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ジュリア

お立ち寄りいただきありがとうございます。


ジュリアは虐げられている。父と母は10歳の時に馬車の事故で亡くなった。国の犯罪調査を担当していた父は、逆恨みされることも多く、従って常に殺される可能性も考えていて、生前からほとんどの財産をジュリア名義にしていた。父の従兄弟であるイーサンがジュリアが成人するまで暫定的に侯爵家を管理するということになり、ジュリアの住む家に一家で乗り込んできた。だからイーサン一家の自由になる財産はほとんどなかったのだが、領地からの収入を好き放題に使っていた。イーサンの妻と娘はジュリアを嫌い、ことごとく文句をつけ、辛く当たっていた。


ジュリアは8歳の時に第3王子と婚約させられていた。貴族あるあるの政略結婚である。子供同士だったので、遊び友達として会う時は仲良く遊んではいた。でも、ジュリアにとっては幼馴染のジェフのほうが気心は知れていたし、好きだった。


10歳で両親を亡くしてからは、ジュリアはイーサン一家から常に虐げられていた。しかし、常日頃から父にも母にも、女にも学問はとても大事なので、幸せになりたかったらしっかり勉強しろと言われていたので、ジュリアは真面目に勉強をしていたし、時間があれば本ばかり読んでいた。


16歳でジュリアは主に貴族の子供が入る学園に入学した。2年遅れてイーサンの娘のキャシーが入学してきた。物静かでまじめなジュリアに対して、キャシーは派手で社交的だった。イーサンはキャシーにドレスやアクセサリーをどんどん買い与え、ジュリアには何も与えず、食事もイーサン一家とは別に、使用人と一緒に賄いを食べさせ、掃除や洗濯など使用人同様にさせていた。


そのように虐げられていたジュリアだったが、ジュリアにはジェフという幼馴染もいたし、それに、精霊たちや’霊獣たちが友達だったので、寂しくはなかった。精霊や聖獣と仲良くできることは、幼い時にわかっていたのだが、両親から絶対に人には知られないようにしろと固く言い含められていた。特に、第3王子には絶対に言ってはけないと言われていた。


イーサンはキャシーを第3王子の婚約者にしようと画策していた。ジュリアと破棄してキャシー婚約者になれば、将来第3王子が婿養子に入った時に、キャシーの親として、侯爵家の財産が手に入るという計算からだ。派手好きなキャシーは王子に取り入ることに必死で、王子はそれにまんまとひっかかっていった。

学園では王子はいつもキャシーと一緒に行動している。ジュリアとは顔を合わせても常に腕を組んでいるキャシーが邪魔にするので、ほとんど話をすることもなかった。ジュリアはもともと王子のことが好きというわけでもなかったので、それほど苦痛でもなかったのだが、学園でできた友達は、あからさまにキャシーを非難していた。


ある日、ジュリアの友人のエヴァが、キャシーが涙ながらに王子にジュリアからいじめられていると言っているのを聞いたと憤慨していた。

「いじめてるのはどっちよ、ねえ。」と、ぷんぷん怒っている。

ジュリアは自分のためにそんなに怒ってくれる友人を、とてもありがたいと思った。

「ありがとう。私のためにそんなに怒ってくれて。私はあなたが友達でいてくれることがとても幸せだわ。」ジュリアは少し涙ぐんでエヴァの手を取ってお礼を言った。

同じく友達のサマンサも

「ジュリア、そんなことじゃだめよ。目には目をっていうじゃない。やられたらやり返す。ああいう人はね、だまってるとつけあがるのよ。」と怒っている。

「ほんとよぉ。どうしてやろうかしらね。」グレイスも怒っている。

「ありがとう。みんな、優しいわね。大好きよ。」ジュリアはそう言ってみんなの手を取った。

「でもねえ、王家の人と結婚すれば、いずれは側妃を取るでしょうし、愛なんて期待できないと思うのよ。だから、気にしないようにしようと思ってるの。」

「ジュリア、あなた、それって悲しすぎるわ。ねえ、王子以外に好きな人いないの?」

「いたところで、どうすることもできないわ。だから8歳から見ざる言わざる聞かざるできたの。運命なのよね、これって。」ジュリアは静かに微笑んだ。

エヴァは

「私はそういうのは嫌だわ。王家だろうが貴族だろうが、そんなの許されることじゃないと思う。いっそ平民になりたいなあ。」と言う。

「本で読んだ知識だけど、他所の国では王も貴族もいなくて、みんな平民で、夫と妻はひとりだけ、って国もあるんですって。羨ましいと思うわ。まあ、こんなこと言ってもしかたないんだけど。」とジュリアが小さな声で言った。

サマンサが

「ジュリア、いっそのこと、逃げちゃったら?」

と言う。

グレイスも

「そうよ、ジュリアはもうお父様もお母様もいらっしゃらないんだし、これだけ優秀なジュリアですもん、どこに行っても通用するわよ。協力するわよ。」と言う。

「ふふふ、そんなこと、できたらいいな。」力なく笑ってそう言うジュリアを、友人たちは切ない顔をして見ていた。


お読みいただきありがとうございます。

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