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1/96〜男女比1:96の貞操逆転世界で生きる男刑事〜  作者: Pyayume
序章「異分子」

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第5話「配属前面接」

コンコンコン。


俺は少し震えながら目の前の扉を3回ノックした。


「どうぞ。」


妙齢な女性の無機質な声が聞こえた。


「入ります!」


そう言い扉を開けると、目の前の机には5人、左右に3人づつの計11人が面接官として着席していた。


椅子の前に立つと、俺のすぐ後ろには2人の護衛官が控えた。


「関教場、佐藤悠真です!お願いします!」


俺は快活な印象を与えられるように声を張った。


面接官の一人に着席を促され、それに従うと、周りの視線が痛いほど突き刺さった。


周りを視線だけで確認すると、訝しげに見てくる者、含みのある笑みを浮かべる者、睨みつけてくる者等様々だった。


「4年間の学校生活はどうでしたか?」


早速左手に座っていた柔和そうな女性警視が穏やかに尋ねてきた。


「座学だけでなく実践的な訓練や術科等、警察官の基礎的な知識技術を教えていただき、とても充実した生活でした!」


「一番印象に残ったことは何ですか?授業でも授業以外のことでも構いません。」


「関教官に刑事課を希望していることをお話しした際に、激励頂いたことです!」


「男が刑事?冗談だろ。」

「君は本来繁殖プラン適応プログラムに参加するだけで国家に貢献できる。」

「危険な仕事は女性に任せなさい。」


右側の面接官達が小馬鹿にしたように笑いながら言った。


「私は悪事を働く者を許しません。そして、刑事の私にしかできないことがあると信じています!」


私は右手の席をしっかりと見つめながら、そういった。


「なので、繁殖プラン適応プログラムの受講ではなく警察大学に入学したんです!」


面接室に重い沈黙が流れた。



「君は、自分がどんな存在か分かっているか?」


硬質な声が、静まり返った面接室に響いた。


真正面に座る女性幹部は、その静寂を脅すように指先で机を叩いた。


その女性の胸には、金色の警視正の階級章に加え、『国家生殖資源庁』の徽章が輝いている。


そう、繁殖プラン適応プログラムの主幹官庁からの出向者である。


「国家資源。それが、今の君の社会的価値だ。護られ、管理され、国家のために活用される義務がある。それが与えられた役割だ。」


彼女の視線は冷たいが、どこか哀れみの色も滲んでいた。


「なのに君は…『刑事課を希望します。』と言ったな…。それは反逆にも等しい自覚はあるか?」


俺はゆっくりと口を開いた。


「わかっています。でも私は、事件を追いたい。現場に立ち、犯人を捕まえたいんです。」


俺の若干の猛りを孕んだ声で、面接室の空気がピリリと張り詰めた。


背後に立つ2名の護衛官が反射的に腰に手を伸ばす。


銃ではなく、非常時避難用の保護シールドだ。


この世界では、男が興奮するというのは資源の損傷リスクだ。


「貴重な『国家資源』が、危険な現場で怪我でもしたら、国の損失は計り知れない。君の意思だけでは済まない話だ。」


幹部は凄みを利かせつつも冷静に告げるが、俺は視線を逸らさない。


「国家資源だからこそ、私にしか追えない犯罪があります。私は繁殖プランに埋もれて終わるために生まれてきたわけではありません。」


面接室に、5秒程の沈黙が続いた後、幹部がゆっくりと椅子に背を預け、冷えた笑みを浮かべた。


「…面白い。まるで新米巡査の空想に出てきそうな『刑事』そのものだな。…いいだろう。だが一つ条件がある。」


「条件ですか?」


「君は交番勤務をせず、捜査第一課に特例配属する。だが護衛は絶対に付ける。現場に出ればSPが張り付くし、捜査権限も制限付きになる。それでもやるというなら、やってみろ。」


俺は拳を握りしめた。


「はい。どんな形でも、俺は刑事になります。」


幹部の眼光が鋭く光った。


「その覚悟、見せてもらおう。ようこそ、『警視庁捜査第一課』男刑事第一号くん。」


その瞬間、他の面接官や護衛官達の驚きの声ともならない声が聞こえた。


彼女たちにとってはあり得ないことだったのだろう。


「面倒な毎日が始まるぞ。覚悟しておけ、『異分子』くん」


こうして俺は、『男という資源』でありながら『刑事』であるという世界に一人しかいない立場を手に入れた。


だが、同時に、この世界の壁の厚さを思い知った。


男である俺は、常に「資源」として扱われ、自由に動くことすら許されない。


それでも、俺は「この世界で、刑事として生き、刑事としての使命を全うする」ことを決めた。



この世界の犯罪者たち、そして俺を縛る「国家資源」という鎖。


それら全てと戦いながら、俺は刑事として生きていく。

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