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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
4章 水都のEランク冒険者
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60話 水都への道中

「暇だ。俺も歩いていいか?」

「駄目だって言ってんだろ!客なら大人しく馬車に乗ってろ!」


馬車に揺られながら何度目になるか分からない会話を護衛のカイルとする。まさか馬車での移動がここまで暇だとは思わなかった。やっぱり一人で向かった方が良かったな。最初は景色でも眺めてたが、日本と違い街から出ると建物なんて何もない、延々と続く畑か森、草原しかないので、すぐに飽きてしまった。しかもまだ午前中だし、眠くもないので本当にやる事がない。馬車は20人乗りで途中立ち寄る村や町で人が更に乗ってくるらしいが、出発したばかりの今その半分の10人が馬車に乗っている。他の乗客がどんな暇潰ししているか確認すると、商人風の男達は書類を眺めている。普通の村人っぽい奴は人が少ないのを良い事に空いた席で横になって寝ている。連れがいる奴等は連れと話をしているって所で、あんまり参考にならなかった。ただ、俺の前に座っている母娘?には興味が引かれた。母親と思われる女性は見た目がかなり若く多分20歳ぐらいだろう、そして隣に座る娘は5歳ぐらいだろうか?そうすると母親は15歳ぐらいで娘を生んだ事になる、早いと思ったが、そう言えばこっちは15歳で成人になるんだから普通か。かなり疲れているように見える母親がさっきから娘に本を読んでいるのだが、その本の内容が『建国王』の話だったのでかなり興味を引かれた。まあ、気になったのは『建国王』ってよりもその話に出てくる『皇帝』の方なんだけど、さすがに知らない人ましてや母娘に話しかける勇気はない。葡萄を口に放り込みながら、何かいい暇つぶしはないかなあと考えこんでいると、前の座席に座っている女の子が俺の方をガン見していた。


なんだ?何かした?母親はウトウトしているから俺に用があるわけじゃないよな。と思っていると、


ジュルリ


よだれを啜る音が女の子から聞こえてきてようやく理解した。俺の食ってる葡萄が欲しいのか。


「食べるか?」


カバンから葡萄を一房取り出して、女の子に聞くと、嬉しそうに俺の座席に移動してきた。移動してきたはいいが、すぐにその笑顔が曇り俺から葡萄を受け取る様子がない。


「どうした?葡萄嫌いか?」


俺の問いに女の子はフルフル首を振って否定する。


「お金持ってないから買えない」


おお、こんな小さい子がこんな事考えるなんて、母親の教育がしっかりしているんだろうか。って事は俺がここでタダで葡萄あげるのは良くないかもしれない。それなら、


「葡萄あげる代わりに、さっき読んでた本を見せてくれたらお金いらないぞ」


そう言うと喜んで本を持って来てくれたので、俺も葡萄を渡すと隣でパクパク食べ始める。その間に俺も本を読んでいく。相変わらず日本語以外の言語だが俺には読める。そうして読み始めると女の子が葡萄を食べ終わるまでには読み終わるぐらいの短い本だった。


内容をまとめると、建国王達が国を興す以前は更に小さい国同士で争いをしていて、その中の滅亡寸前の国に『皇帝』、『建国王』、『建国王妃』、『女神』、『水流王』と現代で英雄と呼ばれるような人物達が台頭してきて、瞬く間にその国は周辺国家を飲みこみ大きくなっていったそうだ。ただ世界を半分程支配下に置いた所で『皇帝』以外の4人は支配した国の人々の扱いが酷すぎると国王や『皇帝』と喧嘩して出ていったらしい。その4人が国から出て行った直後に『皇帝』が国王を殺害し、自らを『皇帝』、国を『帝国』と名乗り世界を侵略していった。そうして世界統一寸前の所で4人とその仲間達が『皇帝』の前に立ち塞がり、『皇帝』を倒して国を興しためでたしめでたしって話。


この世界では『皇帝』=悪の図式が成り立っているが、歴史は勝者が作っていくものだ。だからもしかしたら本当は『皇帝』が良い奴で『建国王』達が悪者だった可能性もあるんじゃないかとも考えてみる。まあ、そんなどうでもいい考察よりも本の中の最後の戦いの内容が非常に気になった。『皇帝』の『影魔法』に『建国王』達全員が捕縛されて絶対絶命のピンチ!その時『建国王』がヤケクソで放った『光』で影の拘束が解かれて、そこから『光』を連発して『影魔法』を抑え込み見事『皇帝』を討ち取るって所だ。・・・・・・・何だよおおおおおおおお。『影魔法』が『光』に弱いってこんなお子様向けの本にも書いてるじゃねえか。『皇帝』の奴、何でバレないように工夫しなかったんだよおおおお。『建国王』達も弱点後世に伝えてんじゃねえよおお・・・ふう・・・落ち着け、まだ慌てる時間じゃない。そもそも俺が『影魔法』使えるって知ってんのは、今はエレナとカイルとギルマスだけか。他の奴にはバレてないってのはかなりのアドバンテージになるからホントに最後の手段にしよう。そんで使う時は一瞬で全身捕縛か首を斬り落とせば何とかなるか?


「お兄ちゃん?どうしたの?」


本を読み終わって考えていると、葡萄を食べ終わった女の子が話しかけてきた。


「いやあ、『皇帝』の『影魔法』強いなあって思ってな。他にも使えた人いるのかなって考えてた」

「うんとね。『影魔法』使えたのは盗賊の『大頭領』と悪い『教祖』ってのがいるよ」


おおう。聞いただけで悪者感半端ねえ。『影魔法』使って正しい事した奴いねえのか。いやもしかしたらこの二人のどっちかがワンチャン良い奴かもしれない


「『大頭領』ってどんな人?」

「えっとお。いろんな国で盗賊やってて、最後は洞窟に閉じ込めて、ずっと『光』を使い続けたらお腹空いて死んじゃった」


・・・よく分からんが、洞窟に閉じ込めて餓死させたのか?色んな国で盗賊やってたって時点でアウトだな。こいつは悪い奴だ。


「じゃあ、『教祖』ってのは?」

「たしか、『皇帝』を生き返らせようとして、いっぱい人を殺したけど、最後『影魔法』使えなくなったからやつけられた」


・・・?『影魔法』使えなくなったってどういう意味だろ。マホトーンみたいなスキルあんのかな?そしてこいつも人をいっぱい殺して『皇帝』を生き返らせようって時点でアウトだ。どこのカルト教団だ、こいつも悪者だ・・・・良い奴がいねええええええ。何なん俺の先輩たち悪い奴しかいねえ・・・いや『皇帝』が悪い奴かは確定できないけど。これで火の国が俺を容赦なく殺そうとしたか少しは分かった、けど許してはやらねえけどな。





「・・・アン!アン!・・ああ、良かった。そこにいたのね。すみません。うちの子が」


ウトウトしていた母親が娘が隣にいない事に気付いて慌てるが、すぐに後ろにいると気付くと俺に謝ってきた。


「いえ、気にしないで下さい。こっちもかなり暇が潰せて助かりましたから」

「???」


何でお礼を言われるかわかんないよな。


「ママ、お兄ちゃんに葡萄貰った!」


女の子はそう言って食べ終わった葡萄の残った所を母親に見せる。


「え?・・・何で?・・・・いえ、有難うございます」


お礼を言ってくるがその目は若干警戒している。それはまあ寝てたら知らない男が娘に葡萄を食べさせたって知ったら何でか気になるよな。


「いえ、こちらもこれを読ませてもらいましたから気にしないで下さい」


そう言って借りていた本を母親に返す。


「お兄ちゃん、まだ葡萄食べたい」

「こら、アン!・・・すみません。気にしないで下さい」

「ママが色々お話してくれる!この本以外にもママはいっぱい色んな事知ってる!」


それはかなり魅力的な提案だ。ドアールの街にいた時は冒険者に慣れるのが精一杯でこの世界の事聞く余裕・・・あったけど、楽しくて聞くの忘れてたな。まあこれから4日間でそれだけでも暇潰しになりそうだ。


「それはいい提案だ。だけどママがOKしてくれるかな?」

「ママァ・・・」

「・・・えっと、闇の国の事なら少しは分かりますけど、他は一般的な事しか知らないですよ?」

「俺は世間知らずなんで十分です。それでいいですか?」


母親から了解されたので、女の子に葡萄を渡すと、すぐに美味しそうに食べ始める。軽く自己紹介をして母親はマリーナさん、娘はアンと教えて貰った。そうして話を聞こうとした所で、馬車が停止した。


「昼なので各自食事をして下さい。鐘1つの時間で出発しますから気を付けて下さい」


御者から言われると、馬車から降りて各自火の準備を始める。俺はどうしようか・・・カイル達は二組に分かれて警戒組と火起こし組に分かれてんな。


「よお、終わったら少し火を借りていいか?」


いまだに火起こしの苦手な俺は『大狼の牙』に声を掛ける。って言ってもガウルとオールになんだけどな。他3人は周囲の警戒中だ。


「ああ?何でだよ、金とるぞ」

「火起こし苦手なんだよ。だから頼むよ」

「火起こし苦手って・・・お前もう新人じゃねえだろ。甘えんな」


やっぱり親しいって言ってもそこはベテラン冒険者甘えさせてくれない。それなら、


「じゃあ、このスープ一杯でどうだ?ドアールの街で買ってきたやつだ」

「それならいいけどよ。それ腐ってねえよな?」


警戒しながらも鍋に移し替えたスープを温めさせてくれる。温まったスープをガウルとオールに配って、俺も近くで飯を食い始める。俺の飯は暖かいスープに屋台で買った串焼き、焼き立てパンだ。


「さっきから良い匂いしてると思ったらお前らか、腹が減って仕方ねえぞ。俺らにも食わせろよ」


文句を言いながらこちらに近づいてくるカイル達。仕方がないのでカイル達にもスープを飲ませてやると、喜びの声をあげる。これでこいつらにも火を借りた義理は果たせたかと思い、落ち着いていると、


「ママ、お腹空いた」

「お金ないからお昼は我慢するって約束だったでしょ。それにさっき葡萄食べてたんだから我慢しなさい」


どうにも気になって仕方ない母娘の会話が聞こえるので、アンに手を振ってこちらに呼ぶ。こちらに来るなり、


「お兄ちゃん、お腹が空いた」

「こら、アン失礼でしょ。・・・すみません。気にしないで下さい」


なんかさっきと同じ光景を見た気がする。それよりも、


「一緒にどうです?この後色々教えて貰える約束でしたから、それの報酬先払いって事で。それにお腹空いてイライラされても困りますので」


言いながら手早くスープを二人分温め出すと、辺りに美味そうな臭いがしてくる。母娘が息をのむ音が聞こえる、更に炊き立てのパンを取り出して手渡すと、アンはすぐにパンに齧りついて食べ始める。マリーナさんも何度かパンと俺の顔を見比べた後、観念したのかパンを食べ始める。


「本当にありがとうございます。情けない話ですが、手持ちがギリギリで移動中のお昼ご飯は我慢するつもりだったので、本当に助かりました」


あの後、俺が渡したスープと串焼きも食べ終わるとマリーナさんから改めてお礼を言われる。ただ、そんなにお金なくて都に行って大丈夫なのか心配になってくる。もしかしたら誰か知り合いがいるのかな?


「いえ、お代は後でしっかり話を聞かせてもらいますから。それよりも『水都』に何をしに?もしかして都にも詳しいですか?」


カイル達がおススメの宿とか教えてくれるって話だけど、すぐにカークスに向かうだろうし、少しでも知り合いというか相談に乗ってくれる人が欲しい。マリーナさん達が都で暮らすならその役を最初の方だけでもやってくれないかなと少し期待して聞いてみる。


「いえ、詳しくはないです。私達は闇の国の国境都市の実家に帰るつもりなのですが、お恥ずかしい話、そこまでお金がないので、取り合えず都まで出て少し働いてお金を稼いでからと考えています。ドアールの街よりは給料の良い仕事がありそうですから」


ちょっと待った。今、マリーナさん聞き捨てならない事を言ったぞ。闇の国の国境都市が実家?って事は知り合いが多い・・・いや、待て、


「えっと、闇の国の国境都市って他にもあります?」

「いえ、水の国との国境都市は『グレンツェ』だけですけど」


OK。って事はエステラさんもそこ出身って事だな。


「マリーナさんはそこが実家だって言いましたけど、知り合いは多いですか?」

「生まれも育ちもあの街ですから、幼馴染も一杯いますし、家が道具屋で小さい頃から店番とかやってますから、そこそこ多い方だとは思いますけど・・・・???」


何で俺がこんな事を聞くか分からないのか困惑した表情を浮かべるマリーナさん。だけど、ここまで俺の求める人材に出会えるとは運がいい。


「確保!」


隣に座るピエラとクリスタに指示を出すと、二人も俺の意図を理解してくれたのかマリーナさんに抱き着く。美女3人がくっ付いた姿は眼福ですな、って違う。


「きゃああああ!何するんですか!」

「こらああ!ママに何を「葡萄食べる?」・・食べる!」

「ほら、じゃあ、あっちで立ってる、でっかいお兄ちゃんにこれを渡しておいで、そしたら食べていいよ」


アンナに葡萄を3つ渡して見張りをしているガウルとオールに葡萄を届けるようにお願いすると、すぐに走っていった。これでよし。人払いを済ませて未だにピエラとクリスタから抱き着かれて少し怯えた表情のマリーナさんを見ていると、少し意地悪したくなってくる


「だ、駄目です。私には可愛い娘がいるので、いけません」


・・・そう言えば旦那さんはいないのかな?そこはあんまり触れちゃいけない所だな。ふざけるのはやめて真面目な話をするか。


「マリーナさん。俺から仕事を受ける気はありませんか?受けてくれるなら闇の国までの費用は俺が出しますし、更にカイル達Cランク冒険者が一緒について行ってくれるので道中危険はありませんよ」


カイル達にも葡萄を配りながらマリーナさんに仕事を依頼してみる。


「えっと、それはどんなお仕事なんでしょうか?私は給仕と、あと計算はできるので会計と店番ぐらいなら出来ますけど」

「いえ、お願いしたいのは人探しです。カイル達にも『グレンツェ』で1週間滞在してもらって、エステラさんって人の事について調べてもらうんですが、それのお手伝いですね。で、カイル達は1週間経つと『カークス』に向かうので、その時点で手がかりが無ければマリーナさんには引き続き探してもらいたいんですが」

「その『エステラ』って人は危険な人なんでしょうか?調べてると命を狙われたりとかは」


少し考えてからマリーナさんが質問してくる。質問内容は聞いてみると確かに気になるだろうことだ。子持ちなら尚更危険回避を考えてないといけないのかもしれない。


「その心配はねえな。エステラは普通の娼婦だったって言ってたし。あの腕なら裏の仕事とかはやってなかっただろ」


カイルの言う通り裏の仕事とかやってれば師匠がパーティに入れなかっただろうし、何よりあんな良い人が裏の仕事なんてやってるはずがない。


「エステラさんを知っている人が分かれば、後は俺がその人から話を聞きますし、もし危険を感じたらそれ以上は調べなくても大丈夫です。エステラさんの親しい人に遺品を渡したいだけなのでそこまで危険はないと思います。まあ返事は都に着くまででいいので、考えておいて下さい」


そうして再び馬車に揺られて本日の宿となる村に向かう。先程と違い道中マリーナさんに、この世界の事について色々教えてもらったので暇ではなかった。そして話の内容も中々興味深いものだった。


まずここ水の国は『建国王』の仲間の『水流王』が興した国で、名前の通り『水流王』は水魔法の使い手で水が豊富なこの土地を選んだらしい。


次に隣のクソムカつく国は『建国王』達が国を興してその国のトップに『皇帝』に殺された国王のかなり遠い親戚を据えたらしい。何でそんな事したか分からないけど、『帝国』の不穏分子を1ヶ所に集めておきたかったとか言われている。


次に闇の国、こちらは『建国王妃』が興した国、別に日が昇らずずっと暗い国という訳ではなく『建国王』達が国の名前を魔法の属性にしたので、たまたまそうなったというだけらしい。この国は代々女王が統治している。


そしてもう一つ代々女王が統治しているのが土の国でこちらは砂漠が多い事から別名砂の国とも言われている。この国はなんとびっくり『建国王』達の奴隷だった女性が興した国らしい。奴隷と言っても国を興す頃には『建国王』と結婚していたので、超玉の輿として女性の憧れとなっている。そして奴隷だった頃の名残でこの国の女王は必ず奴隷紋を入れるのが習わしだそうだ。


次は風の国、この国は『建国王』達の御用商人が興した国なので、商業が盛んな国らしい。初代国王が商人に有利な法律ばかり整えたので、この国は商業ギルドの本部が置かれていてその立場はかなり強い。逆に言えば冒険者ギルドの立場はかなり弱い。そして何とこの国は爵位も金で買えるらしい、いらないけど。


次が光の教国で、ここは『女神』が興した国で、女神教の総本山でもある。この国を治めるのは女神教のトップ『教皇』とその下にいる9人の『大司教』だそうだ。そしてエレナから聞いた通り、女神教の神官は『回復魔法』を使えるので、各国に派遣している。光の教国を怒らせれば神官の派遣人数が減ったり派遣自体が取りやめになるらしいので、他の国は頭が上がらない。


そんな中唯一光の教国というか各国に強気で行けるが『建国王』の興したサイ国らしい。何で残ってる『影』を国の名前にしなかったかというと、『皇帝』が使ってたから縁起が悪いという理由だ。ちくしょう、相変わらず『影』嫌われてんな。この『サイ国』世界の盟主国で兵力も金も他の国より段違いで持っているらしく。女神教への寄付もとんでもないぐらいしているので教国も頭が上がらない。


そして『サイ国』と『砂の国』の間には大森林が広がっていて、その中に獣人とエルフの国があるが、現在この国と交流できるのは『砂の国』だけとなっている。理由は昔から容姿の優れたエルフと力の強い獣人は奴隷目的で攫われる事が多く、『建国王』達が禁止にしてもエルフ達の奴隷化は収まらなかったので、大森林で保護し、許可なく大森林に入って来た人族は問答無用で殺してもいいとまで決めたそうだ。ただ、交流が無くなるのは困るので当時同じ奴隷で、かつ『建国王』の嫁のエルフと仲の良かった砂の国の初代女王とで交流を持たせるようにしたのが現在まで続いている。


獣人の国は理由は良く分からないが最近『砂の国』との交流も閉ざしたので、この国の情報はエルフの国からしか入ってこない。この獣人の国も『建国王』達の奴隷だった獣人が興した国だそうだ。


そして更に驚く事に『エルフの国』を興した『建国王』の嫁のエルフいまだに生きているらしい。ただ、ここ200年人族の前に姿を見せた事はなく、エルフからの情報だけとなっている。実際最後に姿を見せた時もよぼよぼのお婆さんだったので既に死んでいるのでは?と疑われている。


最後に『ドワーフの国』こちらは『サイ国』と『闇の国』との間の山脈にある。ドワーフは昔から人族と暮らしていたので、獣人やエルフのように迫害されていない。基本的に国から離れたドワーフは他の街で鍛冶師をしている。ドアールの街にも何人かいた、さすがに冒険者のドワーフはいなかったけど。


そうして話をしていると、本日の宿に着いた。最初は暇すぎてどうしようかと思ったけど、色々話が聞けて暇が潰せて良かった。あとはマリーナさんが仕事を受けてくれると助かるんだけどな。とか思っていると、食後マリーナさんの部屋まで呼び出された。一緒にカイルも呼ばれたので、これは大丈夫そうだと思っていると、


「お昼の仕事の話ですが、受けようと思います。遺品を渡したいだけなら危険ではなさそうなので・・・父の伝手も頼ってみようと考えていますが、まずは色々情報を教えて下さい」


よし、受けて貰えた。これで少しはエステラさんの件は明るくなってきたな。後はターニャの弟だけだな。そんな事を考えながらマリーナさんにエステラさんの情報を教えるとマリーナさんは紙にメモしていくので、真面目に探してくれそうだ。


「この人がエステラさんですね。で、この人がターニャリカさん、後は『カークスの底』ってパーティですね。分かりました。」


スマホの写真を確認しながら髪の色や特徴等をどんどんメモしていく。エステラさんの事だけ頼もうと思ったけど、話の流れでターニャや師匠達『カークスの底』についても調べて貰える事になった。


「それでは、最初の約束通りカイル達が『グレンツェ』に1週間滞在してる時の情報収集のお手伝いと、それ以降はみんなの情報収集をお願いします。多分俺は1年後ぐらいに『グレンツェ』に行くので、その時に報告を下さい。ただ、ターニャについては貴族ですから無理に調べなくてもいいです。後危険を感じたら深追いしないですぐに調査を打ち切って下さい」


俺の言葉にしっかり頷いてくれるので多分危ない事はしないだろう。


「そういや、カイル達はカークスに荷物届けてくれた後ってどうすんだ?ドアールの街に帰るのか?カークスに残るのか?」

「今の所は帰るつもりだ。帰りはマリーナに会って情報を貰ってから都でお前に報告する予定だ。だけど予定だからな。折角、依頼でカークスまで行くんだ、少し闇の国で稼いでくるかもしれねえ。ギルマスにも数年離れるかもとは言ってきてある。ギンも2~3ヶ月経っても俺らが来なかったらそう思っとけ」

「分かった。それでカイルもマリーナさんも他に質問は?」

「都からはまた国境まで護衛依頼受けるつもりだけどよ。都だから人が多くて依頼受けれるか分かんねえんだよ。そん時は歩いて行こうと思ってるけど、マリーナはどうだ?歩けるか?」

「私一人なら大丈夫ですが、アンがいるので厳しいです」


確かに小さい子だとまず歩けないな。かと言ってずっと抱っこして歩くとマリーナさんも疲れるよな。


「馬車とか借りれないのか?」

「借りるのだけで大金貨だ。しかも返しに来ないといけねえ、馬の世話もしないといけねえから、出来るなら借りたくねえ。まあ、チビはウチの子供好きに抱えさせればいいだろ。最悪向かう方向が同じ商人に少し金払ってマリーナとチビだけ乗せてもらうって方法もある」

「そうか、なら方法は任せる。マリーナさんもそれでいいですか?」

「は、はい。・・・ただ、その・・・乗せてもらうのに支払うお金があんまり無いので・・・すみません」


あれ?報酬の話まだしてなかったか。


「マリーナさんすみません、報酬の話がまだでしたね。報酬はこれでどうでしょう?」


俺は大金貨を1枚差し出す。


「だ!!だ!!だい、大金貨!!!」


驚きすぎて可笑しなリアクションのマリーナさんと俺を呆れた様子で見ているカイル。アンは他の『大狼の牙』メンバーが様子を見てくれているので今はいない。


「マリーナ。ギンの奴、冗談でも何でもないからな。俺らもカークスまで荷物運ぶだけで白金貨だぜ」

「・・・えっと。多すぎません?私は故郷までの費用だけだと思っていたんですけど」

「まあ、俺にはその情報がそれだけ大事って事なんですよ。どうですか?もっと欲しいなら上乗せしますけど」

「い、いえ結構です。これで十分っていうかこれでも多すぎです。もう少し減らして「報酬はこれ以下にはしません」・・・・う、・・・・はい」


助けを求めるようにカイルを向くが、そのカイルから首を振られるとようやく報酬に納得してくれたみたいで頷いてくれた。


「ただ、大金貨なんて怖くて持ち歩けません。細かいのにして下さい」


言われてみれば日本円で100万ぐらいか、そりゃ一般人なら持ち歩くのは怖いな。って事で金貨9枚と銀貨10枚に両替すると、金貨は布につつんで服の中にしまい、銀貨だけを財布に入れていた。この後はアンがもう寝る時間になったので、俺も自分の部屋から『自室』に戻り寝た。


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