色の爬虫類を胸に抱えている。

 胸に抱えているということは、それ即ちアレがアレしているという訳で。


「お前ちょっとそこ変われ」


「んな!?教師に向かって『お前』とは、いい度胸だね!」


 おっと、口に出てしまった。


「・・・何故、その爬虫類がここにいるんです?」


「謝罪は無しかい・・・、まぁいいさ。

 こいつはあんたがここに送り込まれて来た直後に窓から入ってきたんだ。ったく、こんな可愛いのどうして放し飼いにするかね・・・」


 うぐっ。


「キューイ!キューイ!」


 爬虫類がそうだそうだと言わんばかりに鳴き声をあげる。

 ・・・まぁ、普通こんなの放し飼いにしないよなぁ。ドラゴンですもん。


「キュキュウ!」


「おわっと」


 爬虫類は白衣から俺の胸の中に入り込んでくる。

 な、なんやコイツ人懐っこいな・・・。


「・・・先に言っとくけど、学校に生物の持ち込みは事前に許可が必要だからね?」


 白衣も、俺が飼い主だと悟ったのか注意を促す。

 コイツが勝手に付いてきたんだ、俺は悪くないはずなんだけどな・・・。

 でも、誰もいない家の中で八時間近く放ったらかしにするのもなぁ・・・。


「・・・特別に、学校にいる間はその子の面倒見てあげてもいいよ?」


「マジですか」


 それは実に嬉しい事だ。家で死ぬなんて事は避けられそう。


「ただし、もちろん許可を得るまでの間だよ。許可を貰ったら、この子は生物小屋に入れてもらうからね」


「せ、生物小屋?」


 なにそれ響きが恐ろしい。


「授業中の生物の世話をしてくれる場所だよ。寮の近くにある」


「へぇ、そんなとこがあんすか」


 多分、そこには他の生き物たちが沢山いるんだろうなぁ。コイツそんな中でちゃんと生きていけるのか?


「・・・とにかく!連れてくるならこっちに預けに来なさい。早めに許可を貰うこと、いいね?」


「はーい」


「キューイ」


 爬虫類まで返事を返す。

 もしかしてコイツ、言語が分かるのか?


「よし、だったら今日は早く帰りな。もう夜の8時だよ」


「はちっ・・・、え?」


 俺は一体何時間寝てたんだ。


「・・・そういえば、どうして俺は運び込まれたんですか?」


「5時限目に、顔のいい男子生徒がアンタを背負って来たよ。まぁ、魔力の枯渇で気絶する、なんてのは1年にはよくあることさ」


「魔力の枯渇・・・」


 ・・・そうか、あの時フルパワーの火炎球を撃ったことにより、俺の魔力が切れたのか。


 魔力の調整もちゃんとしないとな・・・。


「分かりました、ありがとうございました」


「ん。明日は無茶するんじゃないよ」


 ウルスが用意してくれたのであろう鞄を持って、爬虫類と一緒に保健室を後にした。



 ーーーーー



 さて。


「名前なんにしようかなぁ・・・」


 夕食を適当に済ませた後、自室のベッドの上で爬虫類と向き合っていた。


「・・・なぁ、お前はなんて名前がいいと思う?」


 喋るわけがないが、一応聞いてみる。


「キュキュウ、キュウキュウ」


 日本語でおk。


 ウルスからの提案の『アスモデウス』という名前はちょっと痛いような気がするなぁ。かと言って『クロ』とかだとちょっと安直すぎるような・・・。


 ・・・・・・・・・。


「不二子」


「キュキューウ!!!」


 いきなり噛み付いてきた。


「いででで!!冗談、冗談だってば!!」


 産まれたてながらも、既に牙が少し生えていて痛い。噛まれた方の腕から全力で振りほどく。


 噛まれた場所には、ちゃんと牙の跡が食い込んでいた。


「いっつー・・・。なんて顎だ」


「キュ、キュウ・・・」


 ん?なんだコイツ反省してんのか?


 と思ったらまた近づいてきた。


「も、もう噛むのは勘弁だぞ!」


 爬虫類は俺の言葉を無視して、噛んだ部分をいきなり舐め始めた。


 な、なにしてんだコイツ?


「・・・もしかして、傷を治そうとしてるのか?」


 反応せず、ただひたすらに舐められる。若干くすぐったい。


 な、なんていい奴なんだ・・・!

 これは真剣に名前を考えなくては、コイツが可哀想だ。


「・・・・・・・・・うーん」


 考えなくては、とは言ったものの全くいい名前が浮かばない。

 親っていうのはもしかして、こんなに悩んで名前を付けたりするのか。


 アスモデウス・・・。アスモ、デウス・・・。アスモ・・・。


「・・・アスモはどうだ?」


 正直言って、この世界でのアスモデウスがどんな人物かは知らないが、英雄の名前ならそう悪くは無いはず。


 傷を舐めるのを止めて俺の顔を見つめる。

 やだ、こんな可愛いのに見つめられるとトキメいちゃう。


「・・・キュイ!キュキュキュ!キュイ!」


 気にいったのか、ベッドの上で小さく跳ねる。

 良かった、また気に入らずに噛みつかれたらどうしようかと。


「これから宜しくな、アスモ」


 こうして、俺の日常からタマゴが抜けて、代わりにアスモが加わった。

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