53話 採取依頼と訓練
あれから1ヶ月ぐらいで依頼についての結果が出た。結果は俺は依頼を失敗しなかったが、成功もしなかったという事で落ち着いた。当然依頼達成のポイントはつかないという事でこっちとしては無駄な時間を過ごしたが、結局依頼人が見つからなかったので落とし所としてはこれが精一杯だとギルマスに言われたので、納得はした。だけど勝手に依頼受付のサインをしたポーラスがお咎め無しだったのは気にいらない。しかもあの野郎、俺が依頼人に確認したからサインしたと言い張ったのだ。依頼人が見つからない以上、嘘と断定出来る訳もないので、ギルマスから注意を受けるだけだった。
「そういう訳だ。ポーラスの野郎やっぱりムカつくな。まあミーサさんが都から帰ってきたから今後はミーサさんに受付してもらうよ」
「ホントに気をつけてよ。・・・やっぱり心配だからギンはもうそろそろパーティに入ったら?『鉄扇』から何度も誘われてるんでしょ?」
いつもの様に酒を飲みながらエレナに愚痴を聞いてもらっている。最近はこのパターンが多い。
「いや、俺はしばらくソロで行くよ。それに師匠達からDランクになればパーティに入れてやるって言って貰えたからな。他のパーティでDランクに上がるまで入れて貰ってDランクに上がったら師匠達のパーティに移籍するってのも何か悪い気がするからな」
「もう、そんな事誰でもやってる事なのに、何でそんなに律儀なのよ。お願いだから無理はしないでよ」
「分かってるって、ほら、もう時間らしいぞ。また今度な」
「・・・・・・」
膨れっ面でまだ何か言いたそうだが、時間が来たので我慢しているエレナを見送るのも最近珍しくはなくなっている。
いつも大体7の鐘以降にギルドに来るので、朝の依頼の争奪戦は一段落ついている時間に掲示板を眺めている。この時間では美味しい依頼はすでに無くなっているが、俺は採取依頼しか受けないし、Fランク依頼はかなりの数があるのでこの時間でも選べるぐらいの数はある。俺みたいな考えで動いているパーティも数は少ないがいるにはいるので、何となく顔馴染になって軽く情報交換するぐらいには仲良くなっている。
「よお、ギン」
どの依頼を受けようか掲示板を眺めていると、後ろから声を掛けられる。振り向かなくても誰か分かるぐらいには仲が良くなった『鉄扇』のリーダーのウィートだ。こいつらも師匠の話を聞いて今では採取の依頼ばっかり受けているパーティの一つだ。
「あれ?お前ら帰ってくるの明日だと思ってたけどもう帰ってきたのか?」
さすがに同じランクの顔馴染のパーティがどんな依頼を受けたかはチェックしている。採取依頼だとそこからどのぐらいで依頼を終わらせて街に戻ってくるかも大体分かるようになってきた。討伐依頼を受けた場合はまださっぱり分からないけど。
「ああ、結構運よくミヤチの実が見つかってよ。昨日遅くに街に戻ってきたけど、疲れたから昨日はギルドに行かずに宿に直行したんだよ」
へへっって笑いながら話してくるウィートだが、後ろでサーリーが顔を赤くしてモジモジしてる。昨日はお楽しみだったみたいだ。爆発しろ。
「じゃあ、これから納品なのか。お前ら今ポイントいくつなんだ?」
「今回の分で15になった。ギンは次はどんな依頼受けるんだ?良ければまた臨時で組まないか?お前がいると結構ポンポン見つかるし、魔物も先に見つけてくれるから楽だしな」
こいつらとは2回程臨時パーティを組んで採取依頼を受けた事もあり、その時に『探索』でポンポン見つけたから最近割と頻繁に誘われる。誘われると嬉しいんだが、人がいると夜に『自室』で寝れないから結構疲れるんだよな。冒険者なら野宿する事に文句言っちゃいけないんだけど。でもさすがに前回は断ったから今回は一緒に行くか。師匠達のパーティに入れて貰った時の予行練習だと思えば野宿も我慢できるからな。
「ああ、いいぞ、『毒岩茸』の採取依頼受けようと思ってたけどどうする?今から依頼を受けてから情報収集とか道具屋とかで必要な物買って明日出発のつもりだったけど」
「よし、二人ともそれでいいよな。って事で納品済ませたら依頼受けてくるわ。こっちも情報集めたり準備したりするから夜にギルドで飯食いながら打ち合わせしようぜ」
『鉄扇』連中と約束をしてから俺は受付に向かう。相手は当然ミーサさんだ。あれ以降ミーサさんかミーサさんが紹介してくれた人以外の窓口には行かない事に決めた。そういう人達の受付には当然長い列ができるが仕方ないだろう。反対にポーラスなんかは全く人が並んでいない。この辺はギルドで問題になっているが、俺が口を出す立場でもないのでどうなるか黙って見ている。
「じゃあ、ギンさん。『毒岩茸』の依頼受付完了しました。頑張って下さい。」
ミーサさんが笑顔で励ましてくれるので、俺の心も癒されていく。まあ、ミーサさんは俺が問題も起こさず順調にポイント貯めていくと自分の評価が上がるから嬉しがっているって事は分かっている。現にこの間昇格したって聞いたし。それでも俺を騙すわけでもなく、依頼が失敗しないように色々アドバイスしてくれるから感謝している。
そうしてミーサさんから情報を聞いてから道具屋を周り必要な道具を買い揃えていく。途中屋台で昼飯を済ませてからギルドに戻るとカイルから声を掛けられる。『尾無し』の後・・・いやBBQの後からあの時のメンバーからは結構声を掛けられる。特にカイルは俺の事が気に入ったのか俺を見かけると頻繁に声を掛けてくる。まあ内容はいつものように、
「おい、ギン。暇か?暇なら訓練しようぜ」
俺の生活魔法の使い方がタメになるのか、参考になるのか、それともこういう相手と戦う想定をしているのか、必ず訓練に誘われる。俺も強くなりたいから暇な時なら誘われたら必ず受けるようにしている。『カークスの底』、『大狼の牙』、たまに『赤盾』とも訓練してもらえる俺はそこそこ強くなっているみたいで、たまにFランクの奴と訓練するが俺が圧勝している。それで調子に乗っているとC、Dランクにボコボコにされて、上には上がいると思い知らされている。
「ふう、お疲れ。今日は少し『やべっ』って思わされたぞ。やっぱりお前成長速度おかしいぞ。まだ冒険者になってから半年も経ってないのに、何で俺らとそこそこやり合えてるんだよ」
「はぁ、はぁ。おつかれ~。お前らがスパルタだからだろ。何で毎回Fランク1人がCランクを交代で相手してんだよ、おかしくねえか?俺休憩無しなんだけど」
訓練が終わると同時に地面に倒れこんでカイル達に文句を言う。これも最近のパターンで何故か俺一人で『大狼の牙』を交代で相手して最後は俺がぶっ倒れて訓練終了となる。
「私達も訓練になるからいいの。生活魔法にこんな使い方があるって思わなかったし、ギンと訓練すると幅が広がるわ」
俺にフェイントを教えてくれるピエラから言われたら、流石に文句もいいづらい。それが分かっていてカイル達も俺への交渉とか宥めたりとかはピエラを前に出してくる。こっちはすっごいやりにくいが、タダでCランクから訓練してもらえるFランクなんて俺ぐらい・・・じゃねえな『鉄扇』もしてもらってる、あいつらはアドバイスって感じだけど。
「よ~し、いい汗かいたし、飯食いにいこうぜ。ギンの分は奢ってやるよ」
嬉しそうに俺に話しかけて肩を組んでくるカイルとそれを楽しそうに見ているクリスタとピエラ。その3人を微笑ましく眺めているガウルとオール。そうなんだよな。結局こいつらも話してみると良い奴等なんだよな。『赤盾』も『尾無し』戦に参加した他のパーティも話してみるとみんな良い奴等だった。
「えっと、隣いいですか?」
俺とカイル達が飯を食べながらさっきの訓練の反省会をしていると、ウィート達から遠慮がちに声を掛けられる。
「うん?おお、『鉄扇』か、いいぜ座れよ。お前ら最近調子良いらしいじゃねえか」
カイルの言葉でサーリーはピエラとクリスタに確保される。カールはガウルとオールに絡まれたので、必然的に俺とカイル、ウィートで話をする事になる。
「それで、最近どうなんだ?調子良いって聞いてるぜ」
ウィートが座るとカイルはさっきの話の続きを始める。
「ええ、そうですね。採取依頼ばっかりですから調子が良いっていうか失敗しないだけって感じですね。明日もギンと一緒に採取に行く約束してます」
「別にFランクなんて採取ばっかりしてればいいんだよ。それで遭遇した魔物に勝てそうなら戦う、負けそうなら逃げるってやってりゃ勝手に強くなってるからな。まあ戦わなくてもこの馬鹿みたいに訓練ばっかりしてても強くなるからな、Dに上がるまではそれでいい」
師匠と似たような事言うなあ。やっぱりランクが上がるとそう言う風な考えになるんだろうか。
「おっと、少し説教臭くなったか?悪いな。それでお前ら何の依頼受けたんだ?」
「『毒岩茸』の採取です。ギンと一緒に臨時のパーティで行くつもりです」
「おお、懐かしいな。分厚い革手袋と専用の分厚い袋、あと命綱だったか。場所は角兎の原っぱの奥の崖だったかな」
「そうだな、俺もミーサさんにそう聞いた。ウィートはどうだった?」
「俺も同じだ。ただ最近あの辺に灰狼が増えてるらしいから少し刺激袋を買っていこうかなって考えている」
俺の集めた情報以外にウィート達は別の情報を集めていた。これは無駄になるかもしれないが刺激袋を買ってから出発した方がいいだろう。買って無駄になるのはいいが、買わずにケガしたり最悪死んだりしたら元も子もないからな。
「分かった。明日刺激袋買ってから出発しよう。カイル、一人二袋持って行けば大丈夫だと思うか?」
「普通なら大丈夫って言いてえが、ギンは3,『鉄扇』も一人は3袋持って行った方がいいな。余っても腐るもんじゃねえし、それほど高くもないから先輩のアドバイスは素直に聞いとけ」
「わかった。カイルありがとうな。あと、飯ご馳走様。ウィート達は明日、7の鐘広場集合な。今夜楽しみ過ぎて遅れんなよ、遅れたら置いてくからな」
「な!・・・ば・・ばか!遅れないわよ。さっきしたばっかりだし」
「・・・・・・おい」
サーリーの自爆に俺が突っ込みを入れる。こいつらちゃんと準備してきたんだろうな。
「アハハハ『鉄扇』は元気でいいじゃねえか。まあギンに迷惑かけないように気をつけろよ」
「・・・カイル、うるさいって文句言われてるお前らが言うな。師匠がどうやって注意しようか困ってたぞ」
「へ?」
「ホントに」
「はわわわわ」
俺の言葉に今までサーリーを揶揄っていたピエラとクリスタも反応する。
「ああ、Cランクのお前らに誰も注意できねえからDランクに相談が言ってるんだと、師匠達が依頼から戻ってきたら怒られろ」
「マジか・・・」
「きゃああああ」
「はわわわわ」
驚くカイルに顔を真っ赤にする二人・・・サーリーも含めて顔真っ赤にしている女性3人と野郎を置いて宿に戻ろうとすると、
「ガハハハッ。ギン!よく言ってくれた!俺らも色んな奴等に注意されて困ってたんだよ。カイルなら別に遠慮しねえが、ピエラとクリスタになんて注意しようかオールとも相談してたんだけどよ、ギンがばっさり注意してくれて助かったわ。って事でお礼に『猫宿』奢ってやるから行くぞギン」
ガウルとオールの2人から肩を組まれて俺は『猫宿』に連行された。さすがに連荘で来たらエレナからすごい顔で睨まれた。これは次に指名した時また小言言われるなあ。
◇◇◇
「やっぱりギンがいると、依頼が簡単に終わるな。ホントお前の嗅覚?勘?ってすごいな」
今、俺達は『毒岩茸』の採取も終わり野営の準備を済ませ飯を食べていると、『鉄扇』連中が俺を褒めてくれる。
「いや、今回は別に俺関係ないだろ。情報通りの場所に『毒岩茸』あったんだから」
そう今回は別に俺の『探索』スキルは必要なかった。情報通りの崖に行けば普通に生えていたのでそれを協力して採取しただけだ。
「お前が斥候してくれたから魔物と遭遇しなかったじゃねえか。聞いた話だとここまで来るのに2~3回魔物と遭遇するらしいぞ。それをお前が警戒してくれたおかげでゼロ。帰りも遭遇しなけりゃ装備の手入れの必要もないし、3日間で丸っと銀貨5枚だぜ。ギン様様だな」
そこは反応があったら避けていったから、素直に礼を受け取っておこう。ウィートの言う通り、このまま魔物との戦闘がなければ3日間で銀貨5枚と中々いい稼ぎになる。ただまあ、こういう事言うとフラグが立つんだよな。
——————ピクッ
「どうしたの?ギン?」
一緒に見張りをしているサーリーが俺の動きに気付いて声を掛けてくる。『鉄扇』連中と組む時は見張りは俺とサーリーが組む事になっている、っていうか俺が決めた。ウィートとカールがサーリーと組むと甘い空気が流れてきて見張りとして信用できないからだ。
「サーリー。敵だ、二人を起こせ、向こうにも気付かれてる。数は4」
立ち上がってサーリーに指示するとすぐにウィートとカールを起こし戦闘態勢に入る。
「灰狼だ!ウィート下がれ。残りはいつも通り」
こっちに勢いよく走ってくる魔物を目にするとすぐに全員に指示を出す。『鉄扇』連中と組んでる時は何故か俺が指示だすんだよな。ウィートはリーダーとして気にしてないんだろうか。
俺の指示通り盾役のウィートを囲むように陣形を組む。盾役を守るなんておかしいとか言われそうだが、狼系の魔物はこれが正しい。
「こっち!・・・よし!仕留めた!」
狼と俺達の息遣いしか聞こえない俺の耳にサーリーの声が響く。今回はサーリーが当たりだったみたいだ。狼系の魔物は群れの中で一番下の奴が様子見を兼ねて最初にとびかかってくるので、その時にそいつを殺すのは常識だ。だから盾役のウィートを下がらせていたのだが、これ以降は前に出て貰う。
「よし、ウィート!前へ!カール、サーリー投げろ!」
盾役のウィートを前に出し、カールとサーリーに投げナイフを放つように指示しながら俺もナイフを放つ。『尾無し』戦の後、少し訓練したら『投擲』スキルを覚えたので、相手が動かない限り外れる事はない。ないのだが、俺とサーリーの投げたナイフは躱され、カールの投げたナイフは灰狼の片目に突き刺さった。さて、ここからどうなるか。ここまでは定石で、どの冒険者でも分かっている対応だ、分かっていても出来るかどうかは別だけど。ここから灰狼の群れのリーダーの頭が良ければ逃げていき、悪ければこのまま続行となるが今回俺達は刺激袋を持っている。俺の持っている刺激袋を狼に投げると、辺りに赤い粉が舞い刺激臭がすると、それを嫌った灰狼がジリジリ後退し森に消えて行った。
「よし、逃げていったな。ウィートとカールは休んでていいぞ。後は俺とサーリーでやっておく」
『探索』で狼が離れて行ったのを確認してから警戒を解き3人に指示を出す。
「もう、明日には街に戻れたのに遭遇するなんて最悪よ、あいつら少しは空気読んでもらいたわ」
討伐した1匹の灰狼をサーリーが解体しながらブツブツ文句を言っている。
「まあ、今回戦闘にならなかったからよかったじゃないか。サーリーも1撃で仕留めたから武器の修理する必要ないだろ。投げナイフも俺とサーリーの投げた分は回収したし、カールの投げナイフも鉄銭数枚、刺激袋も銅貨1枚だろ。素材売ればプラスになるんだからいいじゃないか」
「違うわよ。この血よ。折角きれいなまま街に戻れるって思ったのに血塗れよ。最悪。『洗浄』できれいになるって言っても血塗れになったから気分的に嫌なの。帰ったらすぐに体洗いたいわ」
サーリーのそんな愚痴を聞きながら再び見張りを続けるが、その後は何もなく、朝を迎えて、1日かけて街に戻った。
「えっと、またやるんですか?ホントはギルド職員がこんな事言うのは駄目なんですが、お金を捨ててるだけですよ」
依頼達成の処理も終わり、報酬を貰った俺が銀貨1枚を差し出すと、ミーサさんから確認される。ギルマスや師匠からも同じ事言われた気がするが、気にしない。
「大丈夫です、それに銀貨1枚で元Aランクに稽古つけてもらえるって考えればかなりお得だと思いません?っていうかそっちが主な目的です」
「まあギンさんがそれで納得してるなら良いんですけど、それでは訓練場でお待ち下さい。今日はギルドにいるのですぐに呼んできます」
「ハハハ、またかギン。こちらとしても机仕事ばっかりで嫌になるから、こうやって堂々と体を動かせるのは有難いんだが、ホントにいいのか?何度も聞いて申し訳ないが、一応な。私に変な気を使ってたりしないよな?」
訓練場でしばらく待つと動きやすい服装をしたギルマスが木剣片手に俺に近づいてくる。最近はピシッとした服よりこっちの格好でいる事が多いから、有難がっている事は多分ホントなんだろう。後ろには砂時計を持った監視役のミーサさんがついている。
「何でギルマスに気を使わないといけないんですか?俺は銀貨1枚以上の価値があると思っているからお願いしているだけです」
「ほら、二人とも話はそこまでにして下さい。いいですか?行きますよ。はじめ!」
俺とギルマスの会話に割り込んで開始の合図をして砂時計をひっくり返すミーサさん。そうして砂時計片手にギルドに戻っていく、時間になればいつもの様に呼びに来るだろう。
「よし、ではいつものようにいくぞ」
木剣を構えるギルマスに俺も手に持った木剣を当て、鍔迫り合いの形から始める。
「何度も言っているが、限界だと思ってからだ。そこから更に力をひねり出せ」
ギルマスが何度も聞いたアドバイスを口にしながらも木剣の圧力がどんどん高まっていく。鍔迫り合いをしている俺はどんどん圧し負け押し込まれていきながらもギルマスの言うように力を振り絞って押し返そうとする。
「ん?少し出来ているか?よ~し、ギン、もっとだ、もっと力を込めろ」
必死な表情の俺とは対称的に余裕の表情で俺に声を掛けるギルマス。もっとと言われてもこれが限界、これ以上力でない。
「よし、一度休憩だ」
「ぷは~。はぁはぁ。ホント『身体強化』ってチートスキルですね。こっちが死ぬほど力込めてるのに片手で押し込んでくるんですから」
「ハハハ、頼りすぎてもよくないが覚えると便利だぞ。ギンもそれが分かってるから俺に指導依頼してるんだろ?」
そう、『尾無し』戦の後ギルマスに言われてから、時々『身体強化』スキルの指導をしてもらっている。最初依頼した時は、かなり驚かれたが今ではギルマスも俺の指導が気分転換になるのか喜んでいると聞いている。それで指導についてだが、師匠やギルマスから言われた通り、指導を受けたと言ってもすぐに覚える事はない。むしろギルマスもどうやったら覚えさせる事ができるか分からないと言われた。それでどうするか二人で話合った結果、ギルマスが最初に『身体強化』を使ったのはオークと戦闘中に鍔迫り合いになり、そこで圧し負けそうになった所で使えるようになったそうだ。それならギルマスが最初に『身体強化』を使った場面を再現しようとなり毎回二人で鍔迫り合いをしている。そうして二人で30分程鍔迫り合いをした後は、ギルマスに稽古をつけてもらっている。
「ハハハ、また腕をあげたな、ギン。そこらのDランク並みに強いと思うぞ」
楽しそうに笑いながらも俺の攻撃を軽く躱したり受けたりしているので、その言葉に全く信ぴょう性がない。俺は『生活魔法』を使った本気の攻撃をしているのだが、全く当たらない、流石元Aランク。そうして俺の攻撃を躱しているだけだったギルマスがミーサさんの姿が見えると一転攻撃を開始するのも当たり前の事になってしまった。
「フハハハハ、どうしたギン。逃げてばっかりだと魔物は倒せないぞ」
嬉しそうに俺を攻撃してくるギルマス。逃げてばっかりなのは俺がギリギリ躱せるぐらいの攻撃をギルマスがしてくるから反撃する余裕がない。ギルマスもそれを分かっていて言ってるんだから性格が悪い。
「はい。終わりです。ギルマスはさっさと仕事に戻って下さい」
そうして必死にギルマスの攻撃を避けているとミーサさんから終わりの声を掛けられるのもいつもの事だ。
「むー。ミーサもう少しだけ頼む。今ギンが良い所なんだ」
何が?良い所ってギルマスが体がほぐれて良い感じになってきたって事だよね?俺をダシにして仕事から逃げないでくれ。
「駄目ですよ。仕事溜まってますから。『尾無し』倒してから気が抜けたのか知りませんが最近のギルマスは少したるんでますよ。ほら、さっさと仕事に戻る」
ギルマスの頼みを一蹴して仕事に戻らせるミーサさん。トボトボとギルドに向かうギルマスを見るとどっちが立場が上か分からない。




