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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
第3章 水の国境都市のFランク冒険者
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52話 深緑草の直依頼

本日2回目です

「おい!ギン!昨日何か楽しい事してたらしいじゃねえか?何で俺ら誘ってねえんだ?一緒に『尾無し』と戦った仲間だろ?」


いつものようにギルドに行くと、いきなり因縁を付けられた。エレナの言う通り『尾無し』戦に参加した冒険者だけでなくギルド職員も混じってるけど職員がこんな事しても良いんだろうか?


「な、な、何のことでしょう?」


さすがにDランク冒険者と元Cランク以上のギルド職員十数人から詰め寄られたら怖くて敬語で返してしまう。


「だから昨日、『カークスの底』、『大狼の牙』、『赤盾』で飲んでたんだろ?何で俺らも誘わねえんだよ」


「いや、違う、ちょっと待て、誤解だ。俺から誘ってない、元々師匠達と孤児院連中でする予定だったんだけど、あいつらが参加させろって言ってきたんだ。俺は悪くねえ」


「『鉄扇』とエレナ達はどう言い訳すんだ?」

「『鉄扇』は竜タンが不味かった時の処理要員として誘った。エレナは孤児院連中呼んだなら誘わないと多分俺が怒られるから、お付の子は知らん」


ホントの事を正直に話す。多分これが一番俺への被害が少ないと思います。


「ほら、余った竜タンあげるからこれで許してくれよ。あとは焼くだけだから」


そう言って竜タンを渡すとみんな落ち着いてくれたみたいだ。エレナが昨日忠告してくれた通りになったな。


気を取り直して依頼を確認しにいく。今日はどんな依頼を受けようか、光苔はしばらくいいか。そうしてしばらく掲示板を眺めた後、いくつかある依頼の中で『深緑草10個納品』の依頼を受けてみようと思い、受付で手続きを始める。


「ミーサさんまだ帰ってこないんですか?」


受付で手続きしてくれているオッサンに聞くと、ミーサさんは都で少し仕事もしてくるらしいのでしばらくは帰ってこないみたいだ。そうしてオッサンと雑談しながら受付で借りた『深緑草』を触って確認していると、ポーラスの野郎がやってきた。こっちに来たポーラスはオッサンに何か耳打ちすると、


「じゃあ、代わり頼むわ」


そう言ってオッサンはどっかへ行き、ポーラスが代わりに残った。こいつには地図の件で文句を言いたいが、あれから色んな人に話を聞いた結果、やはり偽地図を渡された時に気付かなかったから手遅れらしい。ここで文句を言っても他のギルド職員からの心象が悪くなるので諦めろと師匠にも言われたので、我慢する。我慢はしているが許したわけではない、今も何か騙されないかポーラスの動きを警戒している。


「じゃあ依頼受け付けますね。これは『直依頼』ですので納品は依頼者にお願いします」


警戒しながらポーラスの動きを見ているが特に怪しい動きはない代わりに、怪しい言葉を口にしてきた。


「『直依頼』って何だ?」

「『直依頼』ってのは依頼した本人に納品する依頼の事です。普通はギルド経由で依頼者に報酬を渡しますけど『直依頼』の場合は直接依頼者に素材を渡してもらいます。今回の依頼人は光の国への道を進んで大体1日ぐらい行った2つ目の村にいますので詳しい内容はその方に聞いて下さい』

「報酬はそいつからなのか、ギルドから貰うのか」

「報酬はその方から貰ってください。それで依頼を達成したらこちらの依頼書にサインを貰ってからギルドに提出すれば完了となります。」


かなり警戒していたが特に何事もなくポーラスから依頼書を渡されて俺はその依頼者に会いに向かった。向かってる途中で『深緑草』を探していたが、5個ぐらいしか見つからなかったので、あまり群生はしない植物のようだ。目的地の村まで1日と言われたが『快足』スキルもあり、『深緑草』を探しながらでも昼過ぎには到着したので、すぐに依頼人に会いに向かった。


「誰だ?てめえ」


依頼人の家の扉をノックして出てきた依頼人にいきなり乱暴な言葉を投げつけられる。見た目だけなら、いきなりそれぐらい言われても不思議じゃない盗賊みたいな見た目の依頼人だが、一応ギルド経由で依頼しているんだからもう少し丁寧に対応してほしい。


「えっと、この依頼をギルドで受けたんですけど」


依頼書を渡して確認してもらうと、


「・・・・・早くねえか」


ボソリと漏れた依頼人の言葉。早いって何が?ギルドに依頼してから受けるまでが早いって事かな?


「依頼したのはあなたで合ってますか?」


まあ独り言は無視して依頼人か確認して、さっさと探しに行こう。まだ日があるからもう少し探せるだろう。


「ああ。合ってる。『深緑草』10個納品な。ほら、さっさとくれよ、かなり急ぎだったんだよ」

「ええ?いや、まだ10個集まってないから今から探しに行こうと思っていたんですが」

「はあ?『納品』の依頼だろ?普通持って来るだろ。何で今から探しに行こうとしてんだよ。他の素材が駄目になったら依頼書通り弁償してもらうからな」


ん?何かおかしな事言われてんな。直依頼の納品って数が集まってから依頼人に会いに行くのが普通なのか?確かにギルドへの納品は数が集まってから納品してたから、これは俺のミスなのか。あと弁償ってなんだ?


「えっと、すみません。数はまだ揃ってないです。すぐに探して持ってきます。あと弁償ってどういう事でしょうか?」


何かおかしい気がするが一応依頼人なので、ムカつくがまだ敬語で話をする。


「おう、ならさっさと探してこい、今日中に見つけてこないと素材駄目になるから素材代金貨1枚弁償な」


この言葉で俺はキレた。弁償代が今回の報酬銀貨5枚の倍ってどういう事なんだよ。


「ふざけんな!今日俺が来なかったら、結局、素材駄目になってたじゃねえか!何で俺が弁償しないといけないんだよ!しかも金貨1枚って報酬より高いじゃねえか!」

「そんな事お前に言う権利はねえんだよ。見てみろこの依頼書の注意書き『詳しい内容は依頼者に要確認』って書いてるじゃねえか。確認しないお前が悪いんだよ!黙ってさっさと『深緑草』10個渡すか金貨1枚払え!」

「だったらこの依頼は受けねえよ」

「ハハハ、それは無理だ。見てみろ。もう依頼の受付してるじゃねえか。こうなるとお前は依頼失敗だな。依頼失敗の罰金は金貨1枚って書いてるからな。お前はどうしても金貨1枚払わないといけねえんだよ」


ニヤニヤしながら言ってくる依頼人をぶん殴ってやりたい。だけどこいつの言う通りよく依頼を確認しなかった俺が悪いんだろうか。金はこの間大金貨1枚貰ってるから余裕はある。だけどこいつに金貨1枚は払いたくない・・・って事は


「今日中に『深緑草』10個持ってくればいいんだな」


俺は『深緑草』10個を今日中に集める事にした。元々集めるつもりだったのが、少し急いで集めるようになっただけだと思えば少しは怒りが収まる。


「できるのか?逃げても俺がギルドに報告するから無駄だぞ。ああこの村は6の鐘で門が閉まるからな。ブハハハ」


・・・ムカつくすげえこいつ殴りてえ。だけど我慢だ。我慢して村の外に向かう。向かいながら『探索』で『深緑草』の反応を探すが、見つからない。少し厳しいかもしれないが、村の外に出ると俺は全力で走りだす。あのムカつく依頼人には絶対負けねえ。




「はぁ~。間に合った」


あれから全力で走り回ってようやく全て採取できた。多分あと30分程で村の門が閉まるだろうが何とか間に合った。『快足』スキルがあるので肉体的に疲れていないが精神的に疲れた。途中何度か魔物に襲われたが『影魔法』で瞬殺して回収したので、どんなのがいたのか覚えていない。


そうして再びムカつく依頼人の家をノックすると、ニヤニヤしながらジョッキを片手に依頼人が出てきた。


「よお。諦めたのか。あと鐘半分ぐらいは時間あるぞ。もう少し粘ってこいよ。それとも素直に金貨払う気になったのか?」


「心配しなくても10個採取してきたぞ」


ニヤニヤしている依頼人にご機嫌の俺が答えながら『深緑草』10個を取り出していく。


「・・・・マジか・・・・・おい、少し見せてみろ!てめえ邪魔すんな!」


俺は『深緑草』を手に取ろうとする依頼人の手を掴むと依頼人が怒鳴ってくる。だけど『深緑草』を探している時に師匠に『念話』で相談して、こいつがこういう行動をとってくると教えられた。『深緑草』も『薬草』等と同じで根本を切ると束で採取できるのでそれを1個と数える。だけど束じゃなければ1個と数える事はない、だからこの依頼人は確認する振りをして束をバラバラにして依頼失敗に持っていく気だと。そもそも束である事は見た目で分かるのでわざわざ手に取って確認する必要はない。師匠が言うには最初に受付のオッサンとポーラスが代わった所からだそうだ。恐らくこの依頼を依頼人から受け掲示板に張ったのはポーラスだろう。依頼人に確認が必要な依頼は、確認が終わってから受けるかどうか決めるのが普通だ。ギルドに近ければ依頼受付のサインはギルド職員が、遠ければ依頼人が依頼受付のサインをする事になっている。今回の俺の場合は依頼書だけをギルドでもらい、依頼人から話を聞いて依頼を受けるなら依頼書に受付のサインをもらい、契約成立となる。だから話を聞く前に受付のサインを書いたポーラスの行動は間違っているのだが、それがこの目の前の依頼人とグルと考えると、こいつとポーラスの行動全てに合点がいく。要するに俺に無茶言って金貨1枚巻き上げようとしているのだ。


「触らせねえよ。お前らのやり方は師匠から全部教えて貰った。ほら見ただけで束になってるって分かるじゃねえか。触りたいなら報酬払ってからだな」

「ふざけんな!俺は触って確認しないと信じられねえんだよ。このまま触らせないと依頼失敗にするぞ」


師匠の言う通り事が運ぶなあ。まあ教えて貰っているので、この後の対処も簡単だ。


「分かった、それなら明日ギルドに向かうぞ、俺とお前どっちが正しいかはっきりさせようぜ。俺が悪いってんなら素直に金貨1枚払ってやるからな」

「・・・・・分かった!いいぜ!今日の所はもういいだろ。俺もこの後用事があるんだ早く帰れ。って何で「深緑草」持って帰るんだよ」

「はあ?まだ報酬貰ってないから俺の物じゃねえか。何で置いて行かないといけねえんだよ」


ホント師匠は何でこいつの動きが見てもいないのに分かるんだろ?何か言いたげだけど悔しそうにこっちを見てくる依頼人を見て心地がいい。ざまあ。


そうして夜、やっぱり師匠の言う通り俺の宿の部屋に賊が侵入してきたが、俺は『自室』にいたので遭遇する事は無かった・・・。翌朝、依頼人の所に行ったが誰もいなかった、これも師匠の言う通りだった。結局俺は依頼を達成する事無く『深緑草』10個を手に入れて街に戻った。戻ったら当然ギルドに事の経緯を説明し、調査を行ってくれる事となり、調査が終わるまでは俺が依頼を失敗した事にはしないみたいだ。


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