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黒猫は眠らない  作者: 鳩胸 ぽっぽ
試される大地ホッカイドウ
72/137

どちらも悪くねェ

 栄養失調で入院することになった。

 犯人はヲタクがバイトしているカラオケ店のバイトの武田君で、武田は金が欲しかったのと、うちの兄貴に以前喧嘩で負けた腹いせでやったと供述したようだ。

 店長も気絶させ監禁し、今回の犯行に及んだという。


「ありがとなヲタク」

「いえっ! 推しを守るのは当然ですとも! まぁ、結構怒られちゃいましたが。危ないことするなって」

「そりゃそうだ」


 助けに来てくれた時は嬉しかったけど、よくよく考えたらあぶねェよ。

 それと、一つやらかしたこともある。


「で、ヲタク。オレがぼうはていPってこと口走ったな」

「えっ」

「ネットでぼうはていPの正体って言って話題になってんだよ」

「えっ、あっ」


 どうやら思い出したようだ。

 身バレは別にいいが……。あまり進んでばらしたくなかったんだよな。ゲームでのラピスラズリと結び付けてあのギターソロをぶり返す人もいた。

 まだオレの名前がトレンドにあるくらいには。


「申し訳ありません! あの時は本当に夢中で……死んでお詫びします……」

「いや、いいよ……。てかよくわかったな。監禁されてる場所」

「それは……めくれてる壁紙がうちのカラオケ店にそっくりだったので! カラオケ店なら窓もないのは当たり前ですからねぇ! 扉も白い壁紙をはればいいだけですし」

「それでも特定できるのお前怖えよ……。お前もネットの有名人だぞ」

「Oh……」


 命を賭したヲタクとして拡散されている。さまざまな語録がネットで出回ってしまったな。特に割と特徴的な〇〇ですぞとか少し話題になってる。

 可愛い女の子が守るために命を賭してるし、古き良きヲタク口調だといわれていた。


「迂闊っ! たしかに最近ですぞと話す人が増えたなとは思いましたがっ! そんな理由だとは!」

「ま、ありがとよ。あんときのお前はオレのヒーローだったよ」

「……そんな直接お礼言われてどうしろと!? 涙でも流してスパチャ送れとでも!? いいでしょう! いくらです!?」

「いや、普通に感謝述べただけだろうが……」


 ただありがとうと言っただけなのにな。

 ヲタクと話しているとコタローも入ってくる。コタローとは久しぶりだな。いろいろと忙しかったらしく、面会にやっといけるとメッセージが来た。

 コタローはかつかつとヲタクに近づいていく。そして、ヲタクの頬をひっぱたいた。


「えっ……」

「なんでそんな危険なことするの! 犯人を刺激したらヲタクの命もつかさんの命もなかったかもしれないのに! できることはないって私言ったでしょ!」

「おい、コタロー……」

「ヲタクも私の友達なんだからそういうことやめてよ……」


 と、コタローは涙目で訴えていた。

 まァ、心配かけさせたのはオレだけじゃなくコタローにもか。


「まァいいじゃねェかよ。終わったことなんだから。褒められたことではねェけど、結果は助かってんだ。ぶり返すんじゃねェよ」

「……そう」

「それに、ヲタクだって役に立ちたかったんだろうよ。ヲタクはいいやつだからな」

「…………」

「コタローも、少しは協力させてあげるべきだった。ヲタクは壁紙がめくれてるだけで現場特定してんだぞ。協力させるべきだったな」

「それもそうだけど……」

「だからどっちも悪いし、どっちも悪くねェ。怒るのもやめようぜ? 非生産的だ」

「……そうだね。ひっぱたいてごめんね」

「いえ……殴られるのは覚悟しておりましたとも……」


 コタローも、ものすごくやつれてる。

 

「これじゃしばらくゲームできんな……」


 私はそうこぼした。

 夏休みろくなことがねぇ。フルボッコにされるわ誘拐されるわ。夏休みには警察のお世話になりましょうという法律があるのかね?











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