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民衆に関しては、次の二つのことに注意して欲しいのだ。

第一に、民衆というものは、しばしば表面上の利益に幻惑されて、自分たちの破滅につながることまで、望むものだということである。

第二に、仮に、民衆から信頼されている人間が、彼らに事の真相を告げ、道を誤らないように説得でもしなければ、この民衆の性向は、国家に害を与え、重大な危険をもたらす原因と、いうことである。


「政略論」


マキアベリ氏自身が「民衆が表面上の利益に惑わされ、破滅に向かった例」として挙げるのが、以下の二つ。


①ローマ:ファビウス・マクシムスの慎重戦略を退け、破滅的な会戦を望んだ民衆。

 ファビウスはハンニバルに対し「消耗戦・遅滞戦術」を主張したが、民衆は「早期決戦」という分かりやすい利益(名誉・迅速な勝利)に飛びついた。

 その結果、ローマはカンナエで壊滅的敗北を受けた。

② アテナイ:シチリア遠征(ニキアスの慎重論を退けた民衆)

 ニキアスは「遠征は危険」と警告したが、民衆は「巨大大な戦利品・覇権拡大」という幻影に魅了され、遠征を熱望した。

 結果、アテナイは壊滅的敗北を喫し、国家衰退の決定打となった。


『政略論』の直接の例ではないが、同じ心理構造(表面上の利益に飛びつき破滅へ向かう民衆)は日本史でも繰り返されている。


①平家政権末期:平清盛の「強権的繁栄」への民衆の期待

 清盛は日宋貿易で繁栄を演出し、民衆は「表面的な富の増大」を支持した。

 しかし内部は腐敗し、反乱が噴出し、平家は滅び源氏の世になった。

 その後、承久の乱で後鳥羽院が破れ、朝廷も政治的実権が低下した。

「繁栄の幻影に支えられた支持」が、国家の不安定化を加速した。

②江戸末期:尊王攘夷の“わかりやすい利益”に飛びついた世論。

 攘夷は「名誉」「誇り」「外敵排除」という感情的利益が大きく、民衆は複雑な国際情勢を理解しないまま支持した。

 結果、無謀な攘夷行動が列強の報復を招き、幕府の権威は崩壊した。

③ 昭和初期:軍部の“即効的な「国威発揚」への熱狂。

 満州事変後、軍部は「国威」「経済的利益」を強調し、民衆は拍手喝采で支持した。  

 しかし実際には国家を破滅へ導く道であった。


これらはすべて、短期的・感情的利益に民衆が惹かれ、長期的破滅を招くというマキアベリ氏の警句と一致する。


戦後の日本人の具体的行動でも、オイルショック時、コロナ蔓延期のトイレットペーパー買い占め、コロナ蔓延期のマスク買い占めがあった。米の業者による売り惜しみや投機的行動、最近はナフサの供給不安によるゴミ袋などの大量買い占めが国民全体を困らせている。

いずれも、不安を拡散する情報操作に踊らされ、 目先の自分の利益確保や不安解消を優先 し、国家全体の供給崩壊を招いている。

 つまり、情けないことであるが、日本人は、情報操作に実に弱く、不安が高まると他者への配慮を欠く人が多くなる傾向が強い。


※(参考)コロナ蔓延期のトイレットペーパー騒動

 1.SNSでの「不足する」という流言(2020年2月)が発端。

「マスクと同じ原料だからトイレットペーパーも不足する」、「中国からの輸入が止まる」

といった根拠のないデマがTwitterなどで拡散した。

2. 2月28日:買いだめが急加速

 各地のスーパー・ドラッグストアに人が殺到し、店頭から一気に商品が消えた。

 テレビが「品切れの様子」を報じたことで、心理的不安が増幅し、買いだめが連鎖した。

3. 3月:全国的な品薄・転売・盗難事件まで発生した。

 入荷しても即売り切れ、フリマアプリでは数倍以上の法外な価格で転売された。

 栃木県真岡市では公園20か所から77個のトイレットペーパーの盗難が発生した。


今から思えば、「何でそんなことに」となるけれど、4年前に、現実に日本で起きたことである。

最近のナフサ不安で、同じことにならないように望むけれど、難しいかもしれない。


「民衆から信頼されている人間が、彼らに事の真相を告げ、道を誤らないように説得でもしなければ」を実践できるような人が欲しいものである。


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