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魔導具

お立ち寄りいただきありがとうございます。


ある日、ジュリアが友達と学園内を歩いていたら、いきなり頭上から水が降ってきた。誰かが2階からジュリアにめがけて水を撒いたようだ。水がかけられた直後に2階の窓が閉まったので、場所は特定できた。一緒に居た男子生徒が急いで駆け上がって2階の部屋に行ったが、誰も居なかったそうだ。


 ジュリアはひとりの時に精霊や聖獣たちと話す。

「いっそ逃げちゃいたいな。だって、お父様もお母様ももういないんだし、私が家を守らなくても叔父様が欲しくてしょうがないんだし、私は爵位なんか要らないもん。お父様の残してくださったお金を逃亡資金にして、どこかで気楽に暮らしたいなあ。」

「いいじゃなーい。逃げちゃえー。」精霊が言う。

「ほんとに逃げちゃおっか。」

フェンリルが

「僕に乗っていけばいいよ。」と言ってくれる。

「でもねえ、逃げちゃうと、友達とも会えなくなっちゃうのよね。あなた達は?」

「僕達はどこにでもついていくよー。」

「ああ、ずっと一緒だぞ。」

精霊と聖獣は優しくそう言ってくれた。

「ありがとう。みんな優しいわねえ。」

「いっそ爵位を返して平民になっちゃおっか。」

ジュリアはそれもいいな、と思う。

もし、王子が婚約を破棄すると言ってキャシーと結婚するとか言ったら、叔父様の悪行を暴いて爵位を返上すればいいかもしれないわ。婚約破棄は、本当にありそうだし。


 婚約破棄は良い。ただ、せっかくだから、それをこちらのチャンスに変えたい。

キャシーはいくら可愛いといっても、こんなにモテモテになるのはちょっとおかしい。なにかある、と思う。もしかして、魅了を使っているのではないかしら。でも、普通の魔法ができる程度の人だったら魅了なんて魔法は使えないはず。でも、魔石か魔道具を使えばできる。


 ジュリアは精霊のカカオとリープにキャシーが魅了の効果がある魔石か魔道具か、または呪い薬かなにかを持っていないか探ってくれるように頼んだ。

「まかせてー」

翌朝、カカオとリープが

「みーつけた!」

と言ってきた。

「これね、魅了の魔石のペンダント。これ、いつもつけてるよー。」

「わあ、速い!さすがね。どうもありがとう。」


 「次は次は?」

カカオとリープが張り切っている。

「それじゃ、次は叔父様のところに行って、なにか不正をしているんじゃないか、証拠を探してほしいの。例えば、もう作物の売上の金額と、領民からの税金の総額と、国に払った税金の額がわかるもの。」

「わかったー。」

その日、学園から帰るとカカオとリープが

「あったよー」と言ってきた。

「はやーい。すごいわねえ。」

「えへへへー。これとこれー。」

カカオとリープがくれたのは、作物の売上の金額と、領民からの税金の総額の書いてある帳簿のページと、国に払った税金の領収書だった。

「すごい!こんなに早く、こんなにはっきりした証拠。ありがとう、カカオ、リープ。」


 「次はー?」

「次は・・・ちょっとよく考えるから待っててね。」

「はーい」


 ジュリアは学園の魔道具のへイエス先生に相談に行った。ジュリアは魔道具に興味があって、それでへイエス先生の授業は絶対まじめに出席していた。誠実な教師のへイエス先生のことをジュリアは尊敬していたし、まじめな学生のジュリアをへイエス先生はかわいがってくれている。


 「へイエス先生、これなんですけど、これって魅了の効果がありますよね?どうやって使うんですか?」

「き、君は、こんなものをどこで手に入れた?魅了は禁呪だ。絶対に使ってはいけない。」

「ご心配なく。私は決して使いません。使っている人がいて、こっそり持ってきたんです。どうやってこれで発動するのか、ずっと持っていないと効果がなくなるのか、または解呪の方法はあるのか、などを教えていただきたいんです。」

へイエス先生はしげしげと魅了の魔石を見て

「まず、これは持っている者が契約をしているな。それで契約した者だけが発動できる。一度発動したら、解呪しないかぎり魅了はかかったままだ。」

「怖いですね。解呪の方法はどうしたら調べられるでしょう?」

「そうだな、買った所で訊くのが一番だろうな。」

「これって何処に行ったら手に入ります?」

「街に魔女の店があるだろう、おそらくそこで訊けばわかる。私も詳しいことは知らない。」

「そうですか、ありがとうございました。変なことには使いませんので、ご心配なく。」


 「おいおい、このまま君を返せるものか。」

「・・・へイエス先生、話しても黙っていていただけますか?それなら話します。」

「君が承諾するまでは誰にも話さない。」

「・・・・・・では、話します。これはキャシーが持っていたものです。第3王子や取り巻きに使っているようです。」

「なんとっ」

「今、第3王子はキャシーにべた惚れです。おそらく今度のパーティーあたりに私との婚約を破棄するのではないかと思います。」

「なるほど、君は、それを事前に阻止しようというのだな。大丈夫か?辛いだろう?」

「いいえ、もともと政略結婚ですから、私にそういう恋愛感情はありません。まあ、嫌いってわけでもありませんでしたけど、好きというわけでもありませんでした。ただ、王様と王妃様にはとてもよくしていただいているので、残念に思いますけど。阻止しようとも思っていません。」

「そうか・・・では君は婚約破棄されてもよいということか?」

「婚約破棄は構いません。むしろ、そうしていただきたいです。ここ数ヶ月の第3王子の私に対する仕打ちはもうたとえ魅了だったからという理由でも、魅了がとけても、私はもう王子様に愛想が尽き果てました。もし婚約破棄しないという場合は、私の方から願い出ようと思っています。」


 「そうか。君も苦労しているのだな。」

「貴族なんてそんなものだと思っていましたので、苦労とも感じていません。今、私がこの魔道具をキャシーが使って魅了したというのを調べているのは、私の家の問題です。キャシーのこれは重罪です。また、キャシーの父、私の叔父になりますが、イーサンはキャシーを第3王子の婚約者にすることで、私を追い出し、我が侯爵家の財産から何から何まで乗っ取ろうとしています。私はそれを阻止したいのです。すでに叔父の国に対しての不正の証拠はあります。ですから、キャシーのこの件が明らかになれば、叔父一家をキャシーも含めて排除することができます。税をくすねているようですので、国にも領民にも罪を犯しています。そして、私は叔父の不正を気づかなかったのですから、責任を取って爵位を返上したいと思っています。」


 「なっ、何を言うのだ。爵位を返上すると?それで君はどうするのだ?」

「考えていることはあります。先生にもまた別件で相談させていただくかもしれません。」

「わかった。だが、爵位のことは早まるな。」

「先生、私は貴族社会につくづく疲れました。自由になりたいです。」

「まあそれは私もわかるがな。私も貧乏貴族の3男で、家を出てこうして教師をやっている。平民は気楽で良い。でも、男と女は違う。今の社会は男にはたくさん仕事があるが、女にはなかなか難しい。早まるな。爵位を返上する前に、私のところに来てくれ。相談に乗る。それなりに伝手もある。頼むから、早まるな。約束してくれ。」

「へイエス先生、ありがとうございます。はい、そうさせていただきます。」

ジュリアはにっこり笑ってへイエス先生の手をとってお礼を言った。


お読みいただきありがとうございます。

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