平穏と不穏の警鐘
ユウリとレオンがリアルスから戻ってきて、二週間ほどが過ぎていった。
この日もレオンとフィラは畑に行き、フェルカは暇だったのでユウリを探していた。そんなフェルカは迷うことなく、丘の上に向かった。
「またここにいた」
「ん?ああ、フェルカか」
フェルカが丘の上に行くと、ユウリが芝生で寝転がっていた。この丘は、フェルカがユウリにシナクイ村を案内している時に見つけた場所だ。今ではユウリのお気に入りの場所で、昼寝をする時や考え事をする時などはここで寝転がっている。
「どうしたの?また何か考え事?」
「・・・・・・そろそろ行かなくちゃって思ってさ」
「・・・・・・」
フェルカは黙ったまま、ユウリの隣に座った。ユウリがフェルカを見ると、その表情はどこか寂しげだった。
「・・・・・・ねえ、ユウリ。私も一緒に連れてって欲しい」
「・・・・・・はあ?」
「ダメ?」
「ダメっていうか・・・・・・。俺はいいけど、レオンとフィラが何て言うか・・・・・・」
「そうだよね・・・・・・」
ユウリは少し気まずくなった空気を換えるため、気になっていた事をフェルカに聞いた。
「そういえば、フェルカは最初から俺と普通に話せてたけど、どうして?」
「う~ん。多分、自分と同年代の人が珍しかったからかな?ユウリも気付いていると思うけど、あの村で私と同年代の人っていないんだよ。全員年上か年下だから」
「そういえばそうだな」
ユウリも思い出してみると、確かに自分たちと同年代の人はいなかった気がした。
「だからね、普通に同年代の人と一緒に話をしたり、遊んだりするのが楽しかった」
「そっか・・・・・・」
「あ!その・・・・・・別に誰でもよかった訳じゃないよ!楽しかったのはユウリだったから・・・・・・」
「お、おう・・・・・・」
フェルカが急に顔を赤くしながらフォローをしてきたので、ユウリは恥ずかしくなり顔を逸らせた。
それから二人で芝生に寝転がりながら談笑をしていた。そして、気が付けば夕方になっており、空はオレンジ色に染まっていた。
「そろそろ帰るか」
「そうだね」
ユウリとフェルカは立ち上がり、村の方へ帰っていった。
村に着くと、家に明かりが点いていた。先にレオンとフィラが畑から帰ってきたようだ。
「ただいま」
「あら、二人ともお帰り」
ユウリとフェルカが家に入ると、夕食の準備をしていたフィラが出迎えてくれた。ユウリとフェルカは手を洗うと、夕食の用意を手伝った。
その後、レオンが二階から下りてきたので、夕食の準備をした。
夕食を食べている時に、フェルカはレオンにあの話をした。
「ねえ、お父さん。大事な話があるの」
「どうした?言ってみなさい」
「私、ユウリと一緒に旅をしたいと思っているの」
「・・・・・・」
フェルカの言葉を聞いたレオンは、黙って目を閉じていた。そして、ようやくレオンは目を開いた。
「ーーっ!」
開いたレオンを目はとても鋭く、どこか威圧を感じた。
「フェルカ。ユウリがしようとしてる旅は命懸けのものだ。一歩でも間違えると死ぬという旅だぞ。それでも行きたいのか?」
「・・・・・・行きたい。ユウリと一緒に旅をしたい!」
レオンの威圧に耐えながらも、決心をしたフェルカにレオンはため息をついた。
「・・・・・・分かった。自分で決めた事だ。好きにしなさい」
「ありがとう、お父さん!」
「よかったな、フェルカ」
「うん!」
フェルカの決心に折れたレオンは、ジト目になりながらフェルカに聞いた。
「しかし、なんでユウリとなんだ?好きなのか?」
「え!?えっと・・・・・・その、あの。・・・・・・好き、です」
「え?マジ?」
「あらあら~」
レオンはふざけて聞いたはずの質問だったのだが、フェルカは予想以上に顔を赤くしてモジモジとしながら、しどろもどろに答えた。
さすがにこの反応にはユウリとレオンは予想外過ぎて、唖然としながらフェルカを見た。唯一フィラだけが、自分の頬に手を当てて楽しんでいた。
「ユウリ、お前!フェルカに何をした!」
「してねぇ!俺は何もしてねぇ!」
娘の予想外の反応に混乱したレオンは、ユウリを掴んで激しく揺らし始めた。
それを止めようとするフェルカ。そして、それを見てまた楽しむフィラ。
ここに来てから一番家族らしくなったと、ユウリは心のどこかで思った。
「・・・・・・さっきはすまん。取り乱した」
「大丈夫だ。俺もあれには混乱した」
お互い落ち着き、今後の予定を話していた。
「俺は明日、出発しようと思う」
「・・・・・・そうか。少し寂しくなるな」
「そうね~。寂しくなるわね」
そんなしみじみとした話をしていると、フェルカがあくびをしたのでお開きになった。
ユウリたちは明日に備えて寝ようと部屋に戻った。
「・・・・・・フェルカが俺を好きって、マジか」
そんな事を考えると、ユウリの顔はだんだんと熱くなっていった。ユウリは顔を押さえて、部屋の扉に背中を預けて座り込んだ。
すると、その時だった。突然、村の中心にある警鐘が、夜の村に鳴り響いた。
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