新しい出会い(出会う度にこのタイトルだと何話こうなることか)
どうやら宿の上の階はぐるっと一周できるようになっているらしい。全部で3階建てだが、2階と3階に大きな違いは見当たらず、あっという間に探索などは終わってしまった。食堂の奥の扉など見ていないところはまだあるが、勝手に入るのは常識知らずというものだろう。となると……
「おや? 宿の人かと思ったが違うのか。部屋の前でどうしたんだい?」
と、声をかけられる。どうやら迷惑になっていたとかではないようだが、とりあえず素直に話し相手を探していたことを伝えながらそちらの方を見る。部屋から顔を出しているのは女性のようだった。ローブをまとった風貌は理知的……ではあるものの、幾分かこぢんまりとしている。
「ん? まあそんなこともあるのだろうね。ではここはひとつ私などでは如何かな?」
おぉ、どうやら話し相手を見つけることが出来たようだ。しかも嬉しいかな、突然勝負を挑まれることもほぼなさそうな相手である。これは理想的な展開というやつではないだろうか? そもそも初回が例外的な失敗であって、こういうのが普通なのではなかろうか?
「まあ立ち話もなんだ、入るといい」
お邪魔しますと入ってみれば、自分の部屋とは大分様相が違った。他人の生活している空間という以上に、そもそもの広さだとか設備の内容だとかが異なるのはいったい何故なのだろうか。やはり大枚はたいて長期契約するとお得になるシステムとかなのだろうか。
「掛け給えよ、あいにくとお茶菓子なんてしゃれたものは出せないがね」
ありがたく席に着く。テーブルの上に紙が広がっているが、いくらかは白紙で一枚は書いている途中のようだ。どうやら何かものを書いているところだったらしい。はたして自分が文字を読めるのかと覘いてみると、おおむね文字は理解できた。
「ああ、気になるかい? 簡単な魔導理論についての本を書いているところなんだよ」
魔導理論! となるとこの女性は魔導師ということになるのだろう。道理で冒険者連中と違って理知的な感じがするわけだ。となると魔法とか使えるのだろうか?
「ん? 魔法と魔導は別のものだろう? 私は魔法は使えないよ」
ほうほう、自分実はそういったこと(以外もだけど)に疎いので、ぜひお話しいただけたら嬉しいですね! と言いながら、魔法と魔導の違いは難易度なのだろうかと推測してみる。しかし本まで書くような人が難易度で使えないとかあるのだろうか?
「常識みたいなものなんだがね。魔導というのは魔力によって世界の理を導き現象を起こす術で、魔法は魔力に加えて強い思いによって世界の法を捻じ曲げる術のことだよ」
……ああ!




