デジャヴ
極度の栄養失調状態でもあったようで、オレの入院は夏休みが終わるまで続くようだ。
オレは妹にヘッドギアを持ってきてもらい、オレは病院でゲームに勤しむことにした。個室じゃなく、ほかの患者と同室だが、一人で楽しむ分には何の問題もないだろう。
だが問題なのは……。
「ママー! 近くでソフトクリーム売ってたー!」
「はいはい。静かにね。ここは病院だから。そっちは走り回るな!」
と、少しきつそうな見た目の女性が子ども二人を見ている。
この子供たちの前でゲームなんてできるだろうか? オレはそう思っていた時だった。オレの目の前にソフトクリームが飛んでくる。
オレの顔にソフトクリームがぶち当たった。
「つめたっ……」
「そ、ソフトクリームがぁ……」
この流れ前も見たな。
ソフトクリームを失った少女は涙目になっている。その一方、母親のほうは顔を青ざめさせている。
母親は足を吊るされており、足の骨を折ったようだった。ベッドにもたれかかりながらすいませんすいませんと謝ってくる。
「いいっすよ……。お前らもあまり走り回って騒ぐなよ。ほかの患者に……」
「ソフトクリームがぁ……」
「……チッ」
ソフトクリームを失ったショックで聞こえてない。
女の子はわんわんと泣き出した。ソフトクリームがなくなってショックなのはわかるが……。正直うるさい。が、あまり責めることはできんな……。
オレとしても、あまり人に怒りたくはねェし、相手が子どもならなおさら怒りづれェ。
「ソフトクリームならオレが買ってやるから泣き止め」
「そんな……そこまでしていただかなくても……もうすぐ旦那が来ますので……」
「いいよ。ソフトクリーム食べたかったんだろうしオレも食べてェっすから。ほら、買ってやるから来い。ちょっと少しだけ借りますよ」
と、オレは点滴を持ちながら歩いていく。
エレベーターに乗り、病院の外に出るとソフトクリームを売っている屋台があった。オレはソフトクリームを二つ購入し、歩いてゆっくり落ち着いて食べろと促す。
まったくついてねェ。この前も酒井の妹で同じ展開があっただろ。ソフトクリームで顔がものすごくべたべたするし……。
オレはエレベーターに乗り、病室に戻ると男性がさっきの女性のベッドのそばに座っていた。
「パパー」
「お、帰ってきたか」
「パパ、買ってもらった!」
「そうか。お礼はしたか?」
「あ、してない! ありがとうお兄ちゃん!」
「お兄ちゃんありがとう!」
お兄ちゃん……。
「すんません。妻から全部聞きました。うちの子が申し訳ない……」
「いいっすよ。アイスぶつけられんのは慣れてます」
「アイスも弁償するので……」
「気にしなくていいっすよ。子どもは騒ぐでしょ。注意だけはしておいてくださいね」
「すいません……」
深々と頭を下げてくる旦那さん。
オレは自分のベッドに戻る。ベッドに戻ると、四人がやってきた。コタローと、岩島、ヲタクと酒井が。
コタローの手にはヘッドギアが握られている。
「そこで妹さんに会ったからもってきたよ。妹さん用事あるって言って帰った」
「そう。あんがとさん」
「あ、ソフトクリームだー! いいなぁー! どこで売ってるの!?」
「紫電くん。病院では騒がないように。体調は大丈夫か?」
「まァ、点滴とかで栄養状態は良くなったし、物も食えるようになったから大丈夫だ」
「そうか」
「大変でしたね……。4日も飲まず食わずだなんて……」
「一歩遅かったら餓死してたとよ」
マジで飢えて意識も朦朧としていた。
オレはやせ型だから餓死するのも早いからな……。
「それで、少し質問なのですが、顔に白いものついておりますがなんですかそれは」
「ん? ああ、ソフトクリームだ。さっき顔に思い切りぶつけられてよ」
「……あの、私が言うのもちょっとあれなのですが、アイスに恨まれてるんですか?」
「アイスってよりかはアイスを持った女の子に嫌われてるんじゃねェの? お前の妹と同じ状況だったぞ」
既視感がすごかったな。
だからまァ、慣れたってのもあるな。
「ま、ありがとよゲーム。今日からまたログインするからな」
「うん。リーダーにも言っておくよ」
「おう」
「もういくのか?」
「あまり長居してもほかの患者さんに迷惑ですからねっ! あ、これお見舞いの品でございますっ!」
よくコンビニのレジ横とかに見る缶に入ったクッキーを渡してきた。
これ買う奴マジでいるんだ。オレ初めて見た。買ってく人なんて見たことねェし。中を見るとチョコチップクッキーとかラプンツェルとかいろんなのが入っている。
「じゃ、ゆっくり療養してねぇー!」
と、帰っていった。
オレはクッキーを傍らに置こうとすると、女の子たちがこっちを見ているのが分かった。
「クッキー……」
「……はぁ~」
オレはクッキーの缶を持ち、女の子たちの前に置く。
「やるよ……」
「すいませんっ! すいませんっ!」




