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手記

 平野にポツンと建物が建っている。少し大きめの木造の建物に倉庫らしきものがくっついている。

 周りには当然ながら建物はない。そのため朝が来ると建物の窓から朝日のすべてが惜しみなく入ってくる。当然木々が生い茂っているわけでもないため鳥たちが羽を休める場所を探して、建物の柵や窓枠によく止まり、歌を歌っている。


「午前7時、皆さーん!起きてくださーい!起床の時間ですよーっ!」


 各々の部屋から少しづつ人が出てくる。毎朝のルーティーンはこのモーニングコールを受け、それから中心にある机に向かい、部隊全員と顔を合わせる。軽く挨拶を交わし、司令部からの伝令があればそれを聞き、行動を開始する。


「おはよう。イア」

「おはよう!イア!」

「おはようございます。アリアさん!ガレンさん!今日も早いですね!」

「3人とも、おはよう。相変わらず早いね。」

「おはようございます!アーサーさん!」

「おはよう。アーサー。珈琲、飲む?」

「もらおうかな。」


 アリアとガレンがキッチンに向かい、それと入れ替えで次々に人が起きてくる。


「おはよう。フィリア」

「おはよ!アリア!んーいい匂い!ガレン!今日の朝ごはんは何?アリアも珈琲ありがと!」

「今日はトーストと卵焼きとベーコンだ!」

「おいしそう!楽しみだな!・・・あれ?隊長はまだ来てないの?」

「あんたの隊長はいつも通りまだ来てないぜ。また部屋で本でも読んでるんじゃないか?部屋に行って起こして来いよ」

「もーからかわないでよ!リオンの馬鹿!」

「おはよう、みんな集まってるかな。」

「あ!レイン隊長!おはよっ!」

「おはよう。フィリア」

「これでみんな集まりましたね!それでは司令部から伝令ですっ!昨夜、西の兵士養成学校があった町、アストリアが魔獣の大規模襲撃を受けたとの通信がありました。その後一切の通信が取れなくなったため、司令部より該当地域の偵察最悪の場合、資料や物資の回収任務を与えられました!任務は本日準備ができ次第開始とのことです!」

「ありがとう、イア。それじゃあ朝ごはんを食べ終えたら僕たち第315部隊は全員で作戦準備に取り掛かろう。11時に出発予定とする。各員装備の点検は念入りに行うようにね。それでは、ごはんにしよう。いただきます。」


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「それじゃ、行こうか」

 

 何もないどこまでも見渡せるような平野を2台の車が走っている。第315部隊が常駐している拠点は司令部がある超巨大要塞都市オルテンシアから見て北方にあり、目標であるアストリアはオルテンシアから見て西側やや北方にある。拠点から車両で5時間ほどの距離である。


「しっかし急だよなー。今まで西側で襲撃は起きてなかったし町一つを同行できるような魔獣も発見されてないし、群れも見られてなかったっていうのに。街の西側は海だからあの町が一番地形的にも位置関係的にも安全だって言われていたのに」


 イアがナビの上でタブレットをスワイプしながら言う


「司令部のデータベースに残っている襲撃記録を参照しても西側の都市が大規模な襲撃を受けるのは珍しいですね。」

「実際こうやって走ってても魔獣の影すら見ないからな!」


 これまで西側での襲撃はほとんどなく安全地域として扱われていたため養成学校が多く設置されている。また、海に面している場所でもあるため港町も多く、貿易拠点も多く置かれている。逆に東側は防衛拠点が数多く置かれており、城塞都市、要塞都市も多く設置されている。東側のほうが西側よりも魔獣の質も数も高いとされている。しかし、今回の襲撃でその常識は覆されようとしている。


 レインから無線が入る


「「そろそろアストリア付近のエリアに入る。総員警戒しながら慎重に進むよ。」」


 空気が周囲と明らかに違う

 街に近づけば近づくほど地面には獣の足跡とクレーターが増えていく。


「見えてきたわ。周囲には魔獣の反応はないわ。でも、注意して進みましょ。」


 進むたびに硝煙の臭いも濃くなっていく。


「ここからは歩いていく。準備しろ。」

「じゃ、俺は先に偵察とマッピングに行ってきますよっと」

「任せるよ、アーサー。何かあったら全力で戻ってこい。フィリア、リオン、ガレンは俺と一緒にアーサーが戻り次第街に侵入する。イアはいつも通り全体の情報支援、アリアはここで索敵を頼む。アーサーは戻ってからはアリアとここに残ってアリアの護衛を頼む。それまでは周囲を軽く探索する。」

「改めてみると外からでもわかるひどい荒れ具合だな!かなり大規模な襲撃だったらしい。」


 街の防壁は食い破られ所々崩れ落ちている。防衛用固定砲台は方針が焼き切れているため、ずっと射撃を続けていたことが見て取れる。生存者は望めない程に死体があらゆるところに転がっている。

 いまだに火が消え切っていないのか街の中からずっと煙が上がっている。


「戻ったぞ。中に魔獣らしきものは見えなかったが見たことない足跡?があった。生存者は...まぁ見ての通り望めそうにはない。どうする?隊長」

「みんな集まってくれ。これから俺たちは街に入る。アーサーはマップにアリアと一緒に記入を頼む。」


 レインをはじめとする一団は街の中へ入っていく。街の中の建物、そのことごとくは崩落している。木造の建築物はいまだ燃え続けている。煙で視界が悪く、硝煙の臭いが濃い。どこを見ても死体が目に入るのも相まって不気味さが増している。まるで地獄の様相である。

 街の中心部、そこに大きな建造物が街のシンボルのように建てられている。兵士宿舎である。その入り口の前に2人の死体があった。一人がもう片方に覆いかぶさっている形で焼け死んでいる。


「惨い...」

「惨いがこのまま進む。作戦目標を偵察から物資、資料の回収に移す。このまま養成学校を目指す。」

「...」

「ねぇレイン隊長...何...あれ...」


 フィリアが指をさす先の地面には車もすっぽり入るサイズの足跡が続いていた。アーサーが言っていた

見たことない足跡というのはこれのことだろう。だが気になるのは足跡だけではない。どこから出現したのか、だ。これだけの足跡を残すような魔獣が誰にも観測されずに移動するなんてありえるのだろうか。


「いったんこの足跡のことは無視する。この規模の魔獣と出くわしたところで撤退一択だ。それにぱっと見でも存在を確認できないから気にしても仕方がない。このまま学校を目指す。」

「「一応周囲に魔獣の反応はないわ。ただし今回の件はイレギュラー。それでこの規模だから何があってもおかしくないわ。注意して進んでね。」」


 一同は歩みを進める


「ねぇ木が凍ってるんだけど...これが噂の魔法ってやつ?」

「こっちは何か鋭いもので切られたような跡が付いた壁があるぞ!」

「学校が見えてきた。俺が一人で入るから周囲の警戒を頼む」


 コンクリートでできているだけあって学校は唯一まだ建物と呼べるだけの体裁を保っていた。木でできた床は灰になったり穴が開いたりしている。長い廊下を割れた窓ガラスの光が太陽光が乱反射している。

 廊下を置くまで進み職員室に入る。全員慌てて逃げたのだろうか。書類が散乱しているだけで死体はおろか血痕の一つもない。まるで時間が止まっているかのように思えた。


「なんだこれは?」


 一番奥の机の上に手帳が置いてあった。

 (4月1日新入生をたくさん迎えた。彼らは兵士に志願しているが私一個人の願いとしては誰一人として死んでほしくはないのだ。だから徹底的に鍛え上げる。どんな状況でも生き残ることができるように。)


 誰かの日記だろうか。

 最終ページを探す


(8月8日私はここで死ぬだろう。大規模な魔獣の群れの襲撃を受けている。どうせ逃げても逃げられないのは”ヤツ”を見ればすぐにわかった。なのでここに記録を残し、あとに託すことにした。今まで聞いたことも見たことのない超大型の魔獣だ。それとその横に人型らしき影もあった。人型の方は魔獣を観察するだけで何もしていないように見受けられた。問題は超大型魔獣のほうだ。固定砲台は効果があるようだが人間を捕食した直後に回復していた。頭は8つあり、それぞれが別の魔法を扱って攻撃をしていた。)


「ありがとう。この情報は必ず本部まで届けて役立てて見せます。だからどうか安らかに。」


 祈り終えた後レインは書類と手記を持ってこの場を後にした。

Chips

統合支援システムAI:イア

315部隊専用モデルであり、明るく元気な女の子のアバターを持つ超高性能AI。

戦闘時は索敵をアシストし、戦況整理等を行い端末を介して315部隊を支援する。平時は司令部からの伝達事項を伝えたり、話し相手になったりしてくれる。

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