外伝 人魔大戦1
少女は隠れた押し入れから、魔族に嬲り殺される両親を見ていた。
魔族が家から出ると、少女は押し入れを飛び出し森へと逃げ出だした。
その後討伐隊が村へと到着し魔族を倒したが、時既に遅く村人は全員虐殺されていた。
逃げ出した少女は森で盗賊に捕まってしまった。
少女は盗賊の元で育っていった。
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「きゃあっ!」
ロキが頬を叩き、アングは地面に手をついた。
「ふざけんな!何のために力をつけてきたと思っていやがる!人間なんかと手を組むことはありえねえ!!」
ロキが再度アングを叩こうと腕を振り上げた瞬間、殺気を感じ手を止めた。
「おい、その手をアングに振り下ろしたらお前の喉を噛み切るぞ」
赤い毛のフェンリルが威圧して言った。
「・・・ちっ!勝手にしろ‼︎」
ロキは捨て台詞を吐いて部屋を去っていった。
「おい、大丈夫か?」
フェンリルがアングの頬を舐めると、アングはくすぐったそうに頬を緩めた。
「・・・ふふっ、ありがとうフェン君。また喧嘩しちゃった」
アングは立ち上がり、フェンリルを撫でながら礼を言った。
「いい加減、あの糞野郎と別れたらどうだ」
ロキとアングは度々喧嘩をしていた。フェンリルはアングを叩くロキが嫌いであった。
ロキの強さは、魔族の中では決して強いとはいえない。
そのロキに多くの魔族が従う原因の一つにカリスマ性もあるが、一番の原因は妻アングの包容力とその娘ヘルの実力であった。
自分だけの実力で魔王となったわけではないにも関わらず調子に乗るロキに、フェンリルは腹が立っていた。
「そんなこと言わないの!あいつにも良いところはたくさんあるんだから。ただ、私と目指すところが違うだけ」
今回の喧嘩は、人族と手を結ぶようにアングが提案したことが原因だった。
「私は人族と戦争なんてしたくない。・・・フェン君、私、明日ノース・エチゴに交渉にいってくる」
現在魔族と人族は緊張状態にある。魔界とノース・エチゴを境として、互いがけん制しあっていた。
「本気か⁉︎危険だ。それなら俺も連れていけ」
「だめだよ。四魔天と言われているフェン君を連れて行ったら、まともに交渉なんてできっこない」
魔界中の魔族から、その強さに畏敬を持たれた4体の魔族が四魔天と呼ばれていた。人族の間でもその噂は知れ渡っている。
「大丈夫。身体が少し大きいだけで、見た目が人族に近いイーとアルに護衛として一緒に付いてきてもらうし。私が魔族と人族を仲良くさせてやるんだから!」
イーとアルは実力のある2体だ。A級ダンジョンのボス並みの実力がある。
「フェン君は、ヘルと遊んであげてて。あの子、フェン君のこと大好きみたいだし」
ヘルは20年前にロキとアングの子として産まれた。
何百年も生きる魔族にとって、20歳のヘルはまだまだ子供扱いされていた。しかしその異様な実力から、ヘルは既に四魔天になっている。
「・・・ああ、わかった。気をつけろよ」
翌日、アングはノース・エチゴへと出発した。
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あらかじめ使者を遣わし会談の約束を得て、私達はノース・エチゴへ入国した。
「ようこそアング殿。私は国王から案内を任された騎士ダダと申します。以後お見知りおきを」
ダダは槍を持った女性騎士だ。彼女が国王の元へ案内してくれるようだ。
私はイー、アルと共に馬車へ乗り込んだが、馬車は動き出さなかった。
「なんだ?ちょっと中でお待ちください」
ダダがドアを開け馬車から降りた。
しばらくダダが馬車の外で言い争う声が聞こえていた。
すると、ドアが開きダダと共に大人の女性が乗り込んできた。
「あなたは?」
「初めまして!私はマリアと申します。私も途中まで同乗させていただきます」
ダダから聞くところによると、マリアは聖女のようだ。
急に馬車の前を立ちふさがり、馬車への乗車を願ってきたようだ。
聖女は世界中の教会のトップのはずだ。国王からの任務といえど、ダダも聖女には逆らえないらしい。
「アング様。人族の町は初めてですか?」
「はい、凄いですね。人族の町は、魔界とは違い文明が発達しています」
人族は魔族と違い、常に現状に満足しない。尽きない向上心は、素直に感嘆に値する。
「途中で商店街があるんです。少しだけ観光していきませんか?」
「マリア様、なにを言っているんですか!?そんな時間はありません!!」
「いいではありませんか。どうせ途中で一休みする予定でしょう?アンク様はどう思いますか?」
私は人族と和平を結ぶためここへ来た。とても観光などする余裕はないが、人族の町はとても興味がある。
「そんなことができるのなら、是非見てみたいです!」
私はダダにお願いしてみた。
「・・・かしこまりました。確かに1度休憩はいれる予定でしたので」
しばらく馬車が走り、途中の商店街で停止した。
フードを被った私はマリアに手をひかれ、イーとアルと共に馬車から町へ降り立った。
「どうぞ!とても美味しいですよ!」
マリアに肉のついた串を渡され、頬張ってみる。
「っ!美味しいです!こんな美味しいもの初めて食べました!!」
魔族は、基本魔素があれば食事をせずとも生きていくことができる。
魔素が非常に濃い魔界においては食事は全く必要がなく、誰も料理をすることはない。
マリアは商店街を歩きながらたくさんの料理を持ってきてくれた。
どれも味がことなっていて、様々な発見があった。
「もういいでしょうマリア様。アング様、馬車へお戻りください」
ダダから促され、私達は馬車へ向かう。
途中、背後のマリアが私に小声で囁いた。
「アング様、お気をつけください。私はこの会談が、何事もなく終わるとは思えないのです」
振り返ると、マリアは悲しげな笑みを浮かべ、手を振っていた。
マリアと別れ、私達は馬車へ乗り込んだ。
「まもなく到着です」
ここは今は敵国の真っ只中。
マリアの言葉を胸に刻み、私は気を引き締めなおした。
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「右、左!そこでジャンプ!!」
フェンリルはヘルに操縦されて城を走り回っていた。
「・・・おい、そろそろ降ろすぞ」
「え~っ!もっと!まだ降りない!」
ヘルはフェンリルにしがみついて降りようとしない。
困っていると、大男が近づいてきた。
「あっ!レック!!たかいたかいして!!」
「・・・」
レックは何も言わず、ヘルの脇を抱えて肩に乗せた。
「助かったぜ、レック。お前相変わらず無口だな」
「・・・」
レックは何も言い返さない。ヘルに髪や耳を引っ張られていた。
ヘルはレックのことも大好きであった。
「はぁ、早く帰ってこいよ、アング・・・」
フェンリルはため息をついた。
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「では、和平を結んでいただけるのですね!?」
「ああ。我らも戦争を望んでいない。よろこんで結ばせてもらおう」
交渉の結果はアングの望み通りとなった。
「この城でアング殿達のもてなしの用意をさせてある。今宵は城で泊っていくといい」
「まあっ!ありがとうございます!途中でいただいた人族の食事はとても美味しいものでした。楽しみです!」
会談が終わり、アング達は部屋へ案内された。
部屋でくつろいでいると、ノックが鳴る。
「アング様。まだ食事まで時間があるので、お風呂はいかがですか?」
「まあ!お風呂!是非いかせてください!」
風呂場までいくと、ダダがアングへ目くばせする。
アングはそれに気づき、イー、アルの方へ振り向いた。
「ここから先は女湯です。私は大丈夫なので、イー、アルは男湯へ」
女湯も男湯も、人の気配は感じられない。
ダダは槍を持たず丸腰だ。アングは戦闘能力が低いとは言っても魔族。丸腰の騎士相手に負けるはずはなかった。
アングとダダは女湯へ。イー、アルは男湯へと別れた。
浴室の前で服を脱ぎ始める。
「っ!ダダ‼︎」
思わずアングは口を抑えて叫んだ。服を脱ぐと、ダダの身体は傷だらけだった。
「あぁ。気にしないでください。ほとんどが昔の傷なので」
「・・・今後は、お互い傷つくことはありません。魔族には今後一切人族を傷つけさせませんから」
「・・・そうですね、アング様。さあ、早く湯船に浸かりましょう」
湯船に浸かり、アングは身体を伸ばした。
「ふぅ・・・交渉が上手くいってよかったです」
「アング様。差し支えなければ、アング様の今までのことをお話しいただいてもよろしいですか?」
「えっ⁉︎面白い話ではないですが・・・」
アングは自分のこれまでの人生を語りだした。
アングの見た目は異様に白い肌以外は人族とほとんど変わりがない。
人族と似ていることで弱者とみなされ、いじめを受けていたこともあった。
しかしその明るい性格は周囲に好かれるようになり、次第にいじめは無くなった。
そしてロキと夫婦となり、ヘルが生まれた。
ロキは少し暴力的だが、魔族であるアングにとっては大した事ではなく、幸せな人生を送っていた。
「・・・とても幸せそうな人生ですね。アング様、お背中をお流しします」
ダダは立ち上がって言った。
「えっ⁉︎そんなことしないでいいですよ⁉︎」
「やらせてください。アング様の勇気ある行動のおかげで、平和が訪れるのですから」
ダダが引き下がらないので渋々アングは洗い場に行き、ダダに背中を向けて座った。
「アング様は、魔族から大事にされてきたんですね。とても綺麗な身体です」
アングは顔を赤くし俯いた。
「アング様、今度は私の話をさせてください」
ダダはアングの背中を洗いながら話を続ける。
「私の人生は、魔族によって壊されました」
「っ⁉︎かはっ・・・」
長い針がアングの背中に突き刺さった
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ロキは多数の魔族を従えて魔王となった。現在では約1万もの魔族がロキの配下となっている。
群れを嫌う魔族の習慣からすると、このロキの出現はありえないことであった。
軍を従えた魔族が今にも襲ってくる可能性がある。
そのことは、魔界を正面にしたノーズ・エチゴの人々にとって日々恐怖を与えていた。
「ロキの妻、アングが交渉したいと言ってきているようです」
ノース・エチゴの国王ビシャは、側近ジェドから話を聞いていた。
「これは、好機かもしれません」
「・・・それは、この機に殺す・・・ということか?」
アングの事はノース・エチゴに情報が入っていた。
ロキを魔王たらしめる原因の一つ。
アングがいなければ、ロキの軍は半数も集まっていなかったと考えられていた。
「だが、アングは人族と手を結ぶよう言ってきているのであろう?我らとしても、悪い話ではないと思うが?」
「いえ、相手は魔族。仮に今手を結んだとしても、さらに軍を大きくしたロキが何をしてくるかはわかりません」
人族は、魔族を根本的に信用していない。特にノース・エチゴは長年魔族から襲撃を受けている。無理もない事であった。
「・・・確かに、もし魔王ロキが今よりも軍勢を集めてしまえば、人族の勝利の可能性は無くなってしまう」
いつか必ず裏切られるならば、勝機は今しかない。
ビシャ国王は、戦争が始まることを覚悟した。
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「な・・・ぜ・・・」
「アング様。私は嘘をつきました。私の職業は騎士ではなく、アサシンです。槍は単なる飾りでした」
アングは指一本動かすことができない。
「無理です。アサシンである私のスキル、パラライズはB級ダンジョンボス程度であれば完全に行動不能にさせます」
アングはまともに喋ることすらできない。
「アング様。私は心の底から魔族を憎んでいます。幼い頃に両親も仲の良かった村人も全員殺されました。その後私は盗賊に捕まり、日々虐待を受けながら暗殺術を学んでいきました。私の生きる目的は今も昔も、魔族に復讐することしかありません」
ダダはアングの顔を踏みつけた。
「人族と魔族が手を結んでは困るんです。私の生きる意味がなくなってしまいます。あなたは間違えました。幸せな人生を送ってきたために、私のような人間の憎悪を計りきれていなかったんです」
ダダは髪から刃物をとりだす。
「これで、悲惨な戦争が始まります。是非あの世でご覧ください」
アングの身体を刃物が貫いた




