70話 新人指導
「お前ら、時間使わせて悪かったな。これで酒でも飲んでくれ。こいつらは今から俺が見張るよ。絶対1週間ギルドには入れさせないから心配するな」
入り口付近で見張りをしているごつい冒険者2人に銀貨を2枚ずつ渡して礼を言うと、二人とも少しだけ嬉しそうな顔に変わったがすぐに顔を引き締めた。まあ、こいつらに見張っとくように指示した奴がいるよな。
「ギワン!それでいいか?」
多分見張りと俺が何やら話をしているのが気になって出てきたんだろうギワンに確認する。
「ああ、いいぜ。ただ、期限内にこいつらがギルドに入って来たら二度とここには入らせねえからな」
「ああ、分かった。お前らもいいな?」
先程から俺の方を不安そうに見てくる3人に確認すると、少し考えてから頷いたので、ギワンも見張りもギルドに戻っていった。
「あ、あの、ギンさん。俺達・・・」
ギワン達がいなくなるとすぐに不安そうな表情の3人の代表が俺に話しかけてきた。注意した時も思ったが、かなり痩せている。スラム出身って事だから今まで満足に飯も食べてなかっただろう所に今回の一件だ。
「ああ、事情は聞いている。取り合えずついてこい。聞いていたと思うけど今日から1週間絶対にギルドに入るなよ」
こいつらの見た目は俺が気になって仕方ないので、事情を聴くのは後回しにして先に3人を飯屋に連れて行き、定食を4人前頼む。
「ほら、俺の奢りだから遠慮なく食え」
残すなよって注意する必要がないぐらい、俺が言った途端3人は夢中で食べ始める。やっぱり腹減ってたんだな。夢中で食べている途中で3人とも泣き始めたからかなり驚いてしまった。泣いた理由はこんな美味いご飯を食べたのは初めてで感動したからだそうだ。スラムだとその日の食事もまともにとれないらしく、パン一つで殺し合いになる事も珍しくないそうだ。・・・・何それめっちゃ物騒なんだけど・・・
「ギンさん、ご飯、ありがとうございます。あと、この間は済みませんでした」
この3人のリーダー格のこげ茶色の髪をしたまあまあイケメンのトマスがお礼を言うと、残りのディーとベースも頭を下げてお礼を言ってくる。このオレンジ色の髪のディーって奴が3人の中で一番背が高く、暗い赤い髪をして3人の中で一番背の低いのがベースって奴で、3人とも体形はガリガリで顔も同じようにやつれているので身長と髪の色で区別するのが分かり易い。で、その3人から話を聞くと、こいつらは冒険者になったばかりでこの間の薬草採取が初めての依頼だったらしい。ルールについては知らないと言う事だったので、教えてやるとどうして自分達がギルド立入禁止になっていたかようやく理解したみたいだった。
「さっきも言ったけど、お前ら今日から1週間絶対ギルドに入るなよ。金については心配するな、依頼達成すれば俺がその分の報酬は出してやる。で、ギルドに入れるようになったら返してくれればいい。それでお前ら武器は何だ?見た所持ってないみたいだけど?」
見た所3人とも武器どころか防具もカバンも持っていない、ボロボロの服を着ているだけで手ぶらだ。
「金がないので、その辺に落ちてる棒で最初は何とかなると思ってたんですけど・・・」
・・・確かに新人クエストはそれで何とかなるけど、Fランクになったら厳しくなると思う。まあ、その時考えればいいか。
「それで何で手ぶらなんだ?あの時採取していた薬草はどうした?」
「あれは道具屋に売りました。そのお金で飯食ったら昨日お金が底をつきました」
やっぱりこいつら無一文か。そうすると、すぐにでも依頼を受けたい所だけど、今日はもう日が暮れるから無理だな。そうすると、飯は食ったけどまだまだこれからが不安なこいつらを安心させる為に、今後の予定を立ててやるか。
「新人クエストの板を見せてくれ。明日からの予定を立てる」
見せてもらった新人クエストはドアールとほとんど変わらなかった。「ドアールの水の採取」と「角兎の肉の納品」が「北東の泉の水汲み」と「海這虫の討伐」に変わってるだけだった。「海這虫」はでかいフナ虫みたいな奴で海岸の岩場にかなりいて、討伐の証は触覚でいいと近くにいた冒険者にビールを奢ったら教えてもらった。
「よし、明日は大鼠と虫の討伐に行くからな。今日は帰って寝ろ。明日7の鐘に俺の泊まってる『流水の宿』って分かるか?そこに集合な」
カイル達おススメだけあって都出身のトマス達も当然知っているみたいで頷いてくれたのだが、食堂を出たら何故かさっきから俺の後ろをついて歩いてくる。一応場所を間違えてないか確認でもするのかなと思いながら、宿に到着したので、
「ほら、ここな。明日はここに7の鐘な。・・・・って何してんだ?ちゃんと家帰って寝ろよ」
宿の場所を確認した3人は俺にお礼を言うとすぐに近くの細い路地に座り込んだので、注意する。
「家なんて無いッス。いつもこういう細い路地で寝てるので、今日はここで寝るッス。ここなら明日ギンのアニキを待たせる事はないから丁度いいッス」
丁度よくねえよ。しかもアニキってなんだよ、お前らみたいな弟持ったつもりはねえよ。ベースの言葉に頭を抱える俺。まさか家がないとは考えてなかった。こいつらどんだけ厳しい環境で生きてきたんだ。
「はあ~。ちょっと待ってろ」
3人にそこで待つように言ってから宿屋の受付に空き部屋を確認し、俺の個室と3人部屋を一つ押さえる。
「お前ら入って来い。個室は人数分空いてないって事で3人部屋で悪いが、今日はここで寝ろ。俺の部屋はあそこだけど、基本俺は寝たら時間まで絶対に起きないから用があっても俺が起きてくるまで待つように」
俺は個室で『自室』に入って寝るので、用があって呼びに来られても困るので注意しておく。ちゃんと聞いているか分からないけど一応頷く3人をそのまま部屋に押し込んでから、俺も部屋に戻り寝た。
◇◇◇
・・・あいつら遅いな。
翌朝7の鐘に受付で3人を待っているが、降りてこない。宿屋の親父に確認したが、まだ部屋にいる事は確実なようなので、恐らく昨日は3人で夜更かしでもしたからまだ寝ているんだろう。師匠でさえ二日酔いでも約束の時間丁度ぐらいに来ていたのだ、師匠から言われた事はないが、時間はしっかり守らせないとあいつらの為にならない。そう思い、あいつらの部屋に行き扉をノックする。
「おい、起きろ。約束の時間過ぎてるぞ!」
すぐに中からドタバタ物音が聞こえると、寝起きの顔で寝ぐせをつけたトマスが扉を開けるなり腰を90度に曲げてでかい声で謝ってくる。
「すみません。寝坊してしまいました!申し訳ございません!」
なんか体育会系のノリだな。いや、そもそもこの時間でこんなでかい声はさすがに迷惑だ。すぐにトマスを押して俺も部屋に入ると、ディーもベースも腰を90度に曲げて頭を下げている。・・・こっちの世界じゃ謝る時はこんな感じなのか?体育会系ノリはあんまり好きじゃないんだけどな。
「お前ら、昨日遅くまで起きてたのか?冒険者なら時間はしっかり守らないと駄目だぞ。臨時でパーティ組んだ時、待ち合わせしたり、見張りの時間とかあるから、気をつけろよ」
「はい、すみませんでした。言い訳ですけど、ギンのアニキと別れた後すぐに寝たんです。けど、こんなフカフカのベッドで寝たのは初めてだし、周りを警戒する必要もなかったので熟睡してしまいました」
う~ん。こいつら一言一言が重い発言するんだよな。その度に俺がまだまだ甘いって思い知らされるんだよな。あとこのベッドはフカフカじゃないぞ板張りに薄く藁を敷いてその上にシーツ被せてるだけだからチクチクして寝づらいぞ。
「そ・・・そうか、まあ次からは気を付ければいい。それより準備を整えろ、そんな寝ぐせの頭だと一緒に行動してやらねえからな」
俺の言葉に慌てて身支度を整える3人だったが荷物も着替えもないので10分も待たずに完了した。準備が出来た所で下で朝食を頼み4人で食べ始める。この宿に泊まると鉄銭3枚で朝食に固いパンと薄味のスープ、サラダがついてくるのだ、俺は普段は頼まないけど、今日はこいつらがいるから頼んでみたが、やっぱり美味しくない。鉄銭3枚だからなあとか思っていると、3人はまたまた泣きながら朝食を食べ始める。何でもスラムでは朝起きたらすぐに薬草採取等でお金稼ぎをしてからでないとご飯が食べられないので、朝食なんて都市伝説だと思っていたそうだ。・・・・重いなあ。
朝食も食べ終わり、大鼠討伐の為4人で下水の入り口に向かい途中武器屋で木の棒盾セットを買って3人に渡す。
「これさえあれば他に装備がなくなっても冒険者として何とか生きていけるから必ず1セット以上は持っておけ。俺の師匠からの教えだ。俺は常に2セットは持つようにしてるけど、まあ、初めは1セットだけでいいだろ」
そうして下水の入り口に向かいながら簡単に大鼠の倒し方を口頭で説明するが、入口まで来た所で、俺はもう一つ買っておかないといけないものがあった事に気付く。
「しまった。鼻栓買ってくるの忘れてた。お前らちょっと待っててくれ、すぐに買って戻ってくるから」
「分かったッス。でもアニキ!少しぐらいなら奥に入って大鼠いたら倒していいッスか?練習ッス」
・・・・・うん?
「いや、臭いだろ?お前らの鼻栓買ってくるから臭いがしない所で待っててくれよ」
「ハハハハハ、アニキ、こんなの臭いうちに入らないッスよ。俺ら飯の為にゴミ捨て場に1日張り込む事とか普通にあるッス」
「ウッス!公衆トイレの裏とか人が来ないからよく寝れるッス」
ベースもディーも軽く言ってるけど、内容は重いぞ~。マジでスラムってヤバいな。
「だから、アニキ、俺らの事は気にしないでさっさと大鼠倒しに行きましょう」
そう言うトマスだが、こいつはこいつで木の棒盾セットをキラキラした目で見てるから、なんか怖いぞ。でも臭いが気にならないってならわざわざ鼻栓を買いに行く必要もないので、そのまま突入する。一応この間と別の入口から入ったが、やっぱり大掃除の後だからか、入り口近くに大鼠の姿はない。
かなり奥まで進んだ所にようやく1匹見つけたので、まずは俺が手本を見せてやる。新人だった俺でも出来た事だ、厳しいスラムで生き抜いてきたトマス達にとっては簡単だったみたいで、特に問題なく大鼠を討伐していく。ディーとベースは冷静だが、トマスは少し熱くなって無駄に追撃するのが気になるけど。
こうして順調に討伐して奥まで進んでいくと、かなりの大集団で大鼠がいた。多分この間の掃除で奥まで追い詰められたんだろう。これなら全員1週目分の素材は集まるだろうと考えていた所で、トマスが一人で大鼠の集団に突っ込んでいく。
「トマス!一人で行くな!って聞いてねえな。ディー!ベース!トマスのフォローだ!」
そう指示を出して俺も何かあった時にフォローできるよう、木の棒盾セットを構えてトマスに向かって行く。しかしその心配は杞憂だったようで、ディーとベースがうまくトマスをフォローしながら大鼠を倒している。そうして思った以上に時間がかからず大鼠を全て討伐でき、俺の貸したナイフでディーとベースが尻尾を切って後始末している間に俺はトマスに先ほどの反省点を説明する。
「トマス。何で一人で最初に突っ込んだ?ディーとベースがフォローしてくれなかったらお前は死んでたぞ。大鼠は変な病気持ってる事が多いから、一回でも齧られたら終わりだって説明したよな」
注意すると、途端に落ち込んだ表情になるトマス、ここでこういう顔出来るって事は悪かったと思ってるんだろうな。でもこの戦い方はいずれトマスが死んでしまう・・・もしかしたら無理してフォローしようとしたディーとベースのどっちかかもしれない。
「アニキ、トマスの突撃は仕方ないッス。俺らを守る為にこういう戦い方ばっかりした結果ッス」
「ウッス。トマスが突っ込んで注意を引き付けた所で、横から殴りかかるのが俺らのやり方ッス」
俺の注意が聞こえたのか尻尾を切ってるベースとディーからいつもの事だと言われる。そうすると、少し担当を考えないといけないな。俺の中では一番背の高いディーが盾役と考えていたけど、これならトマスが盾役の方がいいか。で、二人はアタッカーか。遠距離攻撃できる奴がいないけど全員が『投擲』スキル覚えれば大丈夫だろ。・・・俺が覚えさせる事になるけど出来るかな。
「そうか、それなら仕方がないけど、いきなり突っ込まないで、せめて二人に声を掛けて了承されてから突っ込むのと、少しは二人の動きを確認する!いいな!」
今までの戦い方に少し注意しただけだったのが良かったのがトマスは納得した様子で頷いてくれた。
2週目の討伐は後日、自分達でやらせる事にして、街に戻る事にしたのだが・・・
・・・またあるのか。
また隠し部屋を見つけてしまった。結構奥の方で見つけたので、もう一度ここまで来たくはない。そうするとトマス達を共犯にするかだが、こいつら口は堅いかな。
「アニキ、どうかしましたか?」
後ろを歩く俺が立ち止まった事に気付いたトマスが振り返りながら俺に声を掛けてくる。こうやってすぐ気付く所がリーダーっぽいから戦闘以外はトマス、戦闘中はディーかベースが指示するって方がいいのかもな。
「お前らって、口は堅いか?黙ってろって言われた事を誰にも話したりしないか?」
「ウッス。そんなのスラムでは生きてく為なら当たり前ッス」
「そうッスよ。スラムでは下手な事口にしたら殺されますからね。金払わなければ、基本聞かれても何も知らないって答えるのが普通ッス。」
・・・重いなあ~。でもまあそれなら後はこいつらの命の危険があるって説明したら黙っててくれるだろ。
「分かった。今から説明するけど、この壁、違和感があるから恐らくこの壁の向こうにも部屋がある。何があるか分からんけど調べてみるから警戒しておいてくれ。音で大鼠が来るかもしれないけど、その時は頼んだ」
そう言ってカバンからハンマーを取り出し、ガンガン壁に叩きつけていくと、すぐに隠し部屋が現れた。当然隠し部屋の存在を疑っていた3人はビックリするが、俺はそんな3人を無視して、中の確認を行う。特に罠などは無いがいつもの如く木箱が置かれているだけで、開けるとやっぱりワインが入っていた。100年前のチルラト産のワインが100本だった。何で毎回下水に保管しているのか謎だ。
「酒?ですか?」
俺が手に持つワインを見るとトマスが自信なさげに尋ねてくる。
「そうだな。多分100年前のチルラト産のワインだ。1本金貨2枚ぐらいだな、みんなで分けると1人25本ずつになるけど文句ないよな?」
「あるに決まってるでしょう。何で俺らが25本も貰えるんですか!」
俺の言葉にトマスが変な方向で怒りだす。きれいに4人で分けてるからそれを怒られる理由はないと思うんだけど。
「何で怒ってんだよ。これが一番文句がない分け方だろ。それとも他にもっといい分け方あるのか?」
「・・・いや・・・けどアニキがもっと多く貰っても俺達は文句はありません。むしろ俺達の取り分は1本でも十分過ぎます」
「それは無い。俺は後輩から巻き上げる様な事はしないって師匠と約束したからな。どう言われようと4人で等分する」
そう言っても納得した様子ではないトマス達。
「それなら、アニキが俺らの分預かって下さい。まず一人25本もワイン持ち歩けないですし、そのワイン売って大金手に入れても巻き上げられる未来しか見えないです」
そうか、こいつらなら奪われる可能性が高いな。かといって預かるといっても何か取り上げたみたいで嫌だから何かないかな・・・そうだ!
「それなら俺が預かるけど、代わりに俺の手持ちの装備とか渡すから装備しておいてくれ。もし俺がこのままワイン持ち逃げしたらその装備売れば少しは金になると思うからな」
そう言ってカバンからこの前の野盗から奪った装備品を取り出していく。3人はそれを見て目を輝かせるが、別にワイン25本売ればこれ以上の装備が手に入るんだけどな。まあ、新人がそんな良い物装備しててもそれはそれで狙われるか。
「取り合えず服は3着は持ってろ、それで今着てるボロボロの服は捨てろよ。あとはカバンと財布を各自1つは持つ事。装備についてはあんまり良い物選ぶと狙われるからな自分のランクに見合った物を装備しろ」
しばらく各自で好きなように装備を選ばせると、3人ともまあまあ新人冒険者らしくなった。後は各自に銀貨を2枚と干し肉なんかの非常食、中級、下級ポーションも持たせる。うん、これで持ち物も含めて新人にしては少しいいぐらいに見えるけど、目立つって程でもないだろう。火打石とか鍋なんかは後で買いに行かせればいいか。
次の目的地の海岸に歩いていく途中3人は自分や仲間の格好を見せ合い、褒め合ってすごく楽しそうだった。
それから『海這虫の討伐』してから宿に戻った。そうして1週間は、こいつらの新人クエストをこなして過ごしていたが、こいつらゴブリンだろうが躊躇う事無く殺していたので、一度確認してみたが、何度か人を殺した事があるらしいからドン引きだ。ただ、正当防衛だったり、もう助からない仲間へのトドメだったりと一応理解は出来る。出来るがやっぱりスラムの酷さに改めて考えさせられてしまう。
そうして3人とクエストをこなし、1週間過ぎたので、3人を引き連れてギルドに向かう。ギルドに入ると、またいつもの奴等か良く分からないが野次が飛んでくる。
「おお!『採取野郎』じゃねえか?生きてたのか?」、「おい、『採取野郎』がパーティ組んでるぞ!・・アハハハ!あいつらルール破りの新人だ!」、「ガハハハッ!情けねえ。弱いからって新人に頼ってるのかよ」
相変わらずこの時間のギルドはこういう奴等が多いな。ドアールでもそうだったので呆れてしまう。俺の時は実力者の師匠達の弟子って事であからさまに言ってくる奴はいなかったけど、師匠達がいない所では言われていた事を思い出す。
そしてお前らも殺気を出すな。ギルドから目を付けられるぞ。今にも野次ってる奴等に飛び掛かっていきそうな3人の前に手を出して抑える。ここでトマス達が我慢できたのもこういう事を言われると思ったので前もって3人には注意していたからだ。そして俺の指示でDまで採取依頼しか受けないトマス達にも当然この野次が向く事は言っている。
取り合えず今にも飛び掛かっていきそうな3人を腕に抱えて受付に向かう。こいつらもこの1週間でかなり俺に懐いてくれた。やっぱり最初にワイン見つけた時に等分した事で大きく信頼してもらったらしい。あとはこいつらの腕を見る時に訓練でコテンパンにした事もそうだろう。
「よ!久しぶりだな。こいつらの相手を頼む」
「久しぶり!本当に1週間この子達の面倒みてたの?ギンはお人よしだなあ」
1週間ぶりに俺を見たリマは笑顔で対応してくれるが、この後が問題だ。トマス達は問題ないが、リマはちゃんと対応してくれるだろうか。リマと軽く話して俺は横にずれて、まずはトマスから対応させる。まあ3人とも依頼達成の受付は初めてなので、無駄話する事なく、素材を渡して、リマがそれを事務的に対応している。そして3人とも報酬を受け取った所でリマから小声で話しかけられる。
「ねえ、この子達何で水以外終わってるの?早くない?」
・・・うん。早いかどうかは分からないがこいつら結構優秀だった。3人とも俺の指示通り動いて文句を言って来ない。それだけだと考える事を放棄しそうなので、師匠と同じ様に何でそうするのかを教えて、次からは自分達で考えて行動させている。そうして本日のノルマを達成して、門が閉まるまで時間があると、下水に行って大鼠狩ってきたり、採取してきたりと中々自分達でブラックな行動をしていた。まあリマの言う通り水の採取だけはギルドの入れ物取りに来ないといけないので出来なかったのだが・・今日から解禁そして1週目完了だ。
その後3人についていき特に問題なく依頼を終わらせた。これで明日から新人クエスト2周目に突入するので、今日は飯を奢ってやった。明日からは俺も自分のクエスト受けるから一緒についていかない事、ルールを破らない事等、何度も注意してから宿に戻った。まあトマス達も同じ宿なんだけど。




