女王と女王
「初仕事の乾杯はしなくていいのか?」
フーガが酒瓶片手にティターニアの部屋を訪ねていた。サイスも一緒だ。正直嬉しくないのだが、駄々をこねても仕方ない。ティターニアは観念して玄関を開けた。
「まあ、予想通りの顔ですわね」
「別に祝おうと思って来たわけじゃないんだ」
サイスとフーガが言うので、それなら話を聞いてみるか。という気になったティターニアは部屋に招き入れた。
「ティターニア、まずは飲もう」
フーガがグラスに酒を注ぎティターニアに手渡す。ティターニアはグラスをしばらく眺めたあとそれを受け取った。
「ほら」
サイスにも促さられティターニアは一気に飲み干す。
「良い飲みっぷりだ」
フーガも少し嬉しそうにしている。とりあえずテーブルに座ると
「まずは、いい仕事ぶりだった、と言わせて欲しい」
フーガに言われたが、あまり気分がいいとは言えず、二杯目をグラスに注いだ。
「ティターニア。もし違ってたら殴ってもらって構いませんわ。以前私も、ティターニアを殴った事がありますものね。……私達と離れ離れになるのが嫌、なのかしら」
サイスに言われティターニアの動きが止まる。
「確かにその比重のほうが重いけどさ……」
「なら、それについて対策しませんと」
サイスは言いながらティターニアのグラスを受け取るとそれを飲む。
「私達は放っておいてもいずれ死ぬ。いつかくる永遠の別れを悲しむのは結構かもしれませんけど、ちょっと早すぎですわよ」
サイスが空になったグラスを返しながら言う。
「あの場に居た……あぁ、メイドは除外してな…部外者は俺だけだったんだよ」
フーガの言葉がうまく飲み込めない。
「私、前言ったと思うけど……貴族ですの。爵位もってるのだけど、今誰も爵位持ちがいらっしゃらない……ま、結論を言わせていただきますと、私も女王ですわ」
サイスの場合は爵位持ちが他に存在しないので自動的に女王になってしまった、が正しい。
「私も権威を捨てるつもりですの。私も政治には明るくなくて……」
サイスはそう続けた。
「サイスは嫌じゃなかったの……?」
ティターニアがグラスをテーブルに置きながら言う。サイスは目を伏せ
「皆に会えないのは嫌ですわ。でも、国が滅ぶのはもっと嫌ですわ」
サイスが昔を思い出すように言う。ティターニアは新しい酒を注ぎながら
「私は別に国なんて……」
「ティターニアにとっての国は研究所になってますわよ」
「え?」
「幸せだった時間も同じ天王星だったはずですわよね。ソレこそが国ですのよ」
サイスに言われティターニアは思い出す。確かに嫌なことも多かったが、幸せな時間も同じくらいあった。
「貴方と同じ思いをしないようにするのが、主導者ですわ」
フーガはおつまみとして持ってきていたナッツとチーズをテーブルに広げ、誰でも食べれるように配置していた。それをひとつ摘むティターニア。
「私にそれができるかどうかも不安だわ……」
ティターニアが言うのでサイスはティターニアの手を握り
「誰を頼ってもいい……誰かを頼るなら、誰かに頼られてもいい……持ちつ持たれつですわ」
「あまり不安がってるのもアレだけど、間違えたっていいんだ。人間誰だって間違える。それを正す人がいればそれでいい」
フーガも言う。だから基本2人以上で事を運ぶのだ。しかしティターニアはまだ思い悩んでいるようだった。
「ではティターニア。税金を上げるか上げないかの話が出る時……と言うのは幾らでも状況がありますわね……まあここは単純に人工が少ない事を条件にしますわ。そういう時、どうします?」
「どうって分からな…」
「思考を放棄しないでくださいませ」
サイスはティターニアの言葉を遮っていう。
「えっと、増税……はしたくないから……人を増やすかな」
「具体的にはどうやって?」
「国外移住とかで呼べれば…でも天王星そこまで魅力ないしなー……やはり作るしか」
「それが「答え」ですわ。それを言えばいいのですわよ」
サイスが言うとティターニアは首を捻りながら
「でも反対意見が来たらどうするの?」
「困る必要はありませんわ。ただの意見ですもの。「そういう考え方もあるんだな」と噛み砕けば良いだけですわ。天王星人は反対意見に対して臆病過ぎだと思いますの。それでは議論になりませんわ。議論とは何か、を考えるべきですわね」
議論とは反対意見が出た時にどうまとめるか。ぶっちゃけ日本人もだけど、反対意見を出されると人格否定された並の反応する人が多いけど、それじゃ議論にならんのだよね。反対意見が出た時に、じゃあこうならどうか、いやいや、こうだろう。じゃあこうすれば?と話が発展していく感じ。
日本人って議論下手だよねって誰かが言ってた




