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夜の防衛戦 後半

 レオンはヘルケルベロスだと分かると、すぐに全速力で逃げるように村人たちに伝えた。


 村人たちもこれは危険すぎると理解したのか、一目散にその場から離れた。


 この場に残ったのは、ユウリとレオンだけだった。


「ユウリ、お前も行っていいんだぞ?」

「馬鹿言え。こいつ、相当強いんだろ?」

「ああ、Sランククラスの魔物だよ」

「何でそんな魔物がここにいるんだよ?」

「さあな、全く見当がつかない。とりあえず、倒さなきゃ俺たちが死ぬぞ」


 そう言うとレオンとユウリは横に跳び、ヘルケルベロスの攻撃を避けた。ヘルケルベロスの図体が大きいので、避けるのも精一杯だ。


 すると、ヘルケルベロスが咆哮をあげると、ヘルケルベロスの影が針のように飛び出しユウリとレオンを傷つけた。


「こいつ、自分の影を操るのか」

「あれは《影操作》だろう」


 ヘルケルベロスがまたも《影操作》で攻撃してきたので、ユウリとレオンは剣で攻撃を弾きながら回避した。


 しかし、ユウリが攻撃を弾く事に集中していると、ヘルケルベロスの前足からの攻撃に気付かず、吹き飛ばされた。


「ーーぐッ!」

「ユウリッ!」


 ヘルケルベロスは《影操作》を消すと、レオンに襲い掛かった。レオンは大剣でヘルケルベロスの攻撃を防いだ。


 攻撃を防がれたヘルケルベロスが噛みつこうとしたので、レオンは防御を解き、ヘルケルベロスの身体を斬りながらユウリの方へ跳んだ。


「ハア、ハア。あいつ強すぎ・・・・・・」

「ハア、ハア。ああ、あまり長引かせたくないな」


 ユウリとレオンが相談していると、対峙しているヘルケルベロスが《影操作》で猛攻を仕掛けてきた。


 その攻撃は一撃一撃が重く、こちらが圧されているのがよく分かる。


 さすがのレオンでもSランククラスの魔物を相手にするのはつらいらしい。レオンの顔がだんだんと苦しそうになってきた。


 ユウリとレオンが《影操作》の攻撃を防いでいると、ヘルケルベロスがこれまで以上の咆哮をあげた。


 すると、あまりの威圧にユウリとレオンは一瞬止まってしまった。ヘルケルベロスはその一瞬の隙に、自らの影でユウリとレオンに攻撃をした。


「ーーがはッ!」

「ーーぐおッ!」


 攻撃を食らったユウリとレオンは、後方に飛ばされ転がった。


 攻撃を食らっても立ち上がったユウリとレオンは少し離れたヘルケルベロスを見た。


 そこで、レオンはユウリに作戦を提示した。


「なあ、ユウリ。作戦があるんだが」

「・・・・・・作戦?」

「そうだ」


 そして、レオンはユウリに作戦を伝えた。


「・・・・・・無茶ぶりだけど、やるしかないか」

「頼むぞ、ユウリ」

「おう」


 そう言うと、ユウリとレオンはヘルケルベロスに向かって突っ込んでいった。ヘルケルベロスはそんな二人に対し、《影操作》で攻撃をしてきた。


 ユウリはレオンよりも前に出て、ヘルケルベロスの攻撃を次々に弾いていった。いくら、身体に傷がつこうとも気にせず、全ての攻撃を防いだ。


「レオンッ!」


 ユウリが全ての攻撃を防ぐと、今度はレオンが前に出てきた。レオンが前に出ると、ヘルケルベロスとはかなりと至近距離だった。


「《ライトニング・ブラスト》ッ!」


 そんな至近距離でレオンはヘルケルベロスに《ライトニング・ブラスト》を放った。かなりの威力の電気砲がヘルケルベロスの身体を貫いた。


 先程、ユウリが攻撃を防いだのは、レオンが剣に魔力を流しているのを邪魔させないためだった。


「グオオォォォォーーッ!!」


 これにはヘルケルベロスも効いたようで、痛みに悶えるように吠えた。


「今だ、ユウリ!一気に決めろ!」


 今度はユウリが前に出て、魔力を流した剣でヘルケルベロスを斬りつけた。


「ああああぁぁぁぁーーッ!」


 最後の力の限り、ヘルケルベロスを斬り裂いた。


「ハア、ハア・・・・・・」

「ガ、ア・・・・・・」


ーーズンッ!


 ヘルケルベロスは血をボタボタと流しながら、その思い身体を倒した。


 すると、肩で息をしていたユウリとレオンもその場に倒れ込んだ。


「・・・・・・勝った?」

「ああ」


 倒れ込んだユウリとレオンは自分たちのボロボロな姿に、お互い軽く笑ってしまった。


 その後は、ユウリとレオンは立ち上がり、傷だらけの身体でフェルカたちが避難している場所へ向かった。


 そのフェルカたちは、ユウリとレオンの姿が見えると急いで駆け寄った。


「大丈夫だったのか、レオンッ!」

「あのヘルケルベロスは?」

「大丈夫だ。ヘルケルベロスは倒したよ」


 レオンがそう伝えると、村人たちは歓喜を上げた。


 フェルカはフィラを連れ、そんな村人たちを掻き分けて出てきた。


「大丈夫ですか、あなた?」

「ああ、なんとかな」


 フィラはレオンの無事を確認すると、安心したようだった。それに比べ、フェルカはユウリに抱きついて顔をユウリの胸に埋めていた。


「あの~、フェルカさん?」

「・・・・・・馬鹿。こんなに傷だらけになって」


 フェルカはユウリにだけ聞こえるようにボソッと言った。ユウリは胸に埋めているフェルカの頭を軽く撫でた。


「・・・・・・悪い、心配かけた」


 そう言うと、フェルカは顔を上げ、目に涙を滲ませながら笑って言った。


「・・・・・・おかえり、ユウリ」

「・・・・・・ただいま、フェルカ」

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